「落下の解剖学」良く出来た脚本でした。真実とは現実に起こった事でなくても真実になってしまう。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「落下の解剖学」

 

を観てきました。Fan’s Voiceさんの、独占最速試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見。母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、不審な点も多く、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく。事件の真相が明らかになっていくなかで、夫婦のあいだに隠された秘密や嘘が露わになっていく。

というお話です。

 

 

フランス、グルノーブル近郊の人里離れた雪山の山荘で、小説家のサンドラ・ヴォイター、夫のサミュエル・マレスキ、息子のダニエル・マレスキの3人家族は暮らしていた。ダニエルは数年前に事故により視力に障がいが出てしまい、その事もあり、この雪山の山荘に引っ越して来たのだった。

ある日、サンドラにインタビューをする為に学生が訪れていたが、サミュエルが屋根裏部屋で大音量で音楽を聞いていたためインタビューが出来ず、サンドラは延期して欲しいと頼み帰って貰う。息子のダニエルは犬のスヌープと散歩に出かけ、家にいるのはサンドラとサミュエルだけ。

ダニエルが散歩から帰ってくると雪の上に父親が倒れている。頭から血を流しており、屋根裏部屋から転落したようだった。悲鳴を上げるダニエルに気がついたサンドラが直ぐに救急に連絡をし、救急車が駆けつけるが、既にサミュエルは亡くなっていた。



 

事故かと思われた転落だが、頭の傷が転落時の傷ではないと思われ、他殺も疑われ始める。そして死の前日に夫婦が口論をしている音声録音が見つかり、サンドラは第一容疑者になってしまう。サンドラは古い友人の弁護士ヴァンサンに弁護を頼み、裁判に挑むことに。

ただの転落事故だと思われた事件が、自殺か他殺かと展開し、夫婦の秘密や嘘が暴かれていく。サミュエルの死は、本当は自殺なのか他殺なのか。裁判が進むにつれ、ダニエルは過去の出来事を思い出して行く。そして…。後は、映画を観てくださいね。

 

この映画、面白かったなぁ。前半は起こったことをそのまま映像にしてあって、後半は法廷劇となり、その中で語られる人々の想像が映像になっているんです。なので、過去に起こった事の真実は一切描かれていません。なので、真実は観た人それぞれが想像するんです。うーん、本当に良く出来た脚本でした。

 

 

サンドラは売れている小説家で、夫も学校の先生をやりながら小説を書きたいと言っていて、サンドラもそれに賛成しているんです。サンドラはドイツ人、サミュエルはフランス人で、たしかイギリスで出会ったって言ってたかなぁ。なので、家族間では母国語ではあまり会話をせず、英語で会話をするんです。

 

ダニエルが交通事故により視覚障害になってしまい、見えなくはないのですが弱視のようで、その治療にお金がかかってしまい、サミュエルは自分の故郷の家を改装して宿泊施設にすれば経済的に楽になるし、ダニエルの勉強も自分がある程度、家で見れるようになるとサンドラに相談をして、家族でこの場所での生活が始まりました。

 

 

でも、時間に追われ、サンドラは人気作家となっていき、サミュエルは精神的に不安定になっていきます。小説を書きたいと言ってプロットは作るのですが、書き上げることが出来ないようでした。そんなサミュエルのプロットを読んで、サンドラが参考にする事もあったようで、それもサミュエルは気に食わなかったのかな。色々な事が重なり、爆発して大喧嘩をしている時の音声データが裁判で出されます。

 

夫婦で色々な事情があるのは当たり前だけど、この音声データを聞く限り、サミュエルという男性は、男性優位の考え方で、自分より優秀な妻に不満が溜まっていたように思いました。だって、金銭的な問題でフランスに来て、学校の先生をやりながら家をリフォームと言ったのも自分だし、ダニエルの勉強も見ると言ったのも自分なんですよ。

 

 

サンドラは小説を書いてお金を稼いでいるし、息子の送り迎えだってしています。もし、サミュエルが小説をどうしても書きたいなら、教師を辞めるか、家のリフォームを今は諦めるか、何かをすれば良かったのに、何もせずにサンドラに文句を言うだけ。俺ばっかり働いているって騒ぐけど、サンドラは小説を書いてお金を稼いでいるでしょ。小説を書くことが働くことだから、サンドラだって働いているんです。

 

いやぁ、こういう男性っていますよね。ゴミ出ししたら働いたとか言うけど、それ出掛けるついでの作業だから。サンドラはサミュエルに譲歩して、フランスに来ることを了承したんです。本当はドイツ人なんですよ。それに小説家になると言いながら、プロットだけ作って諦めてしまう。それって、クリエイターじゃないですからね。プロット作りは誰でも出来ます。それを文章に組み立てて、起承転結にまとめるのが出来てプロの小説家なんです。あまりにもサミュエルが的外れな事を言っていて、これはサンドラは大変だなぁと思ってしまいました。

 

 

そしたらサミュエルが亡くなったので、そりゃ、サンドラが疑われるよなぁと思いました。タイミングが悪すぎますよ。でも、ここからが面白いんです。窓の高さは1200mmで誤って落ちる高さではない。そうなんです、日本では手摺なども1100mm以上なら危険性が低いとなっており、西洋人は背が高いから1200mmなんでしょう。でも、落ちて亡くなった。ということは、自分で落ちたか、誰かに落とされたということです。

 

頭に大きな傷があったのですが、横の小屋にぶつかったのか、落ちる前に鈍器で殴られたのか、はっきり解りません。でね、思ったんだけど、屋根裏の窓は大きくて、屋根に沿って大きな三角になっています。そして、何故か内開きです。(個人でリフォームだと内開きの窓を内側から取り付ける方が素人にはやりやすいからだと思う。)

 

 

この窓を開けて窓辺にいたら、後ろから窓を一気に閉めれば、その勢いで放り出されるし、三角なので頭を殴るような形になると思うんです。確か近くにステレオがあったので、それを操作している時に、窓を思いきり閉めてやったら、頭にぶつかって、そのまま外に押し出すことが出来るんじゃないかな、と私は思いました。この推理は私の妄想です。でも、このやり方なら、頭の傷も転落も納得出来そうなんだけど。このやり方なら、サンドラは嘘をついていないんです。自分では殺していないですから。

 

この映画の中の裁判、とっても自由なやり方でした。だって、ダニエルは、父親殺しの容疑者として母親が捕まっていて、色々な検証をしたり、証言をするのを、全部聞いているんです。普通、子供には聞かせないですよね。かわいそうですもん。そして、最終的にダニエルも証言台に立つんです。いやぁ、凄いと思いました。フランス、進んでるなぁ。

 

 

裁判に立ち会いながら、一番成長したのはダニエルじゃないかな。自分で未来のことを考えて、自分で決断して、証言台に立ちます。立派な息子だなと思いました。

 

映画上映後に映画ライターの立田さんと映画評論家の森さんが解説をしてくださって、「或る殺人」、「氷の微笑」が、謎を解く鍵になるのではと教えてくださいました。私、「或る殺人」は観たことが無いのですが、「氷の微笑」は、作家の女性が連続殺人犯として捕まって裁判になるお話でしたよね。この2作を知っていると、読み解きやすいのではと仰っていました。

 

そして、犬のスヌープが鍵かなーと仰っていました。私もそう思いましたよ。だって、出てくる犬、マジ賢そうだし、目を見ていると、何か訴えていましたもん。無駄吠えをしないし、お利巧な犬でした。

 

 

いやぁ、実は、もっともっと書いていたいんだけど、もう寝ないと明日の仕事に響くので、この辺りで終わりにします。この映画、私は、超!超!お薦めしたいと思います。本当に面白いです。最後の解釈は観る人に委ねる形式で、私は、私の中で決着を付けました。ネタバレは出来ないので書きませんが、自分では納得しています。2回目を観たら、また解釈が変わって、違うラストの考えになるかもしれませんけどね。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「落下の解剖学」