「firebird ファイアバード」
を観ました。Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
1970年代後半、ソ連占領下のエストニア。二等兵セルゲイは、間も無く兵役を終えようとしていた。ある日、セルゲイと同じ基地にパイロット将校のロマンが配属される。写真という共通の趣味を持つ2人はすぐにひかれ合い恋に落ちるが、当時のソ連では同性愛は法的に固く禁じられていた。そんな中、セルゲイとロマンの関係を疑うクズネツォフ大佐は、2人の身辺調査に乗り出す。
というお話です。
1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイは、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。上官は成績の良いセルゲイに軍に残らないかと誘ったのだが、母親の世話をする為に、帰って農業を手伝うという。
そんなある日、パイロット将校のロマンが、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。しかしそれが恋とは解らず、親友のルイーズに交際を申し込もうかとも考えていた。一方、ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。
写真という共通の趣味を持つ二人は芸術を好むという点でも合い、セルゲイがバレエを観たことが無いと言うとロマンは自分のひいきの劇場へ連れて行き、リハーサル中の「火の鳥」を鑑賞させてくれた。どんどんロマンに惹かれていくセルゲイ、そしてロマンもセルゲイへの愛が膨らんでいく。一方、セルゲイの同僚である女性将校ルイーザもまた、ロマンに思いを寄せていた。
お互いの気持ちを確かめ合い親密になっていくセルゲイとロマン。しかしそんな彼らを見ていた人物がいたらしい。KGBと繋がっているクズネツォフ大佐へ告発文が届いてしまう。当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処された。ロマンは全て否定し、セルゲイとロマンは別れ、セルゲイは除隊して演劇学校へと入学していった。
1年後、ルイーザからセルゲイに連絡が届く。結婚するというルイーザの相手は、あのロマンだった。そして…。後は、映画を観てくださいね。
とっても素敵な映画でした。1970年代なのに、まだ同性愛が犯罪とみなされていたソ連で、どうしても抑えられなくなってしまった二人の愛の物語です。とても綺麗な恋愛映画で、実話ベースです。セルゲイ・フェティソフさんの回想録が原作となっているんです。
セルゲイが若い頃に体験した恋愛を回想録として出版し、それをペーテル・レパネ監督が映画にしました。このセルゲイさん、エストニアでは俳優さんだそうで、沢山の映画や演劇に出演していたそうです。彼は病気のために2017年に亡くなったそうですが、この映画監督のレパネ監督とは生前に交流があったようです。
映画の内容ですが、簡単に言えばBLなんだけど、そんな言葉で簡単に表せる内容ではないと思いました。純粋に愛し合っていた二人は、ずっとブレないんです。どんなに困難な事があっても、なんとか回避して愛を貫いているんです。こんなにも強く愛し合っていても、一緒にいられないというのは、本当に辛いと思います。彼らの愛を阻んでいるのは、法律の壁であり、人々の意識の壁なんです。
確かに、ちょっと前までは、”オカマ”とか”ゲイ”とか”ホモ”とか、社会でも言葉のイジメが沢山ありましたよね。まるで汚いモノのような言われ方をしていて、BL好きというと”腐女子”と言われるほどです。何も汚くなんて無いのに、なんで腐女子なんだよって思うけど、誰が付けたんでしょうね、この腐女子っていう言葉。この映画を観ると、何て綺麗な愛なんだろうと思うと思います。男女の恋愛よりよっぽど綺麗だし、深い愛だと思いました。
それにしても、抑圧されていると、どうしてこんなにも燃え上がるのか、2人の純粋な気持ちは誰にも止められないほど強かったのだと思います。でも、ソ連って怖いと思ったのは、ルールに反するかもということがあれば、直ぐにKGBに連絡するんです。プー〇ン政権でもそうなんでしょ。表向きには同性愛も少し大らかになってきているのかもしれないけど、KGBとかが動いて、暗殺とか、軍だと危険な場所に派遣するとか、そんな酷いことをしているんだと思います。
だから、ロマンは直ぐにセルゲイと距離を取ったのだろうと思いました。これ、もし見つかってしまったら、ロマンだけじゃなくセルゲイだって何をされていたか分かりません。いくら兵役が終わったからと言っても、どんな罪状で捕まるか分かったもんじゃありません。ソ連は何でもアリですからね。ロマンは、自分の身も危ういと思っただろうけど、セルゲイの事も心配したんじゃないかな。上司のクズネツォフ大佐って人、凄くしつこいんですよ。最後まで、彼が関与していたんじゃないかな。
ストラヴィンスキーの「火の鳥」のバレエのお話は、ある王子が火の鳥を追って、魔法使いの庭に入り込んでしまうんです。火の鳥を捕まえますが、助けて欲しいと懇願するので、羽を一本貰って逃がします。そこへ、魔法使いが帰ってきて、王子を捕まえて石に変えようとし、王子は火の鳥の羽を振ると、火の鳥が現れて魔法使いの弱点を教えてくれて、魔法使いを倒すと、石にされていた人々が解放され、囚われていた王女と結ばれるというお話です。
セルゲイはバレエの火の鳥は観ることが出来たけど、本物の火の鳥は見つけられず、周りの石になっている人々を解放することが出来ず、王女も囚われたままで、結ばれることがなかったということなんじゃないかしら。ソ連の人々の石の心は解放されなかったんだと思いました。今になって、やっと少し石から溶け始めたくらいかもしれません。
うーん、あんまり書くとネタバレになっちゃうからなぁ。軍で別れてからの二人については、映画を観て欲しいです。まだまだ、この後、展開がありますが、それは映画で楽しんで欲しい。この映画、”ブロークバックマウンテン”や、”君の名前で僕を呼んで”など、美しいBL映画の王道を、この映画も辿っています。美しい、愛が尊いって感じの映画でした。海で泳ぐシーンとか、筋肉も楽しめますよ。あ、つい腐女子ぐせが出てしまいました。いや、だから汚くないって!
主演のトム・プライヤーさん、イギリスの俳優さんです。綺麗な顔をしたイケメンで、共同脚本としても参加しています。美しいだけじゃなく、知識もある方で、素晴らしいです。そしてロマン役のオレグ・ザゴロドニーさんは、ウクライナの俳優さんです。彼もイケメンで、筋肉も素晴らしかったですよ。ロシアの侵攻で苦しむ人々への支援活動もしているそうです。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。実話ベースなので、ハッピーなラブストーリーとはいかないかもしれないけど、素晴らしいお話でした。そして、今、戦争が色々な所で起きていることを踏まえて、改めて考えるべきことも描かれていると思いました。BL好きでなくても、この恋愛には泣けると思うし、内容的にも沢山の方に観ていただきたいお話でした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「Firebird ファイアバード」