「VESPER/ヴェスパー」
を観てきました。
ストーリーは、
生態系が壊れてしまった地球は、一部の富裕層のみが城塞都市シタデルに暮らし、貧しい人々は外の世界で資源を奪い合いながら生きていた。13歳の少女ヴェスパーは、ある日森の中でカメリアという女性を見つける。シタテルから飛行艇に乗ってきて墜落したらしい。同乗していた父親を探して欲しいと言われ、ヴェスパーは彼女の父親を探しにいくが…。
というお話です。
生態系が壊れてしまった地球。一部の富裕層のみが城塞都市“シタデル”に暮らし、ほとんどの貧しい人々は危険な外の世界で僅かな資源を奪い合うように生活していた。そんな外の世界に寝たきりの父と二人で暮らす13歳の少女ヴェスパー。
ある日危険な森の中で倒れている女性カメリアを発見する。飛行艇が墜落したらしい。シタデルの権力者の娘であるという彼女は、共に飛行艇に乗っていた父親を探してほしいとヴェスパーに頼み込む。もしかするとシタデルへの道が拓けるかもしれないと思ったヴェスパーは、父の制止を振り切ってカメリアの頼みを聞き入れる。
しかし辺り一帯を支配する残忍なヴェスパーの叔父ヨナスもまた、墜落した飛行艇の行方を追っていた。ヴェスパーは、カメリアの父親を発見するのだが、その場にヨナスも現れ、ヴェスパーが止めるのも聞かずに父親を殺してしまう。カメリアに、父親が殺されたことを言えず、まだ見つからないと嘘をつくヴェスパー。
ヴェスパーは独学で遺伝子研究をしており、植物や動物などを以前のような生態系に戻せるのではないかと、種などを集めて研究していた。今ある種たちは1代で枯れてしまい、種を生み出すことは無いのだが、何かがあれば種は成長し種子を付けることが出来ると信じていた。そしてカメリアとの出会いが、ヴェスパーの夢の実現に繋がっているとは思いもよらなかった。そして…。後は、映画を観てくださいね。
うーん、この映画、SFとしての題材は面白いかなとは思いましたが、設定が甘すぎて、よく解んなくなっちゃっているんです。デザインも頑張っているとは思うし、生態系が壊れて人類が普通に生きられなくなった地球というのも、あり得なくはないので解るんです。で、富裕層だけがシェルターのような場所を作ってそこに住み、貧困な人々はシタデルという場所に入る事が出来ないので、危険な陸地に住むしかないんです。
そして食料となる植物の種がとても貴重な資源となっているのですが、その種、種子が出来ない種なんです。日本でも、「種苗法」というのがあるでしょ。新種の植物は登録をして、その著作権が25年続くというモノだったと思うけど、種から増やせないやり方があるんですかね。不思議ですけど、この世界の種も種子が増えないように設定がしてあるようでした。
だから、貧困地域が、どんなに植物を増やそうと思っても、種が取れないのでいつまで経っても食料危機は続いたままなんです。それを打開するために、ヴィスパーは遺伝子研究をしていたらしいんです。「風の谷のナウシカ」のように、研究室で腐海の謎を解明しているんですよ。この辺りは、ちょっとナウシカのストーリーに似ているなと思いました。
そんなヴィスパーの前に現れたカメリア。シタデルに住んでいるという彼女と父親は、飛行艇でこちらに来ている時に墜落したようなんです。ヴィスパーが見つけた時には叔父ヨナスも来ていて、カメリアの父親は生きていたんです。それを叔父が殺したんですよ。この場面、何で殺したんだろうと思いました。シタデルから来た研究者なら、歓迎しても良いくらいなのに、何故か、ヨナスは殺してしまい、何で?と思いました。
この辺りの設定が甘いと思ったのですが、ヨナスとヴェスパーの父親は兄弟なんです。通常、弟が弱って困っているなら、助けてあげればよいのに、全くその素振りはなく、姪のヴェスパーにも酷いことをするばかり。その上、シタデルから出てきたカメリアの父親も殺してしまうなんて、一体何がしたいんですかね。
シタデルの人物なら、助けて褒美を貰えば良いと思いませんか?このヨナスという人物、やっている事がおかしいんですよ。その地域を仕切っていると言っても、何が嬉しくてこんな地域を支配しているのか、それならシタデルに入れるように、何か働きかけをすれば良いのにね。支離滅裂なんです。
それとヴェスパーの父親なのですが、寝た切りでまるで植物人間のようなのですが、意識はあるようで、ドローンに意識を写してヴェスパーのそばにいつも寄り添っているんです。でも、この何も無い時代、態々、”胃ろう”までして、子供に面倒を看させるなんて、酷いと思いませんか?私なら、娘に迷惑をかけないために、人工呼吸器などを止めさせますけどね。こんなに娘の負担になっているのに、平然と食事を胃に入れて貰ったりしていて、迷惑な父親だなと思いました。
この世界では、種が増えて行けば生態系も良くなっていくのだろうと思うのですが、どーもその部分が解り難いんです。カメリアの父親が娘?を連れてシタデルに向かう途中で墜落してしまい事件が起こるのですが、父親やカメリアの方向からの描写が無いんです。なので、彼らの目的や細かい部分がとても曖昧なんです。例えば、地球を救うために、カメリアの遺伝子を使って食物を生き返らせ、富裕層だけの世界から脱却するという意志を持っていたなら解るけど、そういった意志も感じられませんでした。
カッコイイSF映画を作りたかったんだと思うんです。確かに、ビジュアルなどは面白くて美しいですが、ストーリーはあまりまとまっていないし、それぞれの登場人物の設定も曖昧なんです。助けるなら助ける、そうでないなら口出しをしないという基本が無いので、途中で少し飽きてしてしまいました。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。SF映画好きな方には、ビジュアルが面白いので良いですが、それ以外の一般の映画好きにとっては、物足りなさが残る作品だと思いました。もう少し、何かエッセンスがあったら良かったんじゃないかな。でも、世界観は、面白いし、私は好きなタイプかなと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「VESPER/ヴェスパー」