「小説家の映画」ホン・サンス監督の新作は全力で頑張る芸術家の気持ちを良く表現していました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「小説家の映画」

 

を観ました。シネマカフェさん(@cinema_cafe)さんのご招待で観せていただきました。

 

ストーリーは、

著名な小説家だが長らく執筆から遠ざかっているジュニは、音信不通になっていた後輩を訪ねるため、ソウルから離れた閑静な町・河南市へやってくる。そこで偶然知りあった元人気女優ギルスに興味を抱いたジュニは、彼女を主演に短編映画を制作したいと提案。かつて成功を収めながらも人知れず葛藤を抱えてきた2人は、思いがけないコラボレーションをすることになる。

というお話です。

 

 

長らく執筆から遠ざかっている著名作家のジュニが、音信不通になっていた後輩を訪ね、ソウルから離れた閑静な町・河南市へやってくる。後輩の書店を訪ね、懐かしい思い出を語りながら、時間を満喫したジュニは、書店を後にする。

 

少し散歩をしていると、映画監督とその妻に出会います。共に散策をしていると、今度は、第一線を退いた人気女優のギルスに出会います。監督のパクはギルスに、才能があるのだから、仕事をした方が良いと何度も言うのですが、それを聞いたジュニは、本人の意志で辞めているのだから、やらないのは勿体ないとか、とても失礼な言い方だと怒ります。

 

 

気まずくなったのか、監督夫妻は去り、ギルスとジュニが残ります。初対面ながらギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主役に短編映画を撮りたい、と予想外の提案を持ち掛けます。彼女の甥で、映画学校に通うギルスの甥も、その話に乗り、盛り上がります。かつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えたふたりの思いがけないコラボレーションの行方は…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

ホン・サンス監督の新作です。この作品、私は、1晩寝て、何となく気持ちが盛り上がってきました。この監督の作品は何作か観ているのですが、観た後直ぐには、はっきり言って、理解が出来ないんです。私の頭が悪いのかもしれないけど、普通の生活を、まるでドキュメンタリーのように描いていて、最後も凄く盛り上がるなどは無く、ふーん、そうなんだぁ~という感じで終わってしまうので、あれ?何が言いたかったのかな?と思って、まるで扉を開けて迎えてくれたけど、そのまま出口に案内されてような、そんな、感じがしてしまうんです。

 

でも、自分の頭の中で反芻して、場面を思い出して、セリフを思い出してをしていると、うーん!そうだよね、私もそう思うよ!と盛り上がってきちゃうんです。この映画も、盛り上がりました。

 

 

小説家のジュニは、懐かしい後輩を訪ねるんです。ジュニは、随分と小説を書いていないようで、自分では筆を折ったと言っていました。なんか、今の私には、これが凄く理解出来るんです。仕事をして、出しきってしまい、もう何も出来ないという気持ちで、前に進めない状態なんだと思うんです。私も、出し切って、今は休養中。というか、もう辞めてしまおうかと思ってます。

 

周りは、まだまだ出来るし、何かしていた方が良いと言います。でもね、ジュニは、もう、前の仕事以上のことが出来る自身が無いし、疲れてしまったのだと、思います。そして、後輩の所に来たんじゃないかな。きっと、本屋になった後輩なら、自分の気持ちを解かってくれるかなと思ったんじゃないかな。

 

 

そして、ジュニが散歩をしていたら、監督と女優に出会い、監督の言葉に激怒します。監督が、休業中のギルスにかけた言葉なんだけど、これは怒りますよ。これ、凄く解る!と思いました。「才能があるんだから、勿体ないから仕事をしなさい」と監督が言うんだけど、勿体ないって何なんだよって思うよね。もう、既に全力出して、仕事をしてきたんだっつーの。全てをかけたからこそ、良い作品が出来たと思っているし、自分でも満足したけど、疲れてしまって、次はあれほどの力を出せないだろうと思うから、仕事を辞めているんでしょ。

 

目の前の仕事に、精一杯取り組めない人間だからこそ、こんな言葉が出てくるんだと思うんです。来た仕事を受けて、まるで生産するように映画を作るなんて、そんなお金の為にやる必要は無いんですよ。それを、ジュニが必死で訴えるんです。映画を観ていた時は、なんでそんなに怒っているんだろうって思ったけど、考えてみると、凄く腹が立つ言葉です。ジュニの気持ちが凄く解りました。きっと、ギルスも目の前の仕事を精一杯やる人で、ジュニも、1作1作、死に物狂いで小説を書いてきたのだと思うんです。だからこそ、出てきた言葉なのかなと思いました。

 

 

そんな出会いをした、ジュニとギルス。そんな気持ちが伝わったのか、気が合い、もう少し一緒にいようということになります。そして、また、面白いのが…、あ、これ、ネタバレになっちゃうのかな。またも凄い偶然が起きるのですが、公式のあらすじに無かったので、止めておきましょう。

 

ジュニとギルスは、一緒に映画を作ろうと盛り上がります。短編で、45分くらいのようでした。でも、きっと、二人で楽しく作ったんだろうなぁと思いました。誰にも邪魔されず、ジュニは、ギルスの彼女の夫を俳優として脚本を書いて、ギルスの甥をアシスタントとして、作り上げたんだろうと思います。

 

 

全体的にモノクロ映像なのですが、最後の最後で少しだけ、カラーの部分がありました。でも、そのちょっとしたカラー部分が、凄く素敵で、何とも言えない愛おしさのようなものが伝わってきました。ジュニも、ギルスも、お金を稼ぐ為の仕事としてではなく、楽しい大好きな映画を作ったんじゃないかなと思います。そんな気持ちが伝わってきました。

 

映像が美しかったです。なんてことは無い、淡々と映していく映像なのですが、それぞれの表情や、言葉によって、気持ちが伝わってくる映像でした。好きでした。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。超!と付けたいけど、観て直ぐに、ああでもないこうでもないと、感想を言い合うような映画ではありません。出来れば、一人で観て、観た後に反芻をして、再度、頭の中でリプレイしていると、この映画の素晴らしさと、感動が蘇ってくるような映画です。なので、好き嫌いが分かれるんじゃないかな。直ぐにワイワイしたい人と、一人でじっくり映画に浸りたい人と、意見が分かれると思います。自分に合ってるかもと思う方、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

P.S : 「あなたの顔の前に」を観ている方は、監督とジュニの配役が、かぶっていて、少し楽しめるかもしれません。

 

 

「小説家の映画」