「青いカフタンの仕立て屋」
を観ました。Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
海沿いの街サレの路地裏で、母から娘へと受け継がれるカフタンドレスの仕立て屋を営む夫婦ハリムとミナ。ハリムは伝統を守る仕事を愛しながらも、自分自身は伝統からはじかれた存在であることに苦悩していた。ミナはそんな夫を理解し支え続けてきたが、病に侵され余命わずかとなってしまう。ミナの死期が迫る中、夫婦はある決断をする。
というお話です。
父から受け継いだ仕立て屋で、極上のカフタンを制作する職人のハリム。昔ながらの手仕事にこだわる夫を支えるのは、接客担当の妻ミナだ。25年間連れ添った2人に子どもはいなかった。
モロッコの首都ラバトと川1本隔てた古都、サレに住む二人。コーランが響く旧市街には、新鮮なタンジェリンが並ぶ市場や大衆浴場、男たちがミントティーを楽しむカフェがあり、通路の上には大量の洗濯物がたなびく。
積み上がる仕立ての注文をさばくために、2人はユーセフと名乗る若い男を助手に雇う。余命わずかなミナは、芸術家肌の夫を1人残すことが気がかりだった。そんな時、筋がよく、ハリムの美意識に共鳴するユーセフが登場し、ユーセフを認めながらも、つい嫉妬心を抱いてしまう。
湧き出る感情をなだめるように、ミナは夫に甘えるようになった。そんな妻に罪悪感を感じながらも、大衆浴場で自分の欲望を発散せずにはいられないハリム。苦しむハリムに、命尽きる瞬間まで夫を愛し支え続けるミナ。
彼女が残した遺言に自分らしく生きる勇気を奮い起こしたハリムとユーセフ。3人の確かな絆と清々しい横顔に、感動の涙があふれ出す。後は、映画を観てくださいね。
この映画、本当に素敵なラブストーリーでした。モロッコはイスラムなので、同性愛は認められていませんが、もちろん沢山いらっしゃるらしいんです。でも、厳しい戒律があるので、表向きには、女性と結婚していたりということもあるようでした。
そんな社会に暮らす、ハリムとミナ。夫婦でカフタンの仕立て屋を営んでいます。ハリムは、とても職人気質で、こだわりがある分、仕事に時間がかかります。なので、ミナがサポートをして、お客様からの注文を上手くさばいて商売にしているのですが、さすがに仕事が増えてしまい、弟子になりそうな男性を雇うんです。そこから、ちょっと動き出すんですよねぇ。
この弟子のユーセフが、イケメンでハリムの好みだったんだと思うけど、ハリムはミナも愛しているので、彼女の為に、自分の欲を抑えて、冷たい態度で接しているんです。ミナに気を使っているのが、凄く伝わってきて、最初の方は、3人でいると、息苦しいくらいに思えました。ハリムは、ミナに自分の趣向の事は話していないと思うんだけど、ミナには最初から分かっていたようで、ユーセフが来た時は、もう、最初から目に嫉妬心が見えていて、解るけど、仕方ないよなぁと思いました。
ミナは、乳がんを患っていたようで、治療をして完治したと思っていたのに、再発をハリムには伝えていなかったようでした。段々と具合が悪くなっていくミナを心配するハリムは、そのストレスもあり、大衆浴場へ通い、実は、そこで欲望を処理するようにしていたんです。本当に、観ていて辛くなりました。本来の自分を全く見せられず、ずーっと我慢して生活を続けているなんて、いつか爆発しますよ。
でも、ハリムはミナも愛しているんです。同性愛者だけど、妻となったミナは、家族として愛しているのだと思いました。二人は仲が良く、家族としては何の問題も無かったと思います。但し、ハリムの性欲は男性に向いていて、その部分だけは、どうしても相容れなかったのだと思います。こればかりは仕方ないですよね。
ミナは、もちろんハリムを深く愛していて、彼女の愛は、ハリムが同性愛者と知っていても、揺るがないものだったのだと思います。時々、嫉妬もしちゃうけど、でも、かわいい嫉妬です。自分の好きな人が取られそうになれば、少しの嫉妬くらいしちゃいますよ。解っていても、しちゃうんです。そんな事がありながらも、ハリムの全てを受け入れているミナは、ハリムに、自分を抑えることをしなくても良いんだと伝えて、ユーセフに対しても、受け入れる気持ちを伝えます。
随分前になりますが、邦画で「きらきらひかる」という作品があり、それを思い出しました。翻訳家の女性が医者と結婚するのですが、結婚前にゲイだと告白され、それでも結婚するんです。そして夫の恋人との三角関係が描かれていくのですが、その映画、私は好きだったんですよねぇ。妻が一心不乱にベッドシーツにアイロンをかけている姿が、ちょっとした嫉妬を吹き飛ばしているような、そんな風に見えて、良かったんです。
この映画も、ミナは、夫の事を理解しようと努力しているんですけど、どうしても、時々、我慢が出来なくなり、爆発するんです。そんな姿が、邦画と重なりました。でも、この映画の方が、より深刻に見えました。だって、イスラム圏ですからね。同性愛は死刑と言われるほどですから。
ハリムは、伝統を守りながら、イスラムの戒律を破る趣向を持っている自分を恥じているようでしたが、ミナのおかげで、表情が明るくなり、未来はきっと、もう少し楽に生きていけるようになるのかなというように見えました。素敵な映画でした。
そうそう、素敵なモロッコの家庭料理とか、カフタンという伝統の衣装の素晴らしいデザインなど、地域の色々なものが描かれていて、楽しいです。特に、料理が美味しそうでした。それに、カフタンの刺繍が細かくて驚くほど美しいんです。これも必見だと思います。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。私は好きです。モロッコの風景を描きながら、そこで生きる不思議な3人の姿が、光って見えました。お互いを思いやる気持ちが、とても深くて、これほどに人を愛せたら、自分も相手も幸せになるだろうなと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「青いカフタンの仕立て屋」