「スクロール」就職して直ぐの頃の、周りの波にのまれて息苦しい姿が良く描かれていました。解ります。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「スクロール」

を観てきました。

 

ストーリーは、

学生時代の友人である“僕”とユウスケは、友人・森が自殺したことを知る。就職したものの上司からのパワハラに苦しみ、SNSに思いを吐き出すことでどうにか自分を保っている“僕”と、刹那的に生きてきたユウスケは、森の死をきっかけに“生きること”や“愛すること”を見つめ直すように。

というお話です。

 

 

就職はしたものの上司からすべてを否定され、「この社会で夢など見てはいけない」とSNSに想いをアップすることで何とか自分を保っていた〈僕〉。生きている意味も見いだせず、会社の屋上から飛び降りようかと思ったところに電話が鳴る。

 

学生時代に友だちだったユウスケからで、友人の森が自殺したという。森という名前に聞き覚えが無いが、学生時代の写真を見ると、一緒に写っている。とりあえす、葬式に参列すると、マスコミが詰めかけており、森は会社でのパワハラが原因で自殺したらしい事が解る。そのマスコミの中に、ユウスケも入っていた。

 

 

ユウスケは大学卒業後、マスコミ関係に就職し、誰からも好かれ、何をやっても無難にこなし、毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きてきた。その軽さが原因で、女性とも何度か問題を起こしていたが、気にする素振りは無い。仕事は出来るが、自分から企画などを出すことは無く、出された仕事をこなすし調子良く立ち回っていたが、上司から、そろそろ自分でやってみろと言われ、茫然とする。そんな時、森が自殺をしたニュースを聞く。

森の死をきっかけに“生きること・愛すること”を見つめ直す二人。そして〈僕〉の書き込みに共鳴し特別な自分になりたい願う〈私〉と、ユウスケが飲み屋で結婚しようと戯れに言った一言を信じ、結婚がからっぽな心を満たしてくれると突っ走る菜穂の時間が交錯していく。

青春の出口に立った4人は、明日へ繋がる入口を見つけることが出来るのか。残酷な現実を見据え、それに対峙していく強さを持つのか、それとも弱いまま流されて苦しみ続けるのか、それぞれの選択が運命を決めていく。 後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、出てくる人物がそれぞれ違うタイプで、観ていて、”あー、こういう子いたなー!”なんて思いながら楽しめました。まず、”僕”かな。一番ノーマルタイプで、あまり主体性がなく、会社でも淡々と仕事をこなすタイプ。でも、要領が悪く、いつもパワハラ上司の標的にされてしまいます。こういう子、いるよねー。そしてこういうパワハラ上司、いるよねー、というか、いたよねーかな。

 

今、こんなパワハラしたら、直ぐに飛ばされるでしょ。上司がダメ出しをしてもパワハラではありませんが、何故ダメなのか、どうしたら良かったのかを教えなければ、それはパワハラです。部下には、解るまで説明をする義務があります。教える事が出来ないなら上司失格。そこら辺が、解ってない人が多いようで、怒っても意味がないんですよ。”僕”に対して、ただ怒るだけの上司。酷かったです。そりゃ、新人なら死にたくなるかもしれません。私なら、直ぐに喧嘩しているだろうけどね。


 

そんな僕を見ていた”私”。僕と同じ会社にいて、彼のSNSの言葉を読んで自分が叫べない言葉を書いている事を知り、彼に共感します。”私”も要領良く生きれないタイプですが、それでも自分が輝ける場所を探していて、意志を強くもって、生きていきたいと思っています。

 

ユウスケは、よくいる優等生タイプで、親が自慢するような青年ですが、自分から何かをするタイプではなく、誰かに言われたことを要領良く、完璧にこなしていくタイプです。私の周りにもいましたよ、このタイプ。嫌な奴です。人が考えたアイディアに首を突っ込んできて、それを要領良く形にしてしまうので、まるで彼が最初からやったように見えてしまう。嫌でしょ。

 

 

でも、ユウスケは、自分の中に何も無いと思っていて、なんでもソツなくこなす自分に嫌気がさしていたんじゃないかな。女性に対しても、簡単に自分に付いてきて、彼の容姿や肩書だけを見ている事に絶望感を覚えて、全く本気になれなかったのだと思います。本当のユウスケは、ナイーブで優しい人物だと思うんです。だから、森が死ぬ前にユウスケに電話をかけてきたのに電話に出なかったことを、ずっと悔やんでいたのだと思います。

 

森は、学生時代に自分を誘ってくれたユウスケが、本当は優しい人間だと気が付いていて、最後に声が聞きたくなったんじゃないかな。学校で、唯一、自分に気が付いてくれたのがユウスケだったんだと思います。別に、助けて欲しいじゃなくて、声が聞きたかった、自分に気が付いてくれてありがとうって言いたかったんじゃないかな。そんな風に思いました。

 

 

この森も、少ししか描写が無いけど、良い大学で良い会社に入ったのだけど、パワハラで自殺をしたらしいんです。でもね、葬式での母親の口調から、母親が厳しかったんだろうなと感じ取れて、もし、一言、母親が、会社が嫌なら直ぐに辞めれば良いと言っていたなら、自殺は無かったのかもとも思えるんです。会社も悪いけど、命を落とすほど行かなきゃいけない理由って何なの?親の期待とか、世間体とか、そんなこと、どーでもいいんだよ。命が一番大事なんだから。そんな事を考えてしまいました。

 

最後に菜穂ですが、観ていて、本当に表面だけの女性だなと思いました。周りに良い顔をして、親にも良い顔をして、本当の自分のことは誰にも話さない。ユウスケと飲み屋で初めて会って飲んでいる時に、結婚しようかと言われ、半分は冗談と解っていたのだろうけど、その言葉にのめり込んでいくんです。親には彼氏でも作れと言われ、行政に勤めている彼女の後輩が寿退社(死語だね。)すると聞き、自分だけ取り残されているような気持ちになり、ユウスケの言葉に飛びついてしまう。つい、”アホなの?”と言いたくなるけど、この年齢の女性ならあり得るかもなと思いました。

 

 

まだまだ古い価値観を持つ人々はいて、その波にのまれてしまうと、自分が苦しくなってしまいます。あのね、自分が思うように生きればいいんです。古い価値観を押し付けてくるようなら、”古いですねぇ。”と言ってやれば良い。世界では同性婚が認められ、夫婦別姓、LGBTE、養子縁組などが通常になってきているのに、何言ってんの?とバカにしてやればいいんです。

 

出てくる人物それぞれが、問題を抱えて、息苦しい思いをしているんだけど、”僕”とユウスケは、森の自殺を契機に見方を変えて、内へ内へと向いていた意識を、外へ外へと向けるようになります。僕と出会った私は、自分の夢を見つけて前向きに進む道を見つけ、菜穂は、自分で自分を苦しめていた事に気が付き、考えを変えていくのだと思います。

 

就職したての頃って、悩みますよね。思っていた自分って、こんな感じなのかなと感じ、このまま年を取っていくのかと思うと怖くなる。このつまらない仕事を続けて行くのか、結婚するのか、子供をつくるのか、そんな未来の事を考えると、嫌になってしまう。みーんなそうですよ。私もそうでしたもん。

 

 

なるようにしかならないから、そんなに考えないで、嫌になったら辞めればよいし、結婚は強制ではないし、もし結婚しても嫌なら離婚すればよいし、今の時代、一人でも十分に生きていけます。結婚したからって、相手が頼りになる訳じゃないですからね。親が鬱陶しいと思ったら、しばらく離れて暮らせばよいんです。そうすると、親のありがたさも解かってくるし、面倒を見ようという気持ちにもなるかもしれない。一度、離れた方が良い関係もあるんです。

 

そんな事を伝えてくれる、深い映画でした。私は凄く考えさせられたな。周りに振り回される、若い頃の自分を思い出しました。大丈夫、ちゃんと途中で気が付きますから。私も気が付いたもん。自殺も考えたことがあるし、誰かを殺したいって思ったことだってありました。そりゃそうですよ。人間だもん。親がウザくて離れて暮らした時期もあったしね。そんな時期を通り越して、人間は生きていくんです。うんうん、私は幸せですよ。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。私としては、超2つなんだけど、より深く考えて観ないと理解が出来ない作品なので、表面だけを見たのでは難しいから、賛否が分かれる作品だと思います。本当は、”僕”のパワハラ上司の末路についても書きたかったけど、また長くなるから止めておきます。彼は、結局、自分の未来を見つけられなかった人だから。考えていくと、いくらでも書けちゃうので、止めましょう。とにかく、自分に置き換えて観ていくと、本当に深い映画なので面白いです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

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