「逆転のトライアングル」
を観てきました。Fan's Voice独占最速試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
モデルでインフルエンサーとして注目を集めるヤヤと、人気が落ち目のモデルのカール。2人は豪華客船クルーズの旅に招待される。船内はリッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫していた。しかし、ある夜、船が難破し、海賊に襲われ、一行は無人島に流れ着く。極限状態のなか、生き残りをかけた弱肉強食のヒエラルキーが生まれ、そしてその頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃係だった。
というお話です。
場所は高級レストラン。「ありがとう。ごちそうさま」と、恋人のヤヤに言われ、憮然とするカール。2人ともファッションモデルだが、ヤヤは超売れっ子でカールの何倍も稼いでいる。毎度男が払うのが当然という態度のヤヤにカールが疑問を呈すると、激しい言い争いになってしまう。「男女の役割にとらわれるべきじゃない」とカールは必死で彼女に気持ちを伝えようとするが、難しい。
インフルエンサーとしても人気者のヤヤは、豪華客船クルーズの旅に招待され、カールがお供することに。乗客は桁外れの金持ちばかりで、最初に2人に話しかけてきたのは、ロシアの新興財閥“オリガルヒ”の男とその妻だ。有機肥料でひと財産築いたと語る男は、「私はクソの帝王」と笑う。
船には、ヤヤに写真を撮ってもらっただけで、「お礼にロレックスを買ってやる」という「会社を売却して腐るほど金がある」男もいる。上品で優しそうな英国人老夫婦は、武器製造会社を家族経営していた。国連に地雷を禁止されて売り上げが落ちた時も、「夫婦愛で乗り切った」と胸を張る。
そんな現代の超絶セレブをもてなすのは、客室乗務員の白人スタッフたち。旅の終わりに振舞われる高額チップを夢見ながら、乗客のどんな希望でも必ず叶えるプロフェッショナルだ。そして、船の下層階では、料理や清掃を担当する有色人種の裏方スタッフたちが働いている。
ある夜、船長がお客様をおもてなしするキャプテンズ・ディナーが開催される。アルコール依存症の船長が、朝から晩まで船長室で飲んだくれていたために、延び延びになっていたイベントだ。キャビアにウニにトリュフと、高級食材をこれでもかとぶち込んだ料理がサーブされる中、船は嵐へと突入。船酔いに苦しむ客が続出し、船内は地獄絵図へ。泥酔した船長は指揮を放棄し、通りかかった海賊に手榴弾を投げられ、遂に船は難破してしまう。
数時間後、ヤヤとカール、客室乗務員のポーラ、そして数人の大富豪たちは無人島に流れ着く。海岸には救命ボートも漂着、中には清掃係のアビゲイルが乗っていた。彼らはボート内の水とスナック菓子で空腹をしのぐが、すぐになくなってしまうのは目に見えている。すると、アビゲイルが海に潜りタコを捕獲! サバイバルのスキルなど一切ない大富豪とインフルエンサーが見守る中、アビゲイルは火をおこし、タコをさばいて調理する。
革命が起きたのは、アビゲイルが料理を分配する時だった。「ここでは私がキャプテン」という彼女の宣言を、認めなければお代わりはもらえない。全員を支配下に置いたアビゲイルは、“ 女王”として君臨していくが。(公式HPより) 後は、映画をみてくださいね。
いやぁ、この映画、面白かったぁ~!映画を観ながら、何度も笑ってしまいました。カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した作品なのですが、暗くて硬くて難しい作品ではなく、本当に楽しくて、ブラックユーモアがあり、つい”ザマア”って言ってしまいたくなるような作品でした。映画祭と言うと、難しい作品に、ああでもないこうでもないって講釈を並べているように思うかもしれませんが、この作品は違います。とても解りやすい内容で、いじめられっ子が、次の日にはいじめっ子に変わっていたという事なんです。解りやすいでしょ。
豪華客船が難破して、数人が生きて流れ着いたのは、無人島と見られる浜辺でした。食料も飲料水も無く、どうしたら良いのか解らない。そんな時に、最下層のトイレの掃除係が、海から食べ物を調達し、火を起こして、調理をする。彼女には出来たんです。
他の人たちは、それを見ているだけ。何も出来ないんです。そして、ヒエラルキー(階級)が逆転します。そこでは、お金に価値は無く、食料を手に入れられる人間が一番偉くなり、キャプテンとなります。他の人間は、彼女から食料を分けて貰う為に、お金以外の自分が持っているモノを差し出すしかありません。最初の頃は、ロレックスを出してましたが、そんなモノは1度で終ってしまいます。段々と、女王のアレックスに、みんなが従うようになります。
カールは、客の中では一番の若手でイケメンです。アンジェラに気に入られて、”大奥”っぽく言うと、夜伽をさせられるようになります。ここで1つの逆転が起きているのが解りますか?カールは、人気のあるヤヤのおかげで、ファッションショーを観たり、ホテルに泊まったり、豪華クルーズに参加したりと、色々なモノを与えられているのですが、今度は反対に、カールが夜伽をする代わりに食べ物を貰い、ヤヤに食べさせます。周りの人間もヤヤも、眉をひそめる行為ですが、食べ物を手に入れる為には、仕方がありません。
そんなやり取りが目の前で起こり、ヤヤは嫉妬するほうになります。事故の前には、反対に、船員に微笑んでカールに嫉妬されていたのにね。こんな風に、立場がどんどん逆転していきます。
最初、レストランの場面で、ヤヤに対してカールが、”女だから奢ってもらうのが当たり前と思うのはおかしい。”と意見する場面が出てきます。女だから、男だからという考え方も、途中から反転して行きます。男なら狩りをして女を養うものだと言う考え方から、アビゲイルという女性が狩りをしてカールを養い、カールはその対価として夜に奉仕をするという、男女逆転が起きているんです。
カールとヤヤの二人が、一応、中心ではありますが、他の金持ちたちも、とんでもない人間ばかりでした。ロシアで有機肥料を売って儲けたお金を元手に大儲けした、酷くゲスな男性とその妻と愛人?の3人。1人でバーで飲んでいたIT長者。武器商人の夫婦。など、他にも、妄想癖を持った女性や、妻が脳梗塞で話せなくなった夫婦などなど、右を見ても左を見ても、バラエティー豊かな癖のある人々ばかり。
従業員は、そんな”変な”人々の要求を満たす為に、なんでも”ハイ、ハイ”と返事をして、いう事を聞きます。何故なら、クルーズが終わった時に、気に入られていれば、沢山のチップが貰えるからです。なんたって、写真を1枚、一緒に撮っただけで、ロレックスをくれるような人達ですから、チップもとんでもない額なのでしょう。ちょっと、キチガイじみているでしょ。
そんな状態からの逆転劇なので、トイレ清掃係のアビゲイルが、してやったりという態度になるのも解るでしょ。なので、アビゲイルが酷い態度で接しても、観ているこちらも、まぁ、仕方ないよねぇっていう気持ちになるんです。だって、それ以上の酷い態度をしているんですから。
上映時間は、ちょっと長くて147分。でも、全く長く感じません。食い入るように観てしまいました。だって、ちょっとでも見逃すと、展開が変わってしまうかもしれないんですもん。うーん、面白かった。なので、観る前には、出来るだけ水分を控えて行った方が良いかもしれません。途中でお手洗いに抜けると、状況が変わっているかもしれないので。
そうそう、船長役で、ウディ・ハレルソンが出演してました。なんか、酔っぱらって全然出て来なくて、ちょっと出てきたと思ったら、直ぐに酔っぱらって、社会主義者や哲学者の名言を羅列するという、訳の解らない人でした。船と一緒に沈んじゃったのかな?生きているのかな?行方は如何に?
この映画の主演女優のチャールビ・ディーンさんは、2022年8月に32歳の若さで亡くなっています。突然の入院で亡くなったそうで、細菌感染だという話しです。この映画が最後になってしまいました。
映画の後に、稲田豊史さんと立田敦子さんがトークで映画の解説をして下さったのですが、その中で、立田さんがリューベン・オストルンド監督とランチをされた時、この映画の事を話していらして、アビゲイル役の候補に樹木希林さんをあげていたそうなんです。もし、樹木さんが生きていらして、出演されていたら、どうなっていたんでしょうね。面白いお話でした。
稲田さんは「ぼくたちの離婚」という本を出版されているのですが、リューベン監督作品「フレンチアルプスで起きたこと」で描かれた、男性なら女性と子供を守るべきという定説に一石を投じる内容と同じように、男なら妻と子を養うべきという重圧に耐えられずに離婚する男性のインタビューを本にされているようで、うーん、解るなぁと思ってしまいました。そうそう、その時に、男は謝らないって話しもあり、書きたいけど、また長くなるから割愛しますね。
私は、根本的に男女は同じだと思っていて、どちらが守っても、養っても、助けても、いいんじゃないかと思うんです。本能ってもんがあるから、危険と思ったら周りを顧みず逃げる男性と、母性を持った女性は子供を守るという本能と、それは相反しますよね。それを責めても仕方ないでしょ。男女同権とは言わないけど、同じ立場だと思っていないと、必ず失望する部分が出てきます。最初から期待しなければ、ガッカリしないでしょ。そういう時代ですよ。
少し話が反れましたが、私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは面白いです。ちょっと題名が流行らなそうな長さだけど、内容を的確に伝えています。これだけ面白いなら、”目が覚めたら最下層”とか、”能無しセレブのロンド”とか、なんか面白い題名にしてもウケたんじゃないのかな。まぁ、何にしろ、これだけ面白いのなら、口コミで流行っていくのではないかしら。公開は2/23です。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S:リューベン・オストルンド監督作品は、2011年に東京国際映画祭のコンペティションで上映された「プレイ」という作品が日本では最初だと思いますが、その作品は日本で一般上映されなかったみたいですね。残念です。
「逆転のトライアングル」