「小さき麦の花」中国で大ヒットした意味が解ります。誰もが懐かしく暖かい気持ちを感じると思います。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「小さき麦の花」

 

を観ました。

Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

2011年、中国西北地方の農村。マー家の四男・ヨウティエは、見合い結婚した障がいのある内気なクイインと暮らし始める。互いに家族から厄介払いされたのだ。二人は、ぎこちないながらも互いを思いやり、寄り添っていく。ある日、農村改革により空き家を解体した者にお金が入ることになり、出稼ぎに出た村人の空き家に住んでいた二人は追い出されてしまう。

というお話です。

 

 

2011年、中国西北地方の農村。貧しい農民ヨウティエは、マー家の四男。両親とふたりの兄は他界し、今は三男・ヨウトンの家に暮らしているが、息子の結婚を心配するヨウトン夫婦にとって、ヨウティエは家族の厄介者。一方、内気で体に障がいがあるクイインもまた厄介者だった。

互いに家族から厄介払いされるかのように、ふたりは見合い結婚、夫婦になった。ぎこちなく、それでも互いを思いやり、作物を育て、日々を重ねていくふたり。ヨウティエのことをいつも気にかけるクイイン。そんな彼女の気持ちに愛おしさを覚えるヨウティエ。



 

ある日、農村改革により空家を解体した者に補助金が出ることになり、出稼ぎに出た村人の空家に住んでいた二人は追い出されてしまう。

仕方なく小さな小屋に住みながら、家を建て始めるのだが、ヨウティエが作ったたくさんの日干しレンガが突然の大雨に襲われる。必死で雨からレンガを守る二人。そんな不運さえもふたりには大切な日々となる。

クイインは初めて会ったその日からヨウティエの優しさに気付いていたと話す。ロバと、ヨウティエと、クイインと。力を合わせ、毎日懸命に働き、ついに自分の家をもった。だが、その幸福は長くは続かなかった。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、素敵な映画でした。中国は近代化が進み、内陸部は衰退して、人々が都会に出て行ってしまうという寂しい状況の中、細々と暮らす一組の夫婦が主人公で、何とも言えないかわいい雰囲気の二人なんです。素朴で素直で、誰かの為になるならと、何も文句を言わずに嫌な事を引き受ける夫ヨウティエと、障がいがあり人見知りだけど、とても優しいクイイン。二人は、本当に仲が良く、どんな逆境に合っても、必死で耐えて、頑張っていきます。

 

2011年というと今から12年位前なのですが、まだ中国では、こんな状態だったようです。都会は近代化が進んで、発展していたようですが、内陸部の田舎では、まだまだ昔の生活を続けている人が多く、貧しい人々が多かったようです。畑を耕したり、主格したりするのも、機械を使わずに、ロバを使ったり、人力でしているんです。

 

 

人が住んでいる家も、土で作ったレンガを積み重ねただけで、断熱効果など一切無いような状態です。ベッドだって、土の上に段差を作って、その上に布団を敷いただけのように見えました。だから、凄く寒いんじゃないかなぁ。それでも、二人はしあわせそうに暮らしているんです。

 

ある日、その家の持ち主が帰ってきて、取り壊すから明日までに出て行ってくれと言います。酷いでしょ。都会に出て、自宅を空家にしていた人物で、ヨウティエはクイインと結婚した時に家を出され、この家を借りていたんです。突然に出て行けなんて、酷いと思いませんか?政府が空家を取り壊すと補助金を出すという政策を決めたようで、使っていないなら取り壊した方がお金になると、みんな、田舎に取り壊しに帰ってきたんです。

 

中国は共産主義なので、個人が土地の所有権を持っている訳ではなく、空いている土地に家を建てて、持ち主となって権利が生まれるようでした。なので、農業をやらないのに家だけ残しておかれると国は困るので、取り壊したらお金を出すという事にしたようでした。

 

 

ヨウティエは、仕方なく近くの小屋に住み、空いている土地に自分の家を建て始めます。建てれば自分の権利になりますからね。そして、クイインと二人で、土を捏ねてレンガを作り、家を建てます。日本からしたら、信じられません。だって、2011年ですよ。日本は、建築基準法でガッチガチに決められて、耐震やら消防用やら、もうプロが建てるしかないという状態なのに、暢気にレンガを積んでるだけって、凄いです。地震なんて来ないと思っているんだろうな。

 

でもね、そんな二人の毎日を描いて行くのですが、これが素敵なんですよ。ベタベタした場面などは一つも無いのに、二人が深く愛し合っている、信頼し合っているというのが、こちらに伝わってくるんです。この雰囲気は、うーん、私はチャン・イーモウの「初恋のきた道」のように感じました。昔のしあわせな時間を描いているように見えたんです。でも、これは昔じゃないんですけどね。

 

 

家も建てて、しあわせに暮らす二人ですが。嫌な空気も漂っています。前の家に居た時から、豪農の当主が病気になり輸血が必要で、RH-の血液を持つヨウティエに輸血をして欲しいと頼まれるんです。この当主の家が、村の人たちの収穫をまとめて政府に収めているので、今までの収穫分のお金が払ってもらえず、みんなが困るんです。なので、無償で血を何度も輸血するんです。クイインが、もう止めてというのに、みんなの為だと言って、するんです。

 

豪農の息子は嫌な奴で、ホント、偉そうなのよ。ちゃんと頼めっつーの!輸血をして貰ったなら、それなりのお礼も持ってきなさいよ。ヨウティエは、何も貰わず、無償で血を分けるんです。相手は、凄くズルい事をしているのに、それでも正直に振る舞うんです。これこそ、「正直者はバカを見る」の典型だと思うけど、そんなヨウティエだからこそ、クイインは何処までも尽くしたのだと思います。本当に良い人でした。今の中国には、こんな人、いないんだろうな。

 

 

苦労をし、正直に生きていた二人は、貧しいけれどしあわせだったと思います。でも、ある日、突然に悲劇が二人を襲います。驚くような展開でした。でもね、こんな事って、あるのよねぇ。ここからは、もうネタバレになるから書けないんだけど、素晴らしいお話でした。最後まで観ると、ああー、まだ良い時代が残っていたのに、それも無くなってしまったんだなという気持ちになって、自分には関係のない場所だけど、ノスタルジーを感じました。

 

この映画、中国で若い方たちに大ヒットしたそうですが、この懐かしい雰囲気が、彼らを引き寄せたのかな。私は、子供の頃が懐かしくなり、セミを捕まえたり、オタマジャクシを捕まえてドキドキしたり、という気持ちを思い出しました。あんな場所は、もう無いんだろうなと思うと、寂しくなります。マンションの中の木にセミがいても、網で取りに来る子供なんていませんもん。寂しい世の中になりました。

 

 

そんな事を考えてしまうような映画でした。主演のお二人が、とても良いのですが、ヨウティエの方は、監督の義伯父さんで、本当に農家をしているそうです。クイインは、有名な女優 ハイ・チンさんで、他の映画と比べると驚くような変身ぶりでした。そんな二人ですが、かわいかったです。

 

この映画の翻訳をされた、磯さんという配給会社ムヴィオラの社員の方が、映画の後に解説をして下さったのですが、とても一生懸命お話してくださって、中国の状況などを説明してくださり、理解が深まりました。公式HPやパンフレットなどにも、解説が付いていると思いますので、後からでも読んでみて下さい。

 

私、リー・ルイジュン監督の作品は、2014年の東京国際映画祭で観たんです。その時も、雰囲気の良い作品で子供の姿が生き生きとえがかれていたのですが、今回も主人公夫婦の姿が素晴らしいです。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。またも、お薦めしたい作品でした。だって、こんなに素敵な映画、沢山の人に観て欲しいです。国は違えど、とても懐かしい気持ちが湧いてくるような、そんな映画でした。人が、穢れていない心を持つことが、どれだけ尊い事なのか、この映画を観ると理解が出来ます。そんな尊い人々でも、時代の流れには抗えず、埋もれて行ってしまう。悲しいことですが、何か教えてくれたような気がしました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「小さき麦の花」