「母性」母親には母性があると思うのが間違いで、もし無いようなら娘を誰かが助けてあげないとね。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「母性」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

女子高生が自宅の庭で死亡する事件が起きた。発見したのは少女の母で、事故なのか自殺なのか真相は不明なまま。物語は、悲劇に至るまでの過去を母と娘のそれぞれの視点から振り返っていくが、同じ時間・同じ出来事を回想しているはずなのに、その内容は次第に食い違っていく。

というお話です。

 

 

女子高生が遺体で発見された。その真相は不明。事件はなぜ起きたのか?
 

母親のルミ子は、神父に告白を始める。「私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました。」自殺した娘を愛していたと訴えます。そして彼女は自分の半生を語り始めます。ルミ子は、一人娘で、母親に溺愛されて育ってきました。何をするにも、母親が喜んでくれるだろうことを選び、結婚さえも、母親が”良い人”と呼んだ田所と結婚しました。

 

結婚して半年ほどで妊娠し、自分の身体の中に生物がいると思うと気持ち悪いという思いに駆られますが、母親に妊娠したことを喜ばれ、良かったという思いに変わります。そして、娘が生まれ、母親に喜ばれるようにキチンとしたしつけをしました。

 

 

そんなある日、事件が起こります。台風の日に、家の周りの木が強風により倒れ、家を突き破りました。木が倒れた下の部屋に寝ていたルミ子の母親と娘がタンスの下敷きになり、その上、台風で停電になった部屋に付けてあったロウソクが倒れて火事になってしまいます。

 

ルミ子は二人を助けようとしますが出来ず、娘だけ連れ出せて、母親が死んでしまいます。家は焼けてしまい、その日から、田所の実家に住むことになります。結婚した当時は同居しようと言われていたのですが、実際に一緒に住むとなると迷惑だと文句を言われ、ルリ子は義父母に気に入られようと必死で世話をします。

 

 

そんな辛い毎日を送るルミ子を見ている娘は、母親に愛されようと、祖母に文句を言い、母が喜ぶ行動をするのですが、全く受け入れられず、何処までも拒否されます。

 

ルミ子は、娘を愛能う限り大切に育てたと言っており、自分では愛しているつもりなのですが、娘から見ると、どんなに望んでも、母親から愛されることは無かったという言葉に突き当たります。どちらが言っている事が事実なのか、何が娘を追い詰めたのか。後は、映画を観てくださいね。

 

私は、原作を読んでから観に行ったのですが、ほとんど原作通りでした。ちょっと無理がありそうな部分は変更されていましたが、ほぼ、一緒だったように思います。うーん、この内容は、女性の真実を突き詰めているので、戸田さん、やり難かっただろうなぁ。

 

 

通常、ルリ子のようなタイプの女性は、自分が間違っている事に気が付いていないので、いつも自分は正しくて、誰にでも喜ばれる、性格の素晴らしい女性と思っているんですよ。だから、それを理解して、この演技をするっていうのは、気が狂っている役をやると同じなので、凄く難しいと思うんです。いやぁ、戸田さん、素晴らしいです。後を引きずらないようにして欲しいです。この役に引っ張られたら、大変ですから。

 

ルリ子は、いつまでも”娘”にしかなれない女性で、娘の清佳は、そんな母親に愛して欲しいと願っていたんです。でも、ルリ子には母性が生まれなかったのかな。仕方ないです、こういう女性もいるんです。よくぞ、湊かなえ先生、書いてくれましたという感じですが、ニュースでも出てくる子供を殺してしまった母親とかの中にも、こういう女性は多いと思います。口では”かわいい”とか”愛してる”とか言っているのに、本心からではないんですよ。母親はこうであるという演技をしているんです。恐いけど、本当なんですよ。

 

 

こういう人、いますもん。子供が居ても平気で遊びに行くし、子供よりも男を取ったりというのは、母性が生まれず、女のまま、娘のままなんです。人それぞれだから、文句は言いませんけど、子供が可愛そうだなと思います。でも、こういう事って、他人は言えませんからね。虐待までいってしまえば、通報ということが出来ますが、ただ、母性が無いだけで、一緒に暮らしているのであれば、何も言えませんから。子供は不幸です。

 

そうそう、ストーリーにからくりがあり、最初に見えている家族がどうなるのかというのは変わりませんが、ちょっと違う展開が入っています。それが、湊かなえマジックかな。湊先生の作品は、結構、このマジックがあるので、面白いんです。今回も、良く出来ていました。でも、私は、原作を読んでから観に行ったので、よく理解が出来ましたが、もしかしたら、映画だけだと、解り難い部分もあるのかもしれません。

 

 

主人公のルリ子は、お嬢様育ちできたのですが、結婚して、母親が亡くなってからは、義父母の言われるがままに、ずっと働かされるという、昔の農家のお嫁さんのような、辛い日々を送ることになります。でも、それに何一つ、文句を言わないんです。傍から見れば、出来たお嫁さんなんです。夫はルリ子を助けもせず、遊びに行ってばかりで、ホントに酷い男だなという感じでした。

 

でも、きっとルリ子は、義父母に対しても、娘として可愛がって貰いたかったのだと思うんです。いつまでも”娘”として。だから、清佳に対しては、何処まで行っても母親にはならないんです。なので、清佳も諦めて、友達程度に思ってしまえば、何の期待もせずに、平然と暮らしていけると思いました。何事も、人に期待をするから辛くなるのであって、誰にも期待をしなければ、何てことはありません。

 

 

私も、最近、この期待をしないことが一番という事が解ってきました。仕事でも、期待をするからがっかりするので、最初から期待をせずに、自分がやることと思っていれば、何てことは無い。相手をある程度は信用しますが、心からの信用は出来ませんよね。最近、特に、そう思うようになりました。昔のように、1を言ったら10を理解してくれるという人は居なくなりましたから。まして、理解しろなんて言おうもんなら、直ぐにパワハラだとか言われてしまうので、もう期待はせず、それなりの仕事で、それなりの給料しか払わないとすれば、怒りもわきません。

 

それにしても、ルリ子の母親役の大地さん、綺麗だったなぁ。美しくて、優しくて、まるで天使のような母親でした。それに対して、義母の高畑さんの下品そうな笑い方や酷い言葉などが、凄く対照的で、上手いなぁと思いました。これだけ対照的に見せてくれると、ルリ子が不幸に見えるんだけど、この義母、表面的な態度とは裏腹に、ルリ子を大切に思っている部分もあるようで、こんなもんなのかなと思いました。一緒に暮らしていると、文句を言いながらも、大切な家族になっていくのでしょう。そんな家族の風景が、このお二人の演技から、観ることが出来ました。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。但し、原作を読んでからの方が良いかもしれません。私は、読んでからだったので、深い部分まで観ることが出来て楽しめたのですが、もしかして、初見だと、クルクル変わる母娘の証言に振り回されて、よく解らなくなってしまうかもしれません。キャストが素晴らしいので、演技にも惹き込まれると思います。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「母性」