「ザリガニの鳴くところ」差別や偏見が残る地域で生き延びた少女は自分の生きる場所を見つけられるか。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ザリガニの鳴くところ」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

ノースカロライナ州の湿地帯で、将来有望な金持ちの青年が変死体となって発見された。犯人として疑われたのは、「ザリガニが鳴く」と言われる湿地帯で育った無垢な少女カイア。彼女は6歳の時に両親に捨てられて以来、学校へも通わずに湿地の自然から生きる術を学び、たった1人で生き抜いてきた。そんなカイアの世界に入り込んだ優しい青年と強引な青年との出会いが、彼女の運命を大きく変えることになる。

というお話です。

 

 

1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で、裕福な家庭で育ち将来を期待されていた青年の変死体が発見された。容疑をかけられたのは、‟ザリガニが鳴く”と言われる湿地帯でたったひとり育った、無垢な少女カイア。

 

カイアは、両親と兄姉と暮らしていたが、父親の暴力に耐えられずに母親が家を出て行き、父親は残った子供にも暴力を振るい始め、兄姉は、次々と家を出て行ってしまう。残った父親と最年少のカイアは、そこで暮らし続け、カイアは父親の暴力を受けないように、出来るだけ顔を合わさないように生活をしていた。ある日、とうとう父親までもが家を出て行き、一人残されたカイアは、まだ6歳だった。

 

何の生きる術も教えられずに育ったカイアは、学校へも通えず、花、草木、魚、鳥など、湿地の自然から生きる術を学び、何とかひとり、生き抜いていた。そんな中、湿地の中で心優しきひとりの青年テイトと出会い、彼に文字や数学などの勉強を教わり始める。熱心に勉強をして、文字も読めるようになったのだが、テイトは大学へ行くために湿地を去り、帰ると約束した日に戻ってきませんでした。

 

 

寂しさを知ったカイアは、新しく出会ったチェイスに惹かれ始めます。チェイスがあまり評判が良くないことは知っていましたが、寂しいカイアは、強引な彼に惹かれて関係を持ってしまいます。しかし、チェイスに婚約者がいることを知り、彼を避けるようになりますが、チェイスは執拗にカイアを追いかけ、とうとう暴力まで振るいます。父親を思い出したカイアは、チェイスから逃げる事を選び、本の執筆の打合せで街へ出かけて滞在することにします。

 

カイアが湿地にいない間にチェイスは変死体となって発見され、事故なのか殺人なのかという事になり、カイアが容疑者として逮捕されたのでした。カイアにはアリバイがありますが確定ではなく、無理をすれば帰れたのではないかと検察側は主張します。カイア側の弁護士は、彼女が湿地の少女としてずっと蔑まれてきたが、6歳で親に取り残されなければ、偏見を持たれることは無かったと言い、差別や偏見を捨てて、冷静に事件を判断して欲しいと訴えます。そして…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、面白かったです。アメリカでも、地域で差別されることがあったんですね。日本の同和問題に近いのかしら。そこに暮らしているだけで偏見を持たれて、カイアは学校に1日だけ行くのですが、子供たちに酷い差別を受けて二度と行かなくなります。差別って、子供の残酷さがあからさまに出ますよね。親がいう事を、そのままぶつけるからだと思いますが、酷いと思いました。

 

まだ、小学生の子供が、たった一人で沼地で生きていくのは、並大抵ではありません。最初の頃は、家に残っていたモノを食べていたのですが、いつまでもある訳ではありません。沼地で観察して、ムール貝を取って、お店に買ってもらう事を思いつきます。雑貨屋のご夫婦はとても良い人たちで、カイアから貝を買い取り、船のガソリンも提供してくれて、カイアは何とか生き延びるんです。ここで助けて貰えていなかったら、死んでいたと思います。

 

 

これ、凄く不思議なのですが、1969年って、子供が一人でいても、行政が保護するとか無かったのかしら。今なら、子供が一人で暮らしているとなったら、直ぐに行政が行って、保護して施設に入れるでしょ。この時代も保護していたと思うんだけど、どうしてそういう措置が取られなかったのか不思議でした。湿地の子供は保護しないとかいう差別もあったのかしら。いくら何でも6歳くらいの女の子が一人で暮らしていたら、誰かが連絡して保護してくれなきゃ死んじゃいますよ。たまたま、今回は助かったけどね。

 

そして、彼女に勉強を教えてくれる男の子の友達が出来て、幸せになれるかもと思うのですが、彼は大学に行ってしまい、沼地に帰ってこなくなります。若い頃は都会に行ったら、目新しい事が多くて、田舎の事なんて忘れちゃうよね。寂しくなったカイアは、町で出会った有力者の息子・チェイスと付き合います。彼は、最初はとっても優しくて紳士なんだけど、実は裏表のある奴で、決められた婚約者もいるんです。

 

 

でも、このチェイス、もしかしたら本当にカイアを愛していたのかもとも思いました。町の有力者の息子で、未来は後を継ぐようにと教育され、付き合う人間も限定されたりと、息苦しい毎日を送っているように見えました。なので、自由に生きているようにみえるカイアに、惹かれたんじゃないかと思うんです。そして、カイアと付き合う事で、親に反発していたんじゃないかな。でも、結局、親に逆らう事は出来ず、カイアを裏切ることになってしまう。そんな事があったので、彼女に殺人の容疑がかかってしまうんです。

 

裁判は、裁判員制度なので、湿地で育ったカイアは、差別と偏見の目で見られているので、とても不利です。そんな事はしていないと言っても誰も信じず、アリバイなどを示しても、こうやったら出来るとか、とにかく凝り固まった偏見で彼女を追い詰めていくんです。彼女の味方は、弁護士と雑貨屋の夫婦とテイトだけ。彼女の兄も、大きな街からやってきますが、町全員が敵のような状態で、湿地帯に住んでいる娘なんてロクなもんじゃなと思われてしまっているんです。

 

 

そんな偏見が渦巻く裁判の中で、カイアの弁護士は、偏見を捨てて、冷静に状況を判断して欲しいと訴えます。 当たり前の事ですよね。裁判で、最初から犯人を決めつけているのでは、困ってしまいます。でも、そんな事がまかり通っていた時代、たった一人でそんな差別や偏見に立ち向かったカイアがどうなったのか、確認して欲しいです。

 

差別や偏見は、いつの時代も無くなりません。一つなくなれば、また、新しい差別が生まれます。人間の心が、いかに弱くて、自分が相手より優位に立っているという優越感が無ければ、不安で生きられないということが、よく表れています。自分に自信があれば、何も怖くないのにね。

 

 

差別や偏見、そして周りの大人たちに振り回されたカイアは、大好きな湿地帯の動植物と共に、生き抜くことが出来るのか。そして、彼女に平穏な日々はやってくるのか。それは、映画で確認してください。

 

ちょっと、ひとつだけ文句を書かせていただきます。この映画のCMで、アン・ミカさんが宣伝しているのですが、この内容に合わないんです。彼女の声だと、全く重さが無いので、軽い映画に思われてしまう。この映画は、差別と偏見によって、殺人罪に問われそうになる女性のお話です。謎も多いし、DVがあったりと、サスペンススリラーと言って良いと思うので、もう少し重みが有れば、ドキドキするかもと思って、観に行く人も増えたと思うけど、これだと軽く見られてしまい観に行きません。もう少し、考えて欲しかったです。私も、原作を知らなければ、観に行くのを躊躇いましたもん。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。良く出来たサスペンススリラーだと思いました。さすがに原作が良いだけあります。湿地帯の自然風景も美しかったし、その中で育ったカイアが、無垢で美しい少女から女性に変わって、汚い社会を知っていく姿は、ちょっと悲しくなりました。でも、それが人間ですもんね。仕方ありません。面白かったと思います。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ザリガニの鳴くところ」