「シスター 夏のわかれ道」
を観ました。
Fan’s Voice独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
看護師として働きながら、医者になるため北京の大学院進学を目指すアン・ラン。ある日、疎遠だった両親が交通事故で亡くなり、会ったことのない6歳の弟・ズーハンが彼女の前に現れる。望まれなかった娘として親元を離れたアン・ランと、待望の長男として愛情を受けて育ってきたズーハン。親戚から弟の養育を押し付けられ、仕方なくズーハンの面倒をみることになり、幼い弟を思いやる気持ちが徐々に芽生え始める。
というお話です。
看護師として働くアン・ランは、医者になるために北京の大学院進学を目指していた。ある日、疎遠だった両親が交通事故に遭い、亡くなってしまう。ショックを受けていると、見知らぬ少年が連れて来られる。6歳の弟・ズーハンだった。アン・ランが知らない内に、弟が生まれていたのだった。
望まれなかった娘として、早くから親元を離れて自立してきたアン・ラン。中国では、男尊女卑が強く、後継ぎは男という暗黙の了解があり、第一子に女が生まれてしまうと、一人っ子政策があったために、どの家庭でも問題になっていた。アン・ランの家でも同じで、彼女は父親から疎まれていた。
一方で、一人っ子政策が終わり、第二子で待望の長男が生まれ、愛情を一身に受けて育ってきたズーハン。アン・ランは全く家族の記憶から消えていたようで、実家に行くと3人の写真しか置いていない。それでも後片付けをしていると、姉であることを理由に親戚から弟・ズーハンの養育を押し付けられる。
アン・ランは今まで、親からの補助は一切受けず、大学へ行き、看護師となった。本当は、元々医者志望で願書を出していたが、親に勝手に地元の大学の看護希望に書き換えられてしまい、看護師となった。その時から一切、親からの援助は受けていない。医者になるという自分の願いを叶えるために、必死で勉強をしているところなのだ。それなのに、見ず知らずの弟を押し付けられたのではたまらない。
アン・ランは、弟を養子に出すと宣言し、養子先が見つかるまでは、仕方ないので面倒をみることにする。両親の死すら理解できずワガママばかりの弟に振り回される毎日だが、ズーハンも自分の状況を把握しはじめ、それと同時に、アン・ランは、幼い弟を思いやる気持ちが少しずつ芽生え始める。しかし、大学院の受験が近づき、北京行きが迫ってくる。アン・ランの固い決意が揺らぎ始めるが、姉の気持ちを察したズーハンは…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、いい映画だったぁ。中国じゃなくても、日本人にも、この辛さは理解出来るんじゃないかな。若い人にはどうか分からないけど、昭和、平成前期に生まれた方は、まだまだ、男子が優遇される時代を生きているので、アン・ランが味わった悔しさが解ると思います。中国ほどじゃないけど、日本でも、やっぱり後継ぎは男とかって言うでしょ。大体、天皇家が男系と決まっている時点で、間違っていると思っています。
アン・ランが生まれたとされるのは、1990年代だと思います。その時代、こんなに女性が冷遇されていて、男ばかりが良しとされていたんですね。アン・ランも苦しんでいたけど、アン・ランの父方の伯母も、姉ということで、全てを我慢させられたと言っていました。進学もさせて貰えず、弟のために、いつも働かされていて、結婚してからは、弟のためプラス夫のための仕事が入り、本当に忙しそうに動く伯母の姿も描かれています。その悔しさを語る場面もあり、何故、ここまで男の為に女性が犠牲にならなければならないのかなと思いました。
アン・ランは、女に生まれたという事で、父親に疎まれ、早い時期に家を出て、実家に帰って来ていませんでした。彼女自身は、とても両親の愛情を欲していたのですが、何処までも冷遇され、女は只の働き手くらいにしか思われず、医学の道に進もうとするも途中で阻止をされ、そこからは自分で働きながら、実家とは一切縁を切って、勉強をしていたので、弟の事は、全く知らなかったんです。一人っ子政策が終わったので、第二子を産んだんでしょうね。そして待望の男子。もう、溺愛していたように見えました。
そんな両親が交通事故で亡くなり、唖然とするアン・ラン。本当は、頑張ったねと、両親に認めて貰いたかったのに、その願いは叶えられませんでした。そしたら、知らない弟が現れて、凄く愛されていたという事を知り、そりゃ、嫉妬しますよね。自分は愛されなかったのに、なんでこんな子がと思ったんじゃないかな。血の繋がった弟という感覚が、全く湧かなかったのではないかと思います。そんな子供を預かりたくないですよね。いくら弟と言われても、憎んでいるんだから。でも、面倒を見るようにと言われて、仕方なく家に連れて帰るんです。
ズーハンという弟、見た目は可愛いんだけど、甘やかされていたから、凄くわがままなんです。欲しいモノは諦めないし、拒否されれば泣き叫ぶし、ホントにクソガキなんです。私でも、この子は面倒見たくないなと思うほどでした。性格も悪いしね。アン・ランに慣れて行くと、少し素直になってきて、冷静になったのか、両親の死についても、理解して行きます。そうなるとかわいいんだけどね。
アン・ランは、病院で知り合った裕福な家庭の医者の卵と付き合っていて、彼は優しい性格です。キツいアン・ランとは正反対なので、合っているのですが、優柔不断です。彼も長男で甘やかされているんです。なので、二人で北京に行こうと約束しているのですが、どーも、彼は今の土地で医者として働きたいようでした。弟の問題の上に、一緒に北京へ行くはずだった彼との問題も出てきてしまい、アン・ランは、どうしようもなく、追い詰められて行きます。
弟が可愛くなってきて、出来たら一緒に暮らしたいかもと思い始めても勉強の事があるし、北京に一緒に行くはずだった彼も当てにならないと分かり、親族に頼みたくても頼りに出来る親族はいないし、八方塞がりになっていくアン・ラン。勤めている病院では、女性医師と喧嘩をしてしまうし、どうしようもありません。
もう少し、このアン・ランに余裕があれば良いのですが、いつもキツキツで、余裕が無いんです。若いから仕方ないけど、本当ならこういう時に両親が相談に乗って、解決していく問題なんですけどね。中国の女性は、今までどうやって生きてきたのかしら。こんなに、女は道具くらいにしか思われていなかったら、大変だったろうな。現代では、中国でも女性が頑張っているみたいだけど、田舎の方では差別的な扱いを受けている女性がまだまだいそうですね。
この映画、内容があり過ぎて、考えさせられる部分が多すぎて、中国で社会現象となった意味が解ります。男女の差別は、日本でもある事だと思います。日本って、あまりこういう事を表に出しませんけど、根強く残っていますよね。表に出さないから陰険なんですけど。うーん、でも、素晴らしい映画でした。これは、沢山の人に観て欲しいです。先日、「ウーマン・イン・モーション」というイベントでお話を聞いてきましたが、男女の差を失くし、人間として平等に仕事をし、生活が出来るように、社会が変わって行かないといけませんよね。
最後に、主演のチャン・ツィフォンさん、「チィファの手紙」の女優さんですが、上手いし美しいです。そして、ズーハン役のダレン・キムさん。この子役、凄かった。クソガキの演技から、姉を思う演技まで、幅広く演じられていて、上手かったなぁ。他も、完璧と言って良いような演技で、圧倒してくれます。とても満足出来ました。
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。私は、傑作だと思います。よく、ここまで描いてくれました。日本から見ると、極端に見えるけど、でも、日本でも根強く残っている男女差別の問題です。表向きは改善してきていても、それぞれの心の中までは、まだまだ変わっていないんじゃないかな。色々と気づかせてくれる映画だと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「シスター 夏のわかれ道」