「島守の塔」
を観てきました。
ストーリーは、
「鉄の暴風」と呼ばれた激しい空襲や艦砲射撃、そして上陸戦により、約20万人が犠牲となった太平洋戦争末期の沖縄戦。絶望の淵に立たされながらも「命こそ宝」と訴え後世に希望を託した2人の人物と、戦争に翻弄される沖縄の人々の姿を描き出す。
というお話です。
沖縄戦末期、それまで知事として赴任していた官僚は、休暇と称して沖縄から逃げるように脱出して帰ってこなかった。その代わりに、本土より派遣された内務官僚がいた。学生野球の名プレーヤーとしてならし、戦中最後の沖縄県知事として沖縄に赴任した島田叡。島田は、度重なる軍の要請を受け内務官僚としての職務を全うしようとする。
しかし、戦禍が激しくなるにつれ、島田は県政のトップとして軍の論理を優先し、住民保護とは相反する戦意高揚へと向かわせていることに苦悩する。そして、多くの住民の犠牲を目の当たりにした島田は「県民の命を守ることこそが自らの使命である」と決意する。
もう1人、警察部長の荒井退造も、新しく沖縄に赴任してきた。島田と行動を共にし、職務を超え県民の命を守ろうと努力する。
沖縄戦で2人はそれぞれ重い十字架を背負っていた。荒井は、子供など県民の疎開を必死に推し進めていたのだが、その矢先、本土に向かっていた学童疎開船「対馬丸」が米軍の攻撃に遭い、数多くの子供たちが犠牲となった。
また、島田は知事として、軍の命令で鉄血勤皇隊やひめゆり部隊などに多くの青少年を戦場へと向かわせていた。2人はそれぞれ十字架を背負いながらも、戦禍が激しくなるのに伴い、必死に県民の疎開に尽力し多くの沖縄県民を救っていった。一億総玉砕が叫ばれる中、島田は叫んだ。「命どぅ宝、生きぬけ!」と。後は、映画を観てくださいね。
この映画、村上さんと荻原さんがダブル主演となっていたので、村上さん好きな私は、ぜひ観たいと思っていたんです。でも、横浜のジャック&ベティでの上映時間がどうしても合わず、もしかして観れないかもと思っていたら、キノシネマみなとみらいで上映してくれることになり、やっと鑑賞することが出来ました。
第二次世界大戦時の沖縄のお話です。その時に、必死で沖縄県民を守ろうとした県知事さんと警察部長さんの姿が描かれていました。沖縄戦、本当に酷かったんですね。というか、やはり戦時下の日本の教育が恐ろしいモノだったのだという事が、この映画を観て、よく解りました。敵に捕まるくらいなら自決しろって、人の命を何だと思っているんでしょう。映画の中でも、米兵に殺されるよりも、日本人同士で殺し合っている場面や、自決する場面が幾つもありました。
沖縄では、食べる物も無くなり、逃げる場所も無くなり、兵士も死んでしまって、一般の住民が兵隊として招集され始めます。壕と呼ばれるようなトンネルを沢山掘って、ゲリラ戦の準備を始めるんです。その沢山の壕の所々に、逃げ場所を作ったり、病院を作ったり、県庁を作ったりしていたようでした。そして、まだ15歳くらいの女学生を看護士として配置させたりするんです。まだ子供なのに、戦争で勉強も出来ず、夢も語れなくなってしまう。本当に悲しくなりました。
実際に、こんな残酷な事が行われたのだろうと思うと、言葉が出てきません。女学生たちは、米兵に捕まったら屈辱されるから、自決するんだと教えられるんです。確かに戦争ですから、強姦などの犯罪もあったと思うけど、死んでしまったら何にもならない。何故、死ねなんて教えたのでしょう。命を繋いでいく事の方が、日本の為になるのに、戦争って、人間を狂わせてしまうのでしょうね。
そんな状況の中、沖縄県知事の島田さんは、軍の命令に従っていましたが、あまりの状況の酷さに、軍の方ではなく、住民の方を向き始めます。何とか、人々が生き延びられるよう、考えて、行動をしていきます。映画の中では、島田さんだけが、状況を判断し、予測して行動していました。米が、あと3ヶ月分しかないとわかると、直ぐに台湾に行って、米を買ってきたり、住民を避難させたり、あらゆる手を尽くしてみるんです。でも、どんどん手詰まりになっていってしまう。こんなに沖縄は大変だったんですね。
住民の方々は、沖縄の方言を使ったらスパイと見なされるという条例が出てしまい、自分たちの言葉まで奪われてしまいます。確かに、沖縄の方言は難しくて理解出来ないけど、だからと言って、スパイだと決めつけて殺すなんて、酷いですよ。映画を観ていると、もう、考えられないような事ばかり起こり、驚きました。
以前、こまつ座の舞台「木の上の軍隊」を観ました。山西さんと藤原さんが兵隊役で、戦争中に沖縄の木の上に逃げて、終戦したことも知らず、そこから米軍に占領されていく沖縄を観ているというお話なんです。それが、現実なのか夢なのかは解りませんが、日本が如何にモノを知らなかったのかという事がよく解ります。知識の無さが、負けた要因なんじゃないかなって思うほどでした。やはり上に立つ者の先見の目が大切なのでしょうね。
それを思うと、この島田県知事と、荒井警察部長は、その状況を呼んで、必死で県民を助けようとしていたというのが観て取れました。でも、二人が頑張っただけじゃ、全員を助ける事は出来なかったのでしょう。沖縄の4人に1人が、この戦争で亡くなったそうです。
とても良い映画だったのですが、途中途中で、実際の映像が挟み込まれていて、物語に集中してきたという所で、リアルなモノクロの映像が入るので、ちょっと集中が途切れるというか、盛り上がって行けない感じがありました。もう少し、実際の映像を減らして、物語が盛り上がってきたところを途切れさせないようにしてくれたら、もっと集中出来て、のめりこめたかもしれません。
吉岡さんが、県知事の秘書役を演じていて、最初は、軍に教えられたとおりに自決すると言っているのですが、島田に生きろと言われて、考えを改めていくんですね。その盛り上がっているところで、実際の映像が入ってくると、ちょっとガックリという感じでした。リアルな映像が大切な事も解るのですが、もう少し、入れ込む場所を考えて欲しかったかな。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。沖縄戦が、いかに残酷な闘いだったのかという事が、リアルに描かれていると思いました。観ていると、ちょっとキツい場面もありますが、同じ日本なのに、米国の領土にされて何十年も苦しみ、日本に返還された今も、基地問題で苦しんでいるという事を、もっと日本人全員が理解すべきなんじゃないかなと思いました。そう簡単に解決することではないかもしれませんが、今一度、向き合うべき問題なのではないかと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「島守の塔」