「冬薔薇(ふゆそうび)」親の心子知らずというけど、どうしてこんなにも想いが伝わらないのかしら。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「冬薔薇(ふゆそうび)」を観てきました。

 

ストーリーは、

学校にも行かず、不良仲間とつるみながら、友人たちから金をせびって中途半端に生きる渡口淳。埋立て用の土砂を船で運ぶ海運業を営む彼の両親は、時代とともに減っていく仕事や後継者不足に頭を悩ませながらも、なんとか日々をやり過ごしていた。淳はそんな両親の仕事に興味を示すこともなく、親子の会話もほとんどない状態だった。ある日、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起きる。そこで思いも寄らぬ人物が犯人像として浮かび上がる。

というお話です。

 

 

ある港町。高校を中退し、デザイナーになると言って通い始めた専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるみ、友人や女から金をせびってはダラダラと生きる渡口淳。“ロクデナシ”という言葉がよく似合う中途半端な男だ。

両親の義一と道子は埋立て用の土砂をガット船と呼ばれる船で運ぶ海運業を営むが、時代とともに仕事も減り、後継者不足に頭を悩ましながらもなんとか日々をやり過ごしていた。夫婦には淳の上に男の子がいたのだが、子供の頃、ある事故で亡くしており、その時から淳との関わり方が解らなくなってしまったようだった。



 

淳はそんな両親の仕事に興味も示さず、親子の会話もほとんどない。ある時、喧嘩で怪我をして入院した淳は、不良仲間に抜けろと言われ、一人、真面目に働こうかなんて考え始めていた。

そんな折、不良仲間の妹が何者かに襲われる事件が起きる。そこに浮かび上がった犯人像は思いも寄らぬ人物のものだった。淳は知らない振りをしていたのだが、不良仲間は報復の機会を狙っていた。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、感想を書くのが難しいです。名俳優が勢ぞろいで、凄く良い味を出していて感動するのですが、何とも後味が悪いんです。主人公は現代の子供だけど、周りにいる大人たちが、皆、考え方が昭和的な人ばかりで、想っていれば必ず伝わるだろうと思っているような人達ばかりなんです。

 

淳は、元々は悪い子ではないと思うんです。でも、小さい頃に兄を亡くし、両親はいつも仕事で忙しく、あまりベタベタした愛情を貰えなかったようなんです。両親は、凄く息子の事を思っていて、やりたい事をやらせてやりたいと思っているんですけど、言葉では伝えずに見守っているような感じなので、淳は、自分が全く相手にされていないように感じて大きくなってしまったんです。

 

 

なので、一人が寂しくて、自分を相手にしてくれた不良仲間とつるむようになってしまいます。それなりに、親の愛情を感じていれば、普通に勉強をしただろうし、学校でも友達が出来たのだろうけど、いつも一人だった為に、人との関係性が上手く築けず、自分勝手な事をしていて、学校でもハブられて高校は中退してしまったようでした。そんな時に、不良仲間と知り合ったようでした。

 

高校中退でぶらぶらしていたのではいけないと、デザイナーなら出来るかもと思い、親にデザインの専門学校に行きたいと言って、行かせて貰うようになります。でも、全く学校に出席せず、仲間と遊び歩く毎日を送っていました。学費を払ってくれている親に謝れって言いたかったな。金を稼ぐ大変さを知らないんです。こういうガキが一番厄介だわ。

 

 

ここまでの解説で解るように、淳は、ちょっと頭が悪いというか、全く考えずに行動するような子でした。実はこういう子、養老孟司先生の「子どもが心配」という本に書いてあるのですが、認知機能に障がいがある子が多いようです。一見、全く普通の子と同じなのですが、隠れた障害があり、見つけて貰えずに、後々、犯罪に繋がって行くという事が多いようです。淳がどういう設定かは解りませんが、人の気持ちに気が付かないというのは、そんな事もあるのかなと思いました。

 

大体、高校も卒業せず、基本的な知識も中途半端な状態で、デザイナーになれる訳がないでしょ。デザイナーは、頭が良くないと出来ない職業です。人間工学を知り、人の目線の角度を計算し、空間とのバランスまで考えなければいけない。その上、素材の性質までも考えてのデザインなんですから、頭が悪くちゃ無理でしょ。ただ、ちゃちゃっと絵を描いただけじゃ出来ないんだから。そんな事も考えずに、デザイナーってイケてんじゃんとかってだけで目指すから続かないんです。

 

 

それに、こういう軽い奴は友達が出来ないよね。人の話を聞かないし、自分の話したい事だけ話して、それも夢物語みたいなことばっかり話している。誰もが、相手にしてらんねーよって離れていくので、結局、不良仲間だけになっちゃうのよ。本当に迷惑だなと思います。私は、お一人様大好きなので、群れでしか動けない不良たちって、幼いと思います。一人で決めて、行動せいっちゅーの!

 

と、色々悪口を書いてしまいましたが、この淳は、周りが凄く彼の事を思っているのに、それを全く理解出来ておらず、自分勝手に動いて、身を滅ぼして行くんです。自業自得といえば、まぁ、そうなんだけど、これだけ、周りから手を差し伸べて貰っていたのに、気が付かなかったというのは、やはり頭が悪いとしか言いようがありません。この年齢になって、人に頼ろうなんて、甘えてんなっつーの。マジで、淳の甘い考え方にムカ付きました。根性、叩き直してやると言いたいです。

 

 

人には、何度も選択する場面があるし、辛いこともあるし、失敗することがあります。でも、何かあるごとに逃げていたのでは、脳の成長は無いし、知識も増えません。年齢だけ取っていき、ただの負け犬になります。そんな自分を恥じるなら、どこかで起死回生を図らないと、生きてはいけません。この淳は、どこかでそれに気が付くんだろうか。

 

伊藤さんの復帰作品で、淳のバカさ加減は、良く表現出来ていたと思いました。でも、周りの役者さんたちが、あまりにも素晴らしい人たちばかりなので、その素晴らしさに、ちょっと浮いていた感はありました。まぁ、その浮いた感じが、この映画では、若さゆえの過ちというように見えて良かったのかもしれません。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。はっきり言うと、それ程、おもしろいという作品ではありません。でも、考えさせられる映画でした。私は、自分の息子がこんな風だったらと考えてしまいました。さすがに、淳の立場には立てませんでした。だって、あまりにもバカなんですもん。小林さんと余さんの演じる両親や他の人たちの、淳に対する気持ちが、良く描かれていたと思います。それに答えられない淳の姿も考えさせられました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「冬薔薇(ふゆそうび)」