「流浪の月」を観てきました。
Fan's Voice独占試写会に参加させていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
ある日の夕方、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。伯母に引き取られて暮らす更紗は家に帰りたがらず、文は彼女を自宅に連れて帰る。更紗はそのまま2カ月を文の部屋で過ごし、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕される。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負って生きることとなった更紗と文は、事件から15年後に再会するが・・・。
というお話です。
ある日の夕方、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。家に帰らないのかと聞くと、帰りたくないと言う。それなら僕の家に来るかいと聞くと、行くと元気よく答える。
父親が亡くなり、母親に捨てられた家内更紗は、母方の叔母の家に引き取られた。その家で従兄弟の中学生に身体を触られたりなどの虐待を受け、家に帰りたくなかったのだった。文の家に付いて行った更紗は、そのまま2ヶ月を過ごし、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕されてしまう。
誘拐された小学生が警察官に抱えられ泣き叫ぶシーンは居合わせた人の携帯電話で撮影・拡散されていった。その後、更紗は「傷物にされた可哀想な女の子」、文は「ロリコンで凶悪な誘拐犯」としてレッテルを貼られ続ける。
そして事故から15年過ぎ、24歳になったある日、更紗は偶然文と再会する。更紗は彼氏と同棲しており、そろそろ結婚をと言われていたのだが、文との再会により、更紗の気持ちにも行動にも変化が起こり始め・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、すっごく良かったです。李監督作品は、「怒り」や「悪人」など衝撃作が多く、どれも良い映画なので期待していたのですが、今回、期待の上を行くほどの作品でした。原作は、2020年の本屋大賞を貰った作品です。私は、まだ原作を読んでいませんが、映画を観たら早く読みたくなっちゃった。随分前に購入して、山になっているんです。でも、これから読みますよぉ。
更紗という10歳の少女が、公園で雨に濡れていても家に帰ろうとしないというところから始まります。友達と別れたくないから帰りたくないとかなら良くあるけど、土砂降りの雨の中で帰りたくないっていう少女を見たら、何かあるのかなと考えますよね。私なら、更紗にどうしてなのか質問していたと思うけど、この文は、何も聞こうとせず、家に来る?と誘います。
うーん、これだけだとロリコン男で危ないんじゃないの?って思うけど、文は違うんです。とても透明感があって、何ていうのかしら、まるで妖精のようなんですよ。そこに居るのに、まるで存在が無いかのような、そんな人物なんです。そして、とても優しい。相手が聞いて欲しくないことは聞かないし、相手の気持ちを読んでいるかのように、傍に寄り添っているだけ。なので、更紗を襲ったりなど、する訳がありません。
でも、さすがに2ヶ月、行方不明として捜査をされていたのですから、文は誘拐犯となりますよね。これは、例え更紗が違うと言ったとしても、未成年ですから、犯罪になったと思います。何故、彼は、更紗の為なら、自分が犯罪者になっても良いと考えたのか。それは、後から彼の過去が描かれ、解ってきます。
更紗は文から離され、事件後は叔母の家に帰らずに施設にでも入ったのかなと思いました。何故なら、24歳の更紗は帰る場所が無いといっていたので、叔母とも上手く行かなかったんじゃないかな。そして、彼氏である中瀬亮と暮らしています。亮は上場企業に勤めていて、実家は農家で土地持ちだということでした。普段は優しい男性なのですが、束縛が激しいようで、自分の言うとおりに更紗がしてくれないと、とても機嫌が悪いようでした。彼も、過去にトラウマがあるのですが、それは、映画で確認してください。
そんな亮と暮らしていて、このまま結婚になるのかなとぼんやりしている時に、再び、文と出会います。その再会は、まるでアンティーク品が回りまわって元の持ち主に帰ってくるような、そんな感じで、文が営んでいるカフェの下のアンティーク屋さんとコラボっていたのかなと思いました。そうそう、そのアンティーク屋さんと更紗のシーンも良いんですよ。私の好きなシーンです。お楽しみに。
文と再会したことで、更紗は、別れた後に彼を助けられなかった事を悔やんでいて、彼が幸せそうに暮らしている姿を見て喜びます。でも、やっぱり文の事が気になり、彼のカフェに通うようになり、亮にその事を知られてしまいます。一般的にですが、ニュースで誘拐犯と被害者、と報道された二人が、もし一緒にいて親しくしていたら、どういう事?って何か疑ってしまいますよね。親しくしてはいけないという事は無いのですが、それでも、加害者と被害者ですから、周りの目は厳しくなります。
ここでもし、更紗がイケイケ女子で平気で嘘とかがつける子なら、週刊誌とかに真実を話しますとか言っちゃって、誘拐は実は家出だったとか、自宅で性被害に遭っていたとか、あること無い事を話して、お金を儲けるぐらいしてしまっていたと思うのですが、更紗は本当に素直で良い子に育っていたので、何も言えなかったんですよねぇ。まぁ、噂はあること無い事、尾ひれがついて、酷い事を言われるようになるから、何も言わないのが正解なのかな。
世間のドロドロとしたゴミ溜めのような考え方に対して、文と更紗の二人の関わり方って、清いというか、まるで”神々しい”と言って良いような、そんな雰囲気も漂い始めるんです。ある場面で、更紗の唇を文が指で触る場面があるのですが、その触り方というか場面の映像が、何ていうのかな、初めて天使を見て触れることが出来たというような感じに見えて、あまりの美しさに目が離せなくなりました。”性”とか”欲望”とか、そんな言葉が一切無い、無垢な子供が初めてモノに触ったような、そんな風に見えるって、素晴らしいです。
この映画で描かれる、周りからの圧力というか、誹謗中傷、本当に酷いです。でも、同じことが現実に起きているんですよね。人間も落ちたもんだ。情報が多い事は良いけど、何が正しくて、何が間違っているのか、よく判断することが大切です。そして、世の中には、正解が無い事が沢山あるんです。
自分が一番正しいと思っている人が山ほどいるけど、誰も正しくないんですよ。正解はいくらでもあるんですから。私も、このブログで、「普通」とか、「正しい」とか、そんな言葉を書いてしまう事があり、恥ずかしいです。いつも、一方的な思い込みだと解っていても、書いてしまう。ボキャブラリーが少ないからなんですよね。もっと良い言い回し、考え方、優しい気持ちを持って、何でもやるようにすれば、もっと世の中が上手く周るだろうと解ってはいても、出来ない。いつも自分を戒める事ばかりです。本当に恥ずかしい。
この映画を観ると、更紗や文が、あまりにも綺麗なので、自分が恥ずかしくなるんです。自分は汚い考えばかりの世の中でも、平気で生きていて、一緒になって楽しんでいる。金魚は澄んだ水に住むものだけど、私は泥水の中でも平気で泳いでいられるんです。でも、本当は、澄んだ水で泳ぎたいんですよ。どうしたら良いんでしょうね。
話を戻して、この映画、本当に素晴らしいです。特に、松坂さんと広瀬さん、お二人は、まるで妖精のように神々しいです。そして、そんな二人に対して、更紗の彼氏である亮を演じた横浜さん、これぞ人間だという演技で震えました。彼がいる事で、神々しい二人が、誰も手の届かない存在であるかのように見えました。そして文の彼女の多部さんも、人間なら周りからの目などが気になり、こうなるだろうという人間を見事に表現されていました。
後、調子の良いシングルマザーの趣里さんも良かったなぁ。印象に残ったのは、文の母親の内田也哉子さん。出てきた時、樹木希林さんかと思ってしまいました。本当に似ていらっしゃいますね。驚きました。最後に、子役が良かった。特に、更紗の子供の頃を演じた白鳥さん、他のドラマや映画でも、よく出ていらっしゃいますが、彼女は上手いですね。表情が素晴らしいです。
いやぁ、この映画、いつまでも感想を書いていられそうです。それくらい、見どころは多いし、私は好きになりました。映像も美しいんですよ。撮影監督がホン・ギョンピョさんという「パラサイト」の撮影監督をした方だそうで、光の捉え方など、本当に美しいです。この映像は必見です。
私、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。本当に素敵な映画でした。これは、観るべき映画です。こんなに凄い映画だとは、驚きました。好きな映画リストに入る映画です。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「流浪の月」