「パワー・オブ・ザ・ドッグ」を観ました。
ストーリーは、
大牧場主のフィル・バーバンクと弟ジョージの兄弟は、地元の未亡人ローズと出会う。ジョージはローズの心を慰め、やがて彼女と結婚して家に迎え入れる。そのことをよく思わないフィルは、2人やローズの連れ子のピーターに対して冷酷な仕打ちをする。しかし、そんなフィルの態度にも次第に変化が生じる。
というお話です。
舞台は1920年代のモンタナ州。そのカリスマ性と威圧的な態度で恐れられている兄のフィルと、対照的に地味な弟のジョージのバーバンク兄弟は、大牧場を共に経営して暮らしていた。
ある日、ジョージが料理屋をやっている未亡人のローズに一目惚れし、付き合うようになり、結婚することになる。ジョージはローズと息子のピーターを連れて、兄と住んでいる家に越してくる事になった。
しかし、それを訝しく思ったフィルは、ジョージやローズ、さらにローズの息子のピーターまでにも執拗な攻撃を仕掛けだす。ローズは、ジョージの金目当てに結婚したんだと言い、家族としては全く認めようとしないのだった。
人間関係に亀裂が生じて行く中、フィルはある事件を機に、人を愛することの可能性と自分が人々を傷つけた意識を感じ始め、ピーターにも優しく接するようになる。しかし、フィルを信用していないローズは、不安が大きくなっていく。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画は、観て直ぐに感動したり、驚いたりするというよりも、じわじわと恐さが伝わってくるような映画でした。題名に旧約聖書 詩篇 第22篇20の言葉が使われていますが、この意味は、主の祈りの「悪より救い出したまえ」と同じような事だと思います。犬は邪悪という感じかしら。
最初からフィルはとても威圧的な男で、弟の妻となったローズに冷たく接します。このフィルは、差別を凄くする人物で、先住民や女を下に見ているようで、接し方が酷いんです。ジョージが連れてきたローズに対しても、金目当てでこの家に来たと思っていて、結構、じくじくした嫌がらせをしていました。
息子のピーターは、母親を心配しながらも大学の医学部に行くことになり、家を出ていきます。ローズは、一人になり、精神的に追い詰められてアルコール中毒になっていきます。この辺りまでは、犬=邪悪=フィルなのかなと思うのですが、最後まで観ると、もしかして邪悪なのは・・・という感じになります。
フィルは、確かに意地悪だし、差別をするけど、ストレートなんですよ。正直すぎるから、直接に攻撃してしまうんです。だから、観ていて思ったのだけど、ジョージがローズをずっと庇っていれば、何てことは無かったと思うんです。だって、ローズが苦しんでいるのだから、その家を出て、他に家を借りても良かったのでしょ。仕事の為に同じ家に居ないとっていうなら、住む区分を分けて、顔を合わせなければ良かっただけなのに、ジョージは、どーもそこら辺が鈍感な気がしました。
息子のピーターは、とても弱々しい感じの綺麗な子ですが、牧場の男たちにしてみれば女のようで、虐めの対象にさせられていましたが、ある日、フィルが森の中の隠れ家に隠してあるものを見つけてしまってから、立場が逆転します。フィルがピーターに馬の乗り方を教えたり、男として扱うようになって行き、それが、ローズを不安をもっと煽るようになって行きます。何となく、ローズはフィルの何かを感じ取っていたのかもしれません。
教訓としては、弱そうに見えてるからってバカにすんなよ、痛い目を見るぞって事なのかなとちょっと思いました。差別するのは良くないし、ましてや、弱い者を虐めるのは良くありません。でもね、フィルという人物は、自分が人には言えない弱い部分を持っていて、それを隠す為に、必死で強く見せていたのだと思うんです。
この時代に同性愛は許されなかっただろうし、哀しい部分を人に見せれずに、こんな曲がった性格になったのだと思うんです。私は、頭の良いピーターなら、そんなフィルを理解して、もっと良い関係を築いて、家族として暮らしていけたんじゃないかと思うんですけど、最後の最後で、母親を取ったのでしょう。悲しい結末でした。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。微妙な映画ですが、私は好きなタイプかな。でも、途中でちょっと間延びするので、つまらなく感じる方もいるかもしれません。でも、最後まで行くと、ゾッとするし、じんじわ感じるものがあると思います。ぜひ、観てみてください。NETFLIXで配信中です。
ぜひ、楽しんでくださいね。
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」