「モーリタニアン 黒塗りの記録」を観てきました。
ストーリーは、
弁護士のナンシー・ホランダーとテリー・ダンカンは、モーリタニア人青年モハメドゥの弁護を引き受ける。アメリカ同時多発テロに関与した疑いで逮捕された彼は、裁判すら受けられないまま、拷問と虐待が横行するキューバのグアンタナモ米軍基地で地獄の日々を送っていた。真相を明らかにするべく調査に乗り出すナンシーたちだったが、正義を追求していくうちに、恐るべき陰謀によって隠された真実が浮かび上がる。
というお話です。
2005年、弁護士のナンシー・ホランダーはアフリカのモーリタニア出身、モハメドゥ・スラヒの弁護を引き受ける。モーリタニアで母親の前から警察に連れていかれ、それから3年も行方不明のままで、最近、キューバのグアンタナモ基地にいる事が確認されたのだった。
実は、スラヒは、9.11の首謀者の1人として拘束されたが、裁判は一度も開かれていない。キューバのグアンタナモ収容所で地獄のような投獄生活を何年も送っていた。
ナンシーは「不当な拘禁」だとしてアメリカ合衆国を訴える。時を同じくして、テロへの“正義の鉄槌”を望む政府から米軍に、モハメドゥ・スラヒを死刑判決に処せとの命が下り、スチュアート中佐が起訴を担当する。真相を明らかにして闘うべく、両サイドから綿密な調査が始まる。
ナンシーは真実を知るために、スラヒにこれまでの経緯を手紙に書いて送るようにと話し、真実を知らなければ弁護は出来ないと説得をする。今まで口を噤んでいたスラヒも、やっと真実を手紙に書き始める。
スラヒから届く手紙による“証言”の予測不能な展開に引き込まれていくナンシー。そして、再三の開示請求でようやく政府から届いた機密書類には、百戦錬磨のナンシーさえ愕然とする供述が記されていた。
(公式HPより) 後は、映画を観てくださいね。
この映画を観ると、あの9.11以後に驚くような事が起きていたのだという事が解ります。アメリカ政府は、同時多発テロを受けて、ヒステリックになって犯人を捕まえようとしたとしか思えないんです。少しでも関係がある人間は全て、グアンタナモにとりあえずはほおり込んで、嘘でも何でもでっち上げて、犯人として死刑にしてしまおうとしていたとしか思えないんです。こんな恐ろしい事は、あっちゃいけないですよ。
尋問で、アルカイダの手助けをしたという証言をしていると、文章には書かれているのですが、実は、その尋問の調書を見ると、酷い暴力や屈辱を与えて、無理やりに言わせているというのが明白なんです。でも、その文書は、見せてくれと言っても、いつまでも見せてくれないんです。そして、何とか見せてくれたと思ったら、ほとんどが黒塗りだったりとかで、酷いモノなんですよ。
日本でも、政府が出す文書に、黒塗り部分が沢山あることがありますよね。あんなもんじゃないほど、酷いんです。それくらい、まるで狂ったようにアルカイダへの報復ともとれるような尋問を続けていたんです。でも、実際に拘束されて、尋問されていたのは、アルカイダと関係無いような人ばかりなんですけどね。
映画の中で、あれよあれよと拘束されて、グアンタナモに入れられて、何年も外に出られなくなったスラヒは、たまたま、親族の中にアルカイダの関係者がいて、ビン・ラディンの携帯電話から、その親族が電話をかけてきただけだと言うんです。ただ、スラヒは、その昔に、アルカイダの戦闘訓練を受けたことがあり、その頃は、ただ身を守るためにやり方を身に付けていただけで、アルカイダに参加することは無かったんです。そんな過去もあり、疑われたのかなと思いました。
話の中では、このスラヒが、海外留学経験があり幾つかの外国語が出来たので、テロリストの勧誘をしていて、その勧誘した男たちが、今回の9.11のテロを行ったと言うんです。スラヒは、そんな事はしていないと言っているのに信じて貰えず、拷問を受けて、やりましたと言わされてしまっているんです。このスラヒが、一人でも勧誘したとか、自分が連絡係だったとか、そんな事があるなら、拷問してでも真実を話せと言いたいのは理解出来ます。でも、全くやってもいないし、やったという証拠も無いのに、拷問するって、おかしいでしょ。
そんなスラヒの弁護を頼まれたナンシーは、敏腕弁護士らしく、テキパキと仕事を進めていきます。そして、しつこいぐらい文書請求や面会を重ねていきます。国を訴えて、拘束は不当だと勝ち取るために、深夜まで、山積みのダンボールを一つづつ開けて、文章を読み続けるんです。その文章が、ほとんど黒塗りにされていたら、怒りますよね。まぁ、全面黒塗りにされていても、スラヒの証言があるので、想像は付きますが、黒塗り文書では、証拠になりません。凄く苦労をしている姿が描かれていました。
そして、このナンシーと敵対するのが、国と軍側の弁護士のスチュアートです。彼は、9.11で友人を亡くしており、この裁判は、絶対に勝たなければという意気込みで、仕事に入ります。しかし、調べれば調べるほど、何かがおかしいという事に気が付いて行くんです。国側の弁護士にも、機密文書を見せてくれず、真実を知るのに難航するんです。味方にさえ見せたくない文書なんて、何で作って保管するのかしら。見て欲しくないなら、私なら燃やしちゃうけどなぁ。変な所で律儀なんですよね。
スチュアートは、そんな国の態度、軍の様子を見て、間違っているのではないかと思い始めます。まぁ、弁護士としてのプライドを持っていれば、当たり前ですよ。いくら何でも、適当な証拠をでっち上げて、裁判に勝とうとするなんて、弁護士としての正義は何処に行ったんだって感じですよね。
そんな現実に起こった事が、この映画では、細かく描かれていました。弁護士のプロとしてのプライドと、自分の国がこんな事をしているということを訴えているのに驚きました。もちろん、私だって、日本がこんな事をしていたら、恥ずかしくて、いい加減にしろと言いたいけど、日本なら、それを映画にしようとしても出来ないですよね。忖度とかがはびこっている国ですから。映画会社もお金を出さないだろうし、上映してくれる映画館が無いだろうと思います。日本も酷い国ですよ。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。実際にこんな事が起こって、ナンシー弁護士さんが戦ってくれて、スラヒさんは助かったんです。でも、エンディングで流れますが、こんな酷い事件があって、グアンタナモ基地は廃止するべきだという事になったのに、オバマ大統領の時にも取り壊せず、今も、まだ残っているのだそうです。恐ろしいでしょ。本当に面白い映画です。よく出来ている映画ですので、出来るだけ、色々なセリフをよく聞いて観るようにしてください。最後まで見ると、凄いことが起こっていたことが解ります。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「モーリタニアン 黒塗りの記録」