ここ2ヶ月ほどで観た演劇に関しての感想を書いてみます。
①「王将 -三部作-」 神奈川芸術劇場にて
1日で1部から3部まで観ました。朝から晩までなので、結構、しんどかったですが、楽しめました。映画も作られた作品だと思うのですが、明治から昭和にかけて活躍した「坂田三吉」という将棋指しのお話でした。このお話、とても有名だそうですね。私、この演劇で初めて知ったのですが、父に聞いたら、映画(TV?)で観たことがあるって言っていました。
”新ロイヤル大衆舎”という福田転珠さん、大堀こういちさん、長塚圭史さん、山内圭哉さんが結成した団体で、今回は、常盤さん、江口さん、他、沢山の役者さんが入っての公演となりました。坂田三吉という棋士が、強かった若手の時代から、晩年の若手に敵わなくなっていく様子を描いていて、将棋に限らず、追う方より追われる方が辛くて、結局は追い抜かれていくという現実を受け止めるのは、とっても辛いよねっ思いました。映画ではどうなっているのか、観てみたくなりました。良い作品でした。
②「フェイクスピア」 東京芸術劇場にて
野田秀樹さんの「NODA MAP」の作品です。主演は、高橋一生さんでした。普通なら、高橋さんが観たかったと言いそうですが、実は、私、白石加代子さんが大好きで、彼女がメインで重要な役の様だったので、観たいと思って行きました。
白石さん、面白かったなぁ。イタコの見習いの役で、舞台の中では年長組だと思うのですが、イタコの一番下の役なので、皆さんに”へえへえ”していて、笑ってしまいました。そんなイタコの見習いが仕事を受けたのが高橋一生さんが演じる”MONO”なんです。
野田さんの脚本だから、イタコから神の世界に繋がり、何故かパイロットに繋がるという、凄いお話で、感動作でした。野田さんの脚本は、本当に多彩で何やってんだろうって思って観ていると、凄い感動に繋がるんですよ。前に観た「逆鱗」も、現代の水族館で人魚を見せるというところから戦争に繋がるという、とんでもない変化を遂げたので、今回はどうなのかと思ったら、やはり、とんでもない方向に変化して生きました。本当に良い作品でした。やっぱり野田さんの作品は観たくなりますね。
③「外の道」 シアタートラム
劇団イキウメの作品です。最初は、普通のカフェで、誰もが休んでいるように見えるのですが、段々と会話をし始めると、何だかおかしいんです。その内、宅配便ドライバーの男と行政書士の補佐の女性が、顔を見合わせて、あれ?と言って、小学校の同級生だったよねって話を始めるんです。懐かしいねって言いながら話をしているのですが、手品師の話になり、何か世界の見え方が違ってきてしまったという感覚が、お互いに共通している事に気が付くんです。
何十年ぶりにあった二人が、不思議な共通点で繋がり、今居る世界がよく解らなくなっていってしまうという、SFチックなお話で、とても”イキウメ”の前川さんの作品っぽいなって思いました。この感覚が良いんですよねぇ。SF好きにはたまらないんです。なーんとなく”筒井康隆”や”星新一”っぽくて、この気持ち良い感覚がたまりませんでした。
前回の公演はコロナが怖くて行けなかったので、DVDを購入してきました。「金輪町コレクション」という作品です。時間が無くて、まだ観ていないのですが、夏休みに観たいと思います。
④「キネマの天地」 新国立劇場
この作品は山田洋次監督の「キネマの天地」映画版を継承した作品で、映画の時に共同執筆者の一人だった井上ひさしさんが書き下した作品だそうです。映画監督と、4人の女優の、探偵推理劇でした。面白かったですよ。高橋惠子、那須佐代子、鈴木杏、趣里、という女優が追い詰められて行く作品で、真面目な探偵劇かと思うと、お笑い部分もあり、楽しいお話でした。
私、井上ひさしさんの作品が好きで、「こまつ座」の舞台は、結構、観ているんです。井上さんの作品は、真面目そうで堅そうに思えるんだけど、とっても優しくて暖かい作品が多くて、一度観たら、また観たくなるんですよね。「イヌの仇討ち」みたいな忠臣蔵を吉良目線で描いたものとか、とっても面白いので、観てみると良いと思いますよ。
⑤「3年B組皆川先生 2.5時幻目」 本多劇場
大人計画の皆川さん主演の大スペクタクル巨編?でした。いやいや、焼き鳥屋のオッサンが、学校の先生をやれと言われて、仕方なくやるんだけど、生徒たちをちゃんと教育していくという、ちょっと「ひきこもり先生」に似ているかなぁ~ってお話なのですが、これは、2.5次元もどきとして、刀剣乱舞の雰囲気を醸し出しながら進めていくという、訳の分からんコメディ作品でした。
やっぱり、大人計画の作品は本当に面白いです。皆川さんのお尻が出ようとも、荒川さんのお尻が出ようとも、平然と話を続けて行くのが、素晴らしいっす。もう、その世界は誰も口出し出来ないぞって感じで、大好きでした。うんうん、なんで2.5次元にしようと思ったのか分からないけど、面白かったので何でも良いです。この皆川さんと荒川さんは、中毒性があるのよ。一度観てしまうと、また観たくなっちゃう。TVとかに出ていても、何かしてくれるかもって期待しちゃうくらいです。マジで好きです。
⑥「衛生 リズム&バキューム」 赤坂ACTシアター
古田さんが出演するミュージカルというので、観に行きました。尾上右近さんが相方(息子役)で、父親の古田さんと仕事をするというお話です。戦後の昭和、まだトイレも汲み取りで、衛生状況が良く無かった時代に、バキューム屋さんから成り上がり、街全体を取り仕切るようになって行くというお話でした。政治家とつるんだりして、悪い事を山ほどしてという内容なのですが、その汚い部分が、人間的に汚いという事と、衛生的に汚いということでリンクしているんです。
その昔、トイレは汲み取りで、農業の肥料として買い取っていたらしいんです。でも、戦争が終わって、アメリカに衛生的なことを教育され、行政の管轄で汲み取って、お金を取るという事に変わっていくんです。なので、バキューム屋さんが政治家とつるんでその地域の担当にして貰って、住民からお金を取るようになり、この主人公の親子は儲けて行くんです。今は、家庭の汚水は処理場に流れて行って、綺麗になっているけど、昔は違ったんですよね。あまり考えたことが無かったので、勉強になりました。
あ、そうそう、尾上右近さん、上手かったです。初めてのミュージカルだそうですが、ベテランっぽかったです。まぁ、歌舞伎ではいつもやっていらっしゃるのだろうから、平気だったのかしら。カッコ良かったです。
⑦「物語なき、この世界。」 シアターコクーン
新宿・歌舞伎町での1晩のお話です。三浦大輔さんの作品で、主演は岡田さんと峯田さん。他に、柄本さん、内田さん、星田さんなどと、寺島しのぶさんが出演されていました。あの歌舞伎町の入口を入ると、正面奥に大きなゴジラが見えて、その周りには、風俗などが立ち並んでいて、えげつない感じだけど、それが歌舞伎町って感じで、昔から変わらない風景ですよね。
私も、若い頃は、よく遊びに行っていました。今の子たちのように援交なんて時代じゃなかったので、ディスコやクラブに女子は無料で入れて貰って、飲んで食べて騒いで帰ってくるという、健全な遊びでした。え?健全じゃないの?(笑)そんな、誰にでも色々な物語があるよねーって言いながら、そんなの成り行きでそうなっているだけで、物語でも何でもないんだよっていうお話なのですが、そういいながら、色々な物語があるよねーって事で、何となく、じわじわと感動するようなお話でした。
やっぱり岡田さん、舞台で頑張っているから上手くなりますよね。ホント、今回も上手くなったなぁって思いましたもん。もちろん、寺島さんが完璧なんだけど、他の若手も負けてないんですもん。このコロナ禍であまり舞台も出来なくなってしまったので、舞台をやると、皆さん、大切に演じているような感じがして、とても丁寧に見えるんです。だから、伝わってくるんですよ。うん、良かったです。感動でした。
大体、月に2~3本は、舞台を観たいと思っているのですが、コロナ禍で怖いので、心配しながら観に行っています。特に、ここ最近は東京に感染が増えているので、これから舞台を観に行くのが恐いです。ここに感想を書いた作品を観に行ったのは、まだ、感染が少なかった頃に行ったので、これほどに増えてきたのでは、今後、どうなるのかと不安になっています。このまま、酷くなるようなら、これからの舞台のチケットは、払い戻しして貰おうかなとか、色々と考えてしまいます。
でもねー、舞台を観ると、本当にしあわせな気持ちになるんです。映画も好きなんだけど、やっぱり生の舞台は違います。息遣いが聞こえてくるんですもん。人間が、その場一度切りで演じるものは、かけがえがないと思っています。なので、舞台文化は、コロナ禍でも続けて欲しいなぁと思っています。
上記の舞台は、ほとんどが、もう公演が終わっている作品だと思いますが、もし、地方などで、まだ観れるようでしたら、観てみたらいかがでしょうか。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
明日からは、また映画の感想を書こうかなと思います。