「HOKUSAI」を観てきました。
ストーリーは、
町人文化が華やぐ江戸の町の片隅で、食うこともままならない生活を送っていた貧乏絵師の勝川春朗。後の葛飾北斎となるこの男の才能を見いだしたのが、喜多川歌麿、東洲斎写楽を世に出した希代の版元・蔦屋重三郎だった。重三郎の後押しにより、その才能を開花させた北斎は、彼独自の革新的な絵を次々と生み出し、一躍、当代随一の人気絵師となる。その奇想天外な世界観は江戸中を席巻し、町人文化を押し上げることとなるが、次第に幕府の反感を招くこととなってしまう。
というお話です。
腕はいいが、食う事すらままならない生活を送っていた北斎に、ある日、人気浮世絵版元、蔦屋重三郎が目を付ける。しかし絵を描くことの本質を捉えられていない北斎は、なかなか重三郎から認められない。さらには歌麿や写楽などライバル達にも完璧に打ちのめされ、先を越されてしまう。
「俺はなぜ絵を描いているんだ?何を描きたいんだ?」ともがき苦しみ、生死の境まで行き着き、大自然の中で気づいた本当の自分らしさ。北斎は重三郎の後押しによって、遂に唯一無二の独創性を手にするのであった。重三郎の目に間違いは無く、開眼した北斎は活躍していくが、その活躍を見ることなく重三郎は亡くなってしまう。
北斎は順調に活躍をし、戯作の挿絵なども請け負い、弟子もとるようになった。ある日、北斎は戯作者・柳亭種彦と運命的な出会いを果たす。武士でありながらご禁制の戯作を生み出し続ける種彦に共鳴し、二人は良きパートナーとなっていく。
70歳を迎えたある日、北斎は脳卒中で倒れ、命は助かったものの肝心の右手に痺れが残る。幕府の天保の改革などにより、絵師などの自由が奪われ始めた時期であり、北斎の娘・お栄は父の身を心配し、一緒に江戸を出ることにする。そして旅に出て冨獄三十六景を描き上げるのだった。
そんな北斎のもとに、種彦が幕府に処分されたという訃報が入る。信念を貫き散った友のため、怒りに打ち震える北斎だったが、「こんな日だから、絵を描く」と筆をとり、その後も生涯、ひたすら絵を描き続ける。描き続けた人生の先に、北斎が見つけた本当に大切なものとは?(公式HPより)後は、映画を観てくださいね。
やっと「HOKUSAI」を観ることが出来ました。本当は、昨年の東京国際映画祭で観たかったのですが、他の観たい映画と重なってしまい、泣く泣く、公開を待つことにしたんです。
若い頃の北斎と、年を取ってからの北斎。どちらも良かったです。若い頃は、柳楽さんが演じているのですが、絵は上手いのに、まるで学生の課題のように、目の前のものをそのまま絵に描いているという感じなんです。そこに心が入っていない、今でいえば写真のようなものなんです。そんな北斎に、重三郎は写楽や歌麿に逢わせて、北斎に何が足りないのかを訴えます。北斎自身も、自分には何かが足りないことが解かっていて苦しむんです。その頃の北斎の顔は、野生の動物のようで目が血走っているんです。でも、開眼した後の北斎の目は落ち着いていて、それまでとは全く違う人格のように見えて、柳楽さん凄いなって思いました。穏やかで、あの北斎の絵が彼自身から出てくるというのが納得出来る様な、そんな顔になっているんです。顔の違いに驚きました。
開眼してからの北斎は順調に仕事をし、結婚もし、娘も出来て、幸せそうな暮らしをしていました。社会への不安はあったようですが、それでも娘をあやす姿は、幸せそうに見えました。その頃は、小説の挿絵などの仕事も沢山していたようです。弟子も何人か、一緒に暮らしているようでした。
そして年を取り、田中さんが演じる北斎が始まるんです。年を取っても北斎の意欲は収まらず、色々な事に挑戦し、仕事をしていました。妻は亡くなり、娘が北斎の面倒を見ていました。ちょっと残念だったのは、北斎はずぼらで、家が汚くなると直ぐに引っ越しするというエピソードについて、全く語られていなかったんです。家が絵で一杯になるから引っ越していたらしいので、それくらい意欲的に絵を描いていたという事がこのことで解ると思うんですよね。イマイチ、この時期の北斎の人物像が薄くて、勿体ないと思いました。田中さんだから、ステキだし北斎って感じなのに、この頃の性格が曖昧なんです。
年を取ってから、柳亭種彦との交流が深まるのですが、柳亭って、60歳で亡くなっているんですよ。それなのに、若い永山さんのままの姿で亡くなるというエピソードになっているので、もう少し年を取っているように見せて欲しかったな。北斎との年齢差が凄くあるように見えて、現実との差異が大きいと思いました。もう少し、年齢を近く見せて欲しかったな。この年齢差だと、友人と言われても、ん?って感じなんです。
娘と旅をしながら、冨獄三十六景を描き上げるのですが、もう少し、その辺りも詳しく知りたかったです。北斎といったら冨獄三十六景というくらいなので、どの場所で、どんな絵を描いたのかくらいは描いて欲しかったです。
若い頃の北斎は、分かり易く、細かく描いてくれていて、とても満足が出来たのですが、年を取ってからの北斎は、あまり細かい描写が無く、何となく雰囲気で進むような場面が多くて、物足りなさを感じました。どんなに年を取っても、意欲的に絵を描き続けた北斎ですから、もっと描く部分があったんじゃないかなぁ~と残念でした。折角の田中さんの北斎、あまり内容が無かったよぉ。
北斎の娘のお栄は、北斎よりも絵が上手かったという噂ですが、それについては、一切描かれていませんでした。北斎の伝記映画なので、まぁ、良いのですが、娘も絵を描いているくらいの描写は欲しかったな。弟子との交流も、あまり描かれていないので、それも残念でした。
映画としては、前半は動で、後半は静という感じでした。前半に盛り上がりすぎてしまったからなのか、後半は寂しかったです。もっと面白いエピソードが多かったと思うのですが、それが無くて残念です。全体的には、私は、凄く面白かったと思います。北斎自体、私は好きなので、その歴史が描かれたことに関しては、とても嬉しいです。でも、晩年の彼については、もう少し、沢山描いて欲しかったです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。本当は、超!を付けたいのですが、後半で失速するので、そこが残念でした。キャストは凄く良いのにねぇ。本当にピッタリでした。良かったです。玉木さんの歌麿は色っぽかったですよぉ。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「HOKUSAI」