「羊飼いと風船」を観てきました。
ストーリーは
チベットの大草原で牧畜を営む祖父・若夫婦・子どもたちの3世代家族。昔ながらの素朴で穏やかな暮らしを送る彼らだったが、受け継がれてきた伝統や価値観は近代化によって変化しつつあった。そんなある日、子どもたちのいたずらをきっかけに、家族の間にさざなみが起こり始める。
というお話です。
神秘の地 ・ チベットの大草原で暮らす三世代の家族。
祖父は変わりゆく時代を憂いながらお経を唱え、若夫婦は3人の息子たちを養うため牧畜をして生計を立てている。いたずら盛りの子どもたちは、のびのびと大草原を駆け抜けている。ある日、下の二人の息子が何かを手にして遊んでいる。良く見ると、それはコンドームを風船のように膨らませて遊んでいたのだ。父親に怒られ、二人は草原へ逃げて行く。
昔から続く、慎ましくも穏やかな日々。しかし、受け継がれてきた伝統や価値観は近代化によって変わり始め、中国の一人っ子政策の波が押し寄せていた。3人も息子がいる夫婦は、生活も苦しく、それでも教育は受けさせないとと、長男を都会の学校へ行かせていた。
そんなある日、母・ドルカルの妊娠が発覚する。喜ぶ周囲をよそに、望まぬ妊娠に母の心は揺れ動く。これ以上、子供が増えたら食べさせていく事が出来なくなるかもしれない。それに長男の学校の学費もある。夫は牧畜をしているが、今の稼ぎでは家族を養っていけない。それを解かっていて、コンドームも用意していたのに妊娠してしまった。
ドルカルは、子供は降ろすべきだと考えていて夫にも話すのだが、夫は良い顔をしない。早く結論を出さなければ降ろす事も出来なくなる。どうしようと悩んでいると、突然に祖父が倒れて、亡くなってしまう。突然の出来事に悲しむ家族だが、この地域の言い伝えのに輪廻転生があり、祖父はお腹の中の子供となって生まれ変わるのだと夫が言い出す。降ろしたいドルカルと、祖父の生まれ変わりだから産んでくれという夫。息子たちも、祖父の生まれ変わりなら、産んで欲しいと願う。
男たちは、経済的な事を全く考えずに、ただ産んで欲しいと望むだけ。その後の計画を考えていない。ドルカルは悩みに悩んで、僧侶となった妹を呼び、しばらく旅に出ることにする。ドルカルの妹は、口減らしの為に、僧侶に出された子だったのだ。妹と過ごす時間でドルカルは何を考えたのか。
妻を見送る夫と息子たちは、母親の決断を期待しながら家で待っている。先の事は解らない。伝統的な信仰と変わりゆく社会の狭間に立たされ、次第にすれ違う家族―葛藤の末、彼女が選んだ道とは。後は、映画を観て下さいね。
この映画、派手な映画ではなく、静かで決論が出ない映画ですが、ジーンとして、とても考えさせられる映画でした。男の考え方と女の考え方が全く違うという事を、良く描いていると思いました。
ここで、男と女の違いを書くと、差別と思われるかもしれませんが、あえて、書かせていただきます。私が思うに、この映画の中の夫や息子たちという男性は、あまり先の事を考えていないんですよ。直ぐ先の事しか考えず、楽観的なんですよね。だから、口減らしとか、そういう事が起きてしまうんです。
でも、母親は違います。自分が産んだ子供なら、幸せになって欲しいし、産んでから育てられないなんてことはしたくないんです。ただでさえ3人も息子がいて、能天気な夫と、祖父だけで、女性はドルカルだけなんです。全ての家事や世話を彼女がやり、夫はのんびりと牧畜をしているんです。きっと、計画的な運営をすれば、牧畜でも生活が出来るのだろうけど、この夫は、ただ家畜を飼っているだけ。餌は草原で食べているし、ほとんど世話なんて無いんです。もー、働けよって思っちゃった。
コンドームは用意してあるのに、子供たちがおもちゃにしちゃっているし、役に立ってないんですよ。チベットの草原で昔ながらの暮らしを続けているけど、近代化は進んでいるし、中国の政策も押し付けられて、経済的に苦しいんです。昔のように、どこかで食べ物を獲って来ればよいという時代ではないんです。
この男性の考え方と、女性の考え方の違いが、あまりにも違っていることが良く描かれていました。このチベットの一家は、男性たちは全く先の事を考えておらず、母親だけが先の事を考え、現実を直視しているんです。もちろん、反対に夫がとても現実的な夫婦もいるのでしょうが、この夫婦は、妻だけが理解していたという感じでしたね。
もし、自分がドルカルの立場だったら、子供は降ろしていると思います。だって、生活が出来ないんですよ。祖父が亡くなったから、その分で大丈夫じゃないかと思うかもしれませんが、一人っ子政策が施行された頃のお話ですから、2人目からは、経済的制裁が科せられたようです。それに、1人生まれたら、4年間は出産してはいけないという決まり事もあったようですね。2014年に廃止されたので、今では、このような事はありませんが、この映画に描かれている時代は、大変だったのだと思います。
どの国でも、時代が変わる時は、誰もが苦労をするのだと思います。特に、チベットのような地域に住んでいると、周りの風景は同じなのに、全てが変わっていくので、それに順応していくのは、辛かっただろうなぁと思いました。この一人っ子政策は、こんな地方で子だくさんで生きてきた人々にとって、考えられない決まり事だったのだろうと思います。酷いですよね。でも、そうでなくても、経済的に苦しい状況なら、自分たちでも、考えるべきなんだけど、この夫は、精神的に少年のままだったのかもしれません。
素晴らしい自然の中で、自由に暮らしているようで、色々な事に雁字がらめにされていく家族の姿を、とても良く描いていると思いました。凄く風景が良くて、映像が美しかったんですけど、そんな中で、子供を降ろすとかっていうお話は、辛かったです。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。時代に取り残されていく人々が、不安を募らせていく姿が描かれていました。こういう人々は、国が助けてあげるべきだと思うんですけど、どうなんでしょうね。うーん、考えさせられました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「羊飼いと風船」