「ホテルローヤル」直木賞受賞作を映画化。人間の欲望渦巻くラブホテルでオーナーの娘が見つけたのは? | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ホテルローヤル」を観てきました。

 

ストーリーは、

経営者家族の一人娘・雅代は美大受験に失敗し、ホテルの仕事を手伝うことに。アダルトグッズ会社の営業・宮川に淡い恋心を抱きながらも何も言い出せず、黙々と仕事をこなすだけの日々。そんな中、ホテルにはひとときの非日常を求めて様々な客が訪れる。ある日、ホテルの一室で心中事件が起こり、雅代たちはマスコミの標的となってしまう。さらに父が病に倒れ家業を継ぐことになった雅代は、初めて自分の人生に向き合うことを決意する。

というお話です。

 

 

北海道、釧路湿原を望む高台のラブホテル。今は寂れた廃墟となっているそのホテルに、男と女が入って行く。立ち入り禁止を無視し、部屋に入り、男はカメラを取り出し、女にポーズを取るように指示する。どこかに投稿する為のヌード写真を撮りに来たようだ。今は寂れたホテルでも、昔はここで幾つもの出来事が起こったのだろう。

時は変わり、ホテルローヤルという名前のラブホテル。雅代は美大受験に失敗し、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルを手伝うことに。しばらくして、母るり子は父の大吉に愛想を尽かし、若い男と出て行ってしまう。仕方なく、母の代わりにホテルを切り盛りし始める。



 

アダルトグッズ会社の営業、宮川への恋心を秘めつつ黙々と仕事をこなす日々。甲斐性のない父、大吉に代わり半ば諦めるように継いだホテルには、「非日常」を求めて様々な人が訪れる。

子育てと親の介護に追われる夫婦、行き場を失った女子高生と妻に裏切られた高校教師。非日常を求めて来るカップルや、雨宿り代わりに使う人々もいる。そんな中、一室で心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的になってしまう。

マスコミの取材をどうにかしようと出て行った大吉が病に倒れ、雅代はホテルと、そして「自分の人生」に初めて向き合っていく・・・。後は、映画を観て下さいね。

 

 

この映画、しみじみと考えてしまうような映画でした。直木賞作品だから、こんな感じかなぁとは思っていたのですが、うーん、人間って、どこまでも業が深いなぁと感じさせる映画でした。派手な映画ではありません。だって、直木賞だもん。だけど、何とも観た後に、人間ってどうしようもない生物だけど、でも、捨てたもんじゃないよなって思えるような気がして、私は好きでした。

 

父親がオーナーのラブホテル”ホテルローヤル”。子供の頃からラブホテルの子と言われて、冷やかされていた雅代。子供って残酷だから、随分と虐められたんじゃないかな。高校を卒業したけど、大学受験に失敗して、ホテルの手伝いを始めます。母親が仕切っていて、父親は、ただダラダラとほっつき歩いているだけ。役に立っていません。そして母親は、ホテルに食品などを納品する店の配達員と不倫をしています。男が配達に来ると、二人で裏の方へ行き行為にいそしんでいます。

 

 

そんな母親を冷ややかな目で見ながらも、何も言わずにホテルの仕事を手伝う雅代。でも、ある日、母親は父親を捨てて、その男と駆け落ちしてしまいます。父親と二人でホテルをやることになる雅代。というか、実質、雅代一人でホテルを切り盛りし始めます。

 

ラブホテルには、欲望を絵に描いたような人々が訪れ、その欲望を発散させていきます。そして、従業員のおばちゃんたちも、そんな彼らを見ながら、ほくそ笑んでいるのです。

 

人それぞれに、色々な理由があってホテルに来るのですが、そんな中に妻に裏切られた教師と、両親に捨てられた女子高生がいて、ホテルには雨宿りに来ただけなのですが、お互いに心の苦しさに負けて心中をしてしまうんです。教師と女子高生というだけで、マスゴミも大騒ぎであることない事を書いたのでしょうが、本当は寂しくて、疲れて、一緒に死んだんだと思うんですよ。

 

 

二人が悪いのではなく、周りの人間に押しつぶされて、行き場を失ったんです。欲望を発散させに来る場所で、人の欲望の為に行き場を失った二人が死ぬんです。なんか、本当に切ないと思いました。自分の欲望を優先する人間ばかりが得をして、それにより心が壊れてしまう人間など負け犬だと言わんばかり。

 

そんな理不尽な出来事を、ホテルを手伝うようになって体験し、目の前で見ていた雅代。どうして酷い人間ばかりなんだろうと思っていたと思うんです。その上、自分の母親は駆け落ちをするし、父親は何も出来ず、ただぼんやりするだけ。でも、実は、父親も浮気をして、前の妻と離婚し、雅代の母親と結婚したんです。周り周って、自分に戻ってきたという事なんです。

 

 

人間の汚い欲望を全て飲み込むラブホテルですが、唯一、雅代の前に現れる人で、アダルトグッズ屋の営業である宮川だけは誠実なんです。雅代は、彼だって人間だから、欲望には負けるだろうと思っているのですが・・・。良い人でした。

 

普段、街に居れば、誰もが真面目で誠実そうに見えているけど、欲望に抗える人は少なく、自分を優先してしまう人がほとんどなのですが、それでも、どこまでも誠実で、嘘が付けない人もいるんです。それは、雅代にとって、救いだったのかなと思いました。

 

 

原作は手元にあるのですが、またも読むのが間に合わず、これから読む予定です。直木賞作品は、じっくりジーンとするような内容のものが多いので、イマイチ、映画化には向かないと私は思っているのですが、今回は、キャストも良くて、結構、心に響きました。でも、人の心の動きを深く読み取って、考えて観て行かないと難しいと思います。どちらかというと、芥川賞作品の方が映画化はしやすいですよね。

 

私は松山ケンイチさんが好きなので、このアダルトグッズ屋の宮川役、良かったです。この役は難しいよね。松山さんだからという感じでした。波瑠さんも、良かったです。最初の雅代と、最後に旅立つ雅代の顔が違っていて、上手いなぁと思いました。

 

 

私は、この作品、お薦めしたいと思います。私の心の中では、”超”なのですが、普通に映画を観に行く人には、伝わるのが難しい作品だと思います。直木賞作品などを読んでいて、この雰囲気を解っている人には良いですが、娯楽作品として観に行くと、難しいと思います。でも、私は好きな作品なので、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ホテルローヤル」