「カセットテープ・ダイアリーズ」を観てきました。
ストーリーは、
87年、イギリスの田舎町ルートン。音楽好きなパキスタン系の高校生ジャベドは、閉鎖的な町の中で受ける人種差別や、保守的な親から価値観を押し付けられることに鬱屈とした思いを抱えていた。しかしある日、ブルース・スプリングスティーンの音楽を知ったことをきっかけに、彼の人生は変わり始める。
というお話です。
イギリスのルートンの小さな町で暮らすパキスタン系少年のジャベドは16歳。夏のアルバイトを終え、SONYのウォークマンで流行のペット・ショップ・ボーイズを聴きながら自転車を走らせていた。ジャベドは、この9月からハイスクールに入学する。
誕生日が同じ、幼なじみの少年マットは恋人ができ、日々充実した青春を楽しんでいる。だがジャベドは孤独に鬱屈を募らせていた。保守的な町の人からの移民への偏見や、パキスタン家庭の伝統やルールから抜け出したくてたまらない彼。
特に古い慣習を振りかざす父親マリクには内心強い反発を感じていた。ムスリムの家では父親のいう事が全てであり、父親の許可無しでは夜も外へ出る事が出来ないのだった。そんな日々の中で、唯一、自分の気持ちを吐き出すことが出来たのは書きものだけ。毎日、日記に気になったことを書き続け、詩なども書いていた。
人種差別や経済問題、不安な政情に揺れる時代をジャベドなりに反映させた詩を書いているが、まだ本当の“自分の言葉”を見つけられずにいた。どうしても人種や宗教などの事が引っかかり、素直に気持ちを文章にぶつける事を怖がっていたのだ。
そんなある日、友人ループスが貸してくれたカセットテープを聞いてみると、モヤモヤをすべてぶっ飛ばしてくれる、ブルース・スプリングスティーンの音楽と衝撃的に出会い、彼の世界は180度変わり始めていく。
その時代、既にブルース・スプリングスティーンは、親の世代の音楽で時代遅れとされていたのだが、彼の直接的な言葉がジャベドの心を貫いたのだ。マットに古いと言われても、ブルース・スプリングスティーンの曲を聞き続けるジャベドは、段々と周りの人々も変えていく。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画は、現在、イギリスのジャーナリストであるサルフラズ・マンズールさんの自伝的な回想録を原作に作られています。彼もパキスタン人で、家庭の教育や、人種差別などに苦しみ、そんな中でブルース・スプリングスティーンの音楽に出会い、人生が変わって行ったのだそうです。
まず、何故、イギリスにパキスタン人が沢山移民したのかという事なのですが、これは「英国総督 最後の家」という映画で詳しく描いてありますが、インドがイギリスの植民地から開放される時に宗教で分裂しまして、インドとパキスタンに別れたんです。ムスリムの人たちがパキスタンを建国したのですが、そう簡単に国がまとまる訳もなく、経済的に苦しい時代が続き、彼らに馴染みのあるイギリスに移民すれば少しは仕事が見つかるだろうという事なんです。
でもイギリス人から見れば、植民地の人間だという思いがあり、差別されたようです。「ボヘミアン・ラプソディ」でも、フレディがパキスタン人だということで差別される場面があったと思います。
そんなパキスタン家庭に生まれたジャベドは、子供の頃から幼馴染の英国人のマットと仲良しですが、彼はパーティーなどを開き楽しんでいるのに、自分は夜に家から出ていけなかったり、女の子と付合う事も出来なかったりと、違いを感じ始めます。一緒に育ってきたのに、全く生活が違うことを不満に感じ始めます。いつも父親のいう事に従わなければならないし、不況で父親が失業した後なんて、母親が沢山の内職を請け負って、寝る暇も無いほど働いているのに文句が言えない事に、どんどん不満が溜まっていくんです。
そりゃ、そうですよね。女は口答えをするな、息子は親の言うとおりの進路に決めろと言われてしまったら、未来も何もありませんよね。夜に外に出てはいけないと言われているから、友達に誘われても行けなくて、そのせいで友達も出来ないんです。酷いでしょ。でも、親も子供の事を考えていない訳では無くて、子供の為を思いながら、ムスリムの戒律に従っているんです。やっぱり宗教って、あまり良くないですよねぇ。ある程度、ゆるく信仰するなら良いけど、厳格に守っていたら、生きていけなくなっちゃう。
そんな時に、ブルース・スプリングスティーンの音楽に出会い、社会をぶち壊せ的な歌詞にショックを受けて、のめり込んでいくんです。私、ブルース・スプリングスティーンの曲って知らないのですが、聞いた覚えが無いのですが、よく流れているのかしら。このジャベドも、時代遅れだと言われて、親世代の歌だよって言われていたから、古い音楽なんでしょうね。
音楽によって、今まで何事にも自信が持てなかったジャベドは自信を持ち始め、それによって自分が書いた文章も認められて、才能が開花し始めるんです。そんな輝き始めた息子を認めざるを得なくなる父親の姿も描いていて、ちょっと寂しそうだけど、前に進んで行く家族の姿もとても良かったと思いました。
この映画、私は、お薦めしたいと思います。とても良い映画で、感動作だと思いました。ただ、昔の洋楽を、私は知らないので、音楽関係がちょっと素直に受け入れられなかったかな。私の時代はマイケル・ジャクソンやプリンスだったので、イマイチ、ノリが違うんです。音楽を知っていたら、もっと前のめりに感動出来たと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。