「ペイン・アンド・グローリー」を観に行きました。キノシネマ横浜みなとみらいは、会員になると火土曜日は1000円で映画が観れるので、とてもお得なんです。映画館も清潔だし、イスも座りやすいので、とってもお薦めの映画館なんです。
ストーリーは、
世界的な映画監督サルバドールは、脊椎の痛みから生きがいを見いだせなくなり、心身ともに疲れ果てていた。引退同然の生活を送る彼は、幼少時代と母親、その頃に移り住んだバレンシアの村での出来事、マドリッドでの恋と破局など、自身の過去を回想するように。そんな彼のもとに、32年前に手がけた作品の上映依頼が届く。思わぬ再会が、心を閉ざしていたサルバドールを過去へと翻らせていく。
というお話です。
世界的映画監督サルバドール・マヨは、32年前に撮影した作品がリマスターされて再上映されるという連絡があり、その場で挨拶をして欲しいと頼まれます。彼は脊椎の痛みが酷く、引退同然の生活を送っていたのですが、その話を受けようと思い、その映画の主演俳優に連絡も取らずに家に押し掛けます。
主演のアルベルトとは32年ぶりに再会。サルバドールは、映画の撮影時にアルベルトが自分の指示に従わずに演技をしたことを怒り、喧嘩別れしていたんです。玄関で帰ってくれというアルベルトに、再上映の話をして家に入れて貰います。お茶を貰い、ふと見るとアルベルトがヘロインを吸おうとしています。このところ頭痛で眠れない事に悩まされていたサルバドールは、ヘロインを吸ってみたいと言い、アルベルトに少し貰います。すると気持ちよくなり、うとうとと眠ってしまいます。
目を覚ますと暗くなっており、アルベルトに再上映での再会を約束して家に帰ります。後日、突然にアルベルトがサルバドールの家を訪れます。またも2人でヘロインを吸って、サルバドールがうとうとしていると、アルベルトはサルバドールが書き溜めていた戯曲を読んでしまいます。アルベルトは目を覚ましたサルバドールに、「中毒」という作品が素晴らしいので舞台でやらせて欲しいと頼みます。でもサルバドールは、自分の作品は、もう外に出す気は無いんだと話します。
そして映画の再上映日。サルバドールとアルベルトは会場へ行く予定でしたが、サルバドールの家でヘロインを吸ってしまった為、行くのが嫌になってしまいます。そして電話での参加をするのですが、観客に質問をされたサルバドールは、つい、アルベルトの演技が気に入らなかったという事を言ってしまいます。怒ったアルベルトとの言い合いになり・・・。後は、映画を観てくださいね。
この映画、面白かったし、感動作でした。別に、お涙頂戴のお話ではありません。引退同然だった監督の再生のお話です。サルバドールは有名監督でしたが、32年前に作品を撮った後に現場を離れ、引き籠ってしまいました。身体の不調もありますが、様子を見た感じは鬱状態だったと思います。でも、自分の映画の再上映という話を貰い、32年前の作品を観直してみたら、結構、良い作品だったことに気が付き、少し外に出てみようかと思い直すんです。
アルベルトと会い、ヘロインを吸ったことにより、それまで眠れていなかったのが嘘のように眠れて、過去の出来事を鮮明に思い出すようになります。特に、子供の頃に貧しくて、洞窟の家に住んでいたことや、学校に行くお金が無く、奨学金で行ける神学校に行かされたことなど、思い出します。その中でも、職人の青年に文字の読み書きをサルバドールが教えていたことを思い出し、懐かしく思います。
サルバドールは「中毒」という作品に、昔付き合っていた恋人との事を描いていました。ヘロインにハマった恋人にヘロインを止めさせようとしたのですが止めさせられず、別れることになりました。恋人との事も引きずっており、鬱になっていたんです。今、アルベルトとヘロインを吸ってみて、あの頃の恋人の気持ちが少し理解出来て、今まで見ないようにしていた過去が懐かしく思えてきたのかなと思いました。だから、アルベルトに「中毒」を演じる事を許し、彼に対しての考えも変わっていったのかなと思いました。
一人息子だったサルバドールは、母親にとても愛されていた記憶がありますが、少し窮屈だったような気持ちもありました。でも、それも過去のこと。色々な事が人生にはあるけど、良い思い出として考えれば良いし、母親だって、好きに生きなさいと言ってくれていると思うという考えに、最終的に彼は辿り着いたと思うんです。だから、未来を見る事が出来たし、この映画のラストに繋がったと思いました。最後のシーンで、今までにサルバドールが回想していた母との思い出が実は・・・ということが解りますよ。それも良かったなぁ。
私が一番感動だったのは、やっぱり恋人との事を、やっと浄化出来た事かしら。好きだったけど別れることになって、そのままになっていると、思い出しては後悔することってあると思うんです。後悔はしないと思っていても、やっぱり思い出しちゃって、あの時にもう少し頑張ればって思っちゃうと、先に進めなくなるんですよね。それが、こんな形で浄化できて、お互いに気持ちよく別れられたなら、先に進めるようになると思いました。本当に素敵だなって思いました。
アントニオ・バンデラスがサルバドールを演じているのですが、カッコ良かったです。先日、「ドクター・ドリトル」で海賊の王を演じていて、そちらも良かったのですが、今回は、ちょっと弱弱しく優しい男を演じていて、素敵でした。オッサンの再生物語を観て、自分も何か新しくやることが出来るかもなんて、少し思ったりしちゃいました。まぁ、これ以上、新しい事を始めたら、もう一人、自分を作らないとやっていけませんけどね。(笑)
私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。派手な作品ではありませんが、若くなくても、ちゃんと再生出来るのだって教えてくれているようで、元気が出る作品でした。この映画でアントニオ・バンデラスがカンヌ国際映画祭で主演男優賞を貰ったのも頷けます。アカデミー賞ではノミネートに終わりましたが、素晴らしい作品だと思います。ちょっとネタバレですが、腐女子の方にはこの映画の良さが解ると思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。