舞台「終りのない」を観てきました。
ストーリーは、
18歳の悠理は旅の途中で目的地を見失い、立ち止まっていた。自分はなぜここにいるのだろう。悠理は自分の人生を振り返ってみる。
短いけれど、沢山の楽しいことや辛いことがあった。恋愛もした。死にかけたこともあった。尊敬できる両親に、いつも気にかけてくれる友達もいる。かつて悠理は世界と一体で、完全だった。でも今は違う。
ある日、悠理は両親と友達に、湖畔のキャンプに連れ出される。立ち止まったままの悠理には、時間だけが通り過ぎていくように思える。過去に思いを馳せていると、いつの間にか悠理の意識はキャンプ場を離れ、見知らぬ場所で目を覚ます。悠理の奇妙な旅が始まる。
というお話です。
このあらすじだけだと解り難いかと思いますが、舞台を観ていても、解り難いというか、SF的な話なので、これSFが好きな人でないと、難しかったんじゃないかなぁと思いました。
悠理という青年は、両親と友達と一緒にキャンプに行くのですが、悠理自身は、この年になってまで面倒臭いという気持ちになっているんです。最近は引き籠り気味になっていた悠理は、デッキチェアに座り、昔もキャンプに来たことを思い出します。確か、8歳の頃にキャンプに来て、溺れた事を思い出し、どうやって助かったのか、目が覚めたらベッドにいた事を思い出しました。あの時は、どうやって助かったんだろうかと考え始めると、不思議な感覚に陥っていきます。
そして、ふと気が付くと、周りに友人たちがおり、他に一人、表情の無い男・ダンがいました。悠理がここは何処かを聞くと、みんな不思議な顔をして、記憶が可笑しくなっていないかと聞きます。悠理が覚えていることを語ると、その悠理は8歳で溺れて死んでいると言われてしまいます。自分は生きていると訴えると、起こす時に何か間違えたのではないかと、周りの人々が話し始めます。あれ?と思っていると、またキャンプ場へ。
両親と友達はそのままで、慌てた悠理はおかしなことがと訴えますが、今度は両親が離婚をするという話が出て、悠理の話は聞いてもらえず、そしてリサという同級生がいたという思い出話が出てきます。自分の記憶とは少し違うが、そんな子がいたと思い出していると、またも、悠理の意識は曖昧になっていき・・・。
またも、宇宙船の中の空間になり、自分たちは新しい地球となる星を探して旅をしているんだという説明を受けます。しかし、先ほどの自分が8歳で死んだ世界ではないようです。どこまでも話がかみ合わず、いつまで経っても、悠理は自分が行きつきたい場所に行く事が出来ません。そして・・・。という感じの話なんです。
この悠理は、意識だけが空間を移動し、多次元宇宙を行ったり来たりしているようで、量子学的な次元を横滑りしているようなんです。8歳の時に死んだ悠理と死ななかった悠理、リサという女の子と仲の良かった悠理とそうでもなかった悠理、普通なら、その中の一つの世界から出れないのですが、悠理の意識だけが、色々な世界へ滑ってしまっていたようなんです。
そして、いつかは解りませんが、クローンで再生された悠理の身体に意識が入り込み、一時的に時空までも超えた世界に移転していたりして、いつまで経っても、悠理は、自分がゆっくり出来る居場所に辿り着くことが出来ないというお話なんです。
不思議なんだけど、私もいつも、右に行く私と左に行く私と、2通りの自分がいるんだろうなぁと思いながら、自分の選んだ方に向っています。きっと自分が失敗しても、もう一人の自分は成功しているんだろうと思えば何てことないでしょ。本当は自分が成功したかったけど、今回は、私が貧乏くじを引いただけと思えば、何があっても大丈夫な気がしています。だって、自分が成功する時もあるんですもん。その時は、もう一人の私が失敗しているだろうから、そんなに大喜びも出来ないんですけどね。
そんなことを思いながら、この舞台を観ていました。面白かったですよ。オデュッセウスを元にして、不思議な世界が展開していきました。「奇ッ怪」シリーズの”遠野物語”から続いて仲村さんも出演されていて、今回は、山田裕貴さんが主人公の悠理を演じられています。色々な世界を行き来する悠理という人物を、不安そうな顔で演じてらっしゃいました。うん、きっと悠理ってそんな感じですよねって思えて、良かったです。異次元ポケットに入り込んだみたいですもんね。
劇団イキウメらしい、前川さんらしい脚本が、私はやっぱり好きなんだなぁと、改めて感じました。面白かったです。まだ、上演しているので(東京は昨日で終ったようです。)、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「終わりのない」世田谷パブリックシアター
https://setagaya-pt.jp/performances/owarinonai20191011.html
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