舞台「桜姫」を観てきました。阿佐ヶ谷スパイダースの舞台です。
ストーリーは、
1931年。断崖絶壁に立つ清玄と少年・白菊。白菊の兵学校行きを嘆き、愛し合う二人は心中を図ろうとしていた。二人の手には同じガラス玉が握られている。清玄が白菊の手を取ろうとする前に、白菊は海に落ちて行ってしまう。清玄は、後を追おうとするが、どうしても足が動かず、死に遅れてしまう。
17年後、清玄は復興の救世主と崇められ、人々から聖人と呼ばれていた。清玄が寄付をする孤児院「さくら学園」から、17歳の少女・吉田は、金持ちの入間善五郎に嫁ごうとしていた。しかし彼女はその成り行きにどうもしっくりこない様子。渋々、入間の家に向かう汽車の中で吉田は清玄と出会う。その途端に開かなくなる左手。なんとか開かれたその手には清玄が持つものと同じガラス玉が握られていた。
入間家に着き、一人でいた吉田の部屋に狐の面をつけた男を何故だか刺したという権助が転がり込んでくる。出会った途端に「しっくり」ときた吉田。彼女が権助の記憶にない二人の出会いを語ると、何故か互いの旨に同じ釣鐘の入れ墨が浮かび上がっていた。
吉田が口にする「物語」。それに翻弄される周囲の人々。彼女のそばには、不思議な楽隊が奏でる音楽がいつも寄り添っていた、が・・・。
というお話です。
原作がパンフレットに載っていたので読んだのですが、原作も凄い話なんですね。今回の現代劇の方が、ファンタジーっぽくて、幽霊とかも優しい感じに描かれていたような気がしました。有名な歌舞伎狂言で、四代目鴨屋南北によって書かれました。南北は、この作品を「東海道四谷怪談」よりも8年前に書いたそうです。それを現代劇(と言っても昭和初期)にして、時代を昭和6年に始まると設定した作品です。
孤児院からお金持ちの家に嫁ぐことが決まり、一気に玉の輿に乗れると思った”吉田”こと桜姫ですが、権助という酷い男に出会ってしまい、何故か、彼が運命の人だと思ってしまうんです。そいつダメな奴だよぉ~って言っても、もう止められないのよ。
それからは、戦後の混乱の中で、風俗で働かされたり、幽霊に付きまとわれたり、真剣な怖い話なんだけど、どこか笑ってしまうような事もあり、そんな桜姫にいつもついてくる”楽団”が、不思議な音楽を奏でてくれていて、桜姫の数奇な運命を表しているようでした。
この桜姫ですが、最初はお嬢様っぽい喋り方なのに、どんどん下品になって行って、最後の方は酷い話し方もするんです。その言葉の変化で、彼女の周りの環境の変化も感じさせるという感じでした。あんな男と夫婦になったら、そりゃ、酷い言葉遣いになっていくよなぁ。酷いと思いました。でも、そういう時代だったのかも知れませんね。
私は、この作品、お薦めしたいと思います。面白かったのですが、結構、時代背景とかを理解するのに時間がかかりました。しばらく観ていて、やっと、何となくわかってきたような感じでした。でも、あまりの数奇な運命に引き込まれました。もう上演は終わっちゃったようですが、この演目は古くからあるお話なので、ぜひ、どこかで観てみてください。
ぜひ、楽しんでくださいね。
阿佐ヶ谷スパイダース「桜姫」
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