舞台「プルートゥ」を観てきました。再演で、前回とは、ちょっと違っていました。
ストーリーは、
人間とロボットが共存する時代。
世界最高水準といわれるロボットが次々と破壊される事件が起きる。スイスのモンブラン、トルコのブランド、ギリシャのへらくれす、スコットランドのノース2号、オーストラリアのエプシロンが立て続けに悲劇に見舞われた。ユーロポールの特別捜査官である高性能刑事ロボットのゲジヒトは、犯人の標的が自分を含めた7体の大量破壊兵器となり得るロボットたちだと確信する。
謎を解く鍵を求めて日本に渡ったゲジヒトは、天馬博士が作り出した限りなく人間に近いロボット、アトムと協力して事件を追う事になる。どうやら事件の背景には、5年前の第39次中央アジア戦争の折り、ペルシア王国に派遣された「ボラー調査団」が関係しているらしい。当時、軍事力で近隣諸国を脅かしていたペルシア王国に対し、トラキア合衆国のアレクサンダー大統領は大量破壊ロボット平気が隠されていると主張し、戦争が勃発した。そのさいに大量破壊兵器の存在を探るべく現地入りしたのが「ボラー調査団」だ。アトムの育ての親であるお茶の水博士もそのメンバーだった。
ゲジヒトは日々、忌まわしい悪夢に苛まれながら、妻ヘレナに支えられ捜査を続けて行く。人間を殺害した唯一のロボットであるブラウ1589や、内戦で家族を失った世界最高峰の頭脳を持つ科学者アブラーとの接触により、徐々に確信に近づきつつあった。
一方、アトムの妹で悲しみを察知する能力を持つウランは、廃墟の壁に花畑の絵を描く不思議な男と出会う。駆け付けたアトムの名を聞いた途端、豹変した男の口から吐き出された言葉は-「プルートゥ」。
プルートゥとはものなのか。命を狙われるアトムとゲジヒトは、真相にたどり着けるのか。そして「憎しみ」を理解するロボットは存在しえるのだろうか・・・。
というお話です。
2015年にこの作品は初演して、今回は再演です。前回も観に行ったのですが、今回は、アトムの森山さんと天馬の柄本さんが一緒で、他は違う役者さんになったかな。演出も、以前とはちょっと変わっていました。
内容は、もちろん同じです。手塚治虫先生のアトムの中のプルートゥの部分を、浦沢直樹先生がひとつの作品として描き直したものです。この漫画は、本当に、何度読んでも哀しくなるお話で、素晴らしい作品です。
前回に内容の感想は書いたので、以前とは違う部分について書こうかな。まず、始まると、アトムと天馬博士の場面が始まります。そして、アトムにとっての父親である天馬博士に「お前は失敗作だ。」と言われるんです。親に失敗作だと言われる子供の気持ち解りますか?もう生きている意味が無くなるほど絶望的になる言葉ですよ。いくらロボットでも、心があるなら折れますよ。そしてサーカスの売られて、お茶の水博士の所に行くのですが、この部分は省かれています。
問題なのは、このロボットにも心があるのかという事です。未来にはロボットが社会の一旦を担う状態になっていて、ロボットも家族を持つようになります。ロボットにも家族があるなら、悲しい、苦しい、楽しい、嬉しいという感情が生まれてくるでしょ。それを彼らを作った人間が踏みにじって行く。やっぱり間違っているよね。ブレードランナーと一緒なんです。
そして涙を流すロボットたち。悲しみの記憶を廃棄出来ずに苦しむ彼らに、涙を流すマネをすれば、段々と悲しみも流れて行くと言うんです。憎しみも悲しみも、涙を流して洗い流す。人間と同じようにすれば、ロボットも少しづつ忘れる事が出来る。ロボットも人間と一緒で、感情を操る事が出来るようになるんです。
そんな事が描かれている、このプルートゥというお話を、今回も感情豊かに森山さんを筆頭に沢山の方が演じてくれています。でも、この話の主役はゲジヒトかな。大東さんが演じていました。私、実は、ゲジヒトを吹越さんが演じるとばかり思っていたら、吹越さんはアブラー博士でした。私のイメージ的にゲジヒトは吹越さんだったんだけど、大東さん、ちょっと老けた感じに見せて、ゲジヒトを上手く演じていました。ゲジヒトって、高性能ロボットなんだけど、今一つ、アトムたちよりも感情が乏しそうなのよね。そんな雰囲気が良く出ていました。
そして、今回、森山さんだけでなく、土屋さんもコンテンポラリーダンスの場面がありました。前回では、森山さんだけが踊っていたのですが、今回、アトムだけでなくウランも踊る事によって、ウランが人間の感情を読み取れるという部分が協調されているように見えて、良かったです。土屋さんがウランを演じると聞き、きっとダンスが増えるだろうなと思っていましたが、いやぁ、良かったです。感動でした。
この作品、本当に素晴らしいのですが、やっぱり、ある程度内容を端折ってしまうので、私の好きな部分が無かったりするんだよなぁ。本当は、エプシロンの部分が良いんだけどなぁ。まぁ、仕方ないです。
そうそう、演出としては、人間は自分の意思で動いているけど、ロボットはAIが指示して動かしているという事だから、ロボットの後ろには、その指示で機動する回路を表す為の人々が動いているんです。その部分は、前回と同じでした。
この舞台、今月末まで東京で、来月にはヨーロッパを周り、3月に大阪で上演予定です。これ、もしチケットが手に入るなら、是非是非観るべき舞台だと思います。素晴らしいです。内容も良いし、演技者も良いし、全てが満足出来ると思います。ただ、出来たら、原作を読んでいくと、感動が大きくなるかも知れません。ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
プルートゥ http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/18_pluto/