「ノクターナル・アニマルズ」大きな哀しみは時間と共に膨らみ復讐心となって還ってくる。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ノクターナル・アニマルズ」を観てきました。

 

ストーリーは、

アートディーラーとして成功を収めているものの、夫との関係がうまくいかないスーザン。ある日、そんな彼女のもとに、元夫のエドワードから謎めいた小説の原稿が送られてくる。原稿を読んだスーザンは、そこに書かれた不穏な物語に次第に不安を覚えていくが・・・。

というお話です。

 

 

美術館でシュールな展示がされている。企画をしたスーザンは、上流階級の人間として生活をしていた。夫との仲は冷めており、夜は豪邸で一人で過ごしていた。ある日、元夫のエドワードから小説が送られてくる。

 

エドワードとは、学生時代に結婚しており、彼は小説家志望だった。上昇志向のスーザンとは違い、エドワードは今の生活を大切にする人間であり、売れる小説を書くような人物では無かった。スーザンの実家は上流階級であり、エドワードの家とはレベルが違ったので、スーザンの母親は二人の結婚を反対していたが、燃え上がっていた二人は周囲の言葉を聞かずに結婚します。当初は良かった二人ですが、やはり価値観の違いがあり、スーザンは望まない妊娠をし、エドワードに告げずに現在の夫である友人に付き添ってもらい堕胎をしてしまう。その事を知ってしまったエドワードとスーザンは、別れることとなった。

 

 

そんなエドワードから、10年ほど経って小説が送られてきた戸惑いながらも小説を読み始めるスーザン。その小説は、ある夫婦と娘の3人家族がバカンスに行くために周りに何もない荒野の道路を走っていた。すると男3人が乗った車に嫌がらせをされて、逃げられずに捕まってしまう。男3人に無理やり妻と娘を連れ去られ、自分も荒野に置き去りにされてしまう。そして必死で歩き、民家を見つけて警察に通報するのだが・・・。という小説だった。

 

 

スーザンは、その小説にどんどん引き込まれ、頭から離れなくなり、そして最後まで読み終えた時、エドワードのスーザンに対する思いを知るのだった。そして・・・。後は、映画を観てくださいね。

 

これはキツい映画でしたね。とても美しい映像なのに汚くて、暖かい室内なのに冷たくて、全編に憎しみのようなものが張り付いているように見えました。キツかったなぁ。最後まで観たら、マクベスに出てくる「綺麗は汚い、汚いは綺麗」という台詞を思い出しました。

 

 

凄い復讐なんですよ。これ。エドワードからスーザンへの復讐だと思いました。彼女のせいで、彼は全てを失くしたんです。そして彼は、そこから前に進めていない。いや、この小説を書いて、これからは進めるかも知れないけど、今までは、全く前に進めていなかったんだろうなということが推測出来ました。エドワードは、とても繊細な人なんです。そしてスーザンは、美しく見えながらも、とても図太くて、汚い人間なんです。女性特有の自分本位が出ている人間ですね。そんな彼女だから、エドワードの負った傷なんて、何も感じていなかったんです。そんな彼女に、エドワードが一撃食らわした感じかな。

 

 

人間って、基本、自分が中心だから、どんなに相手を解ってあげようとしても、自分の物差しでしか測れないので、本当の相手の気持ちなんて理解出来ないんですよね。そこで、話し合いが必要になるんだけど、図太い女性って、人の話を聞かないんですよねぇ。自分が悲劇のヒロインになっちゃって、自分が可哀想だからってヒステリックになって、話し合いなんて状態じゃなくなってしまう。良く居ますよ、そういう女性。そういうのを見ると、本当に自分の脳が冷たくなるのを感じます。言っても仕方が無い、人間のレベルが低すぎると思ってしまうんです。

 

 

このスーザンは上流階級だろうけど、人間としてのレベルが低いんです。そしてエドワードは、そんなスーザンを冷たく見下ろしている。きっと、一緒にいる時は分からなかったんだろうけど、別れて、10年経ってみて、それがよく見えて、この小説を書くに至ったのかなと思いました。失くしたものは戻らない、自分の気持ちも元には戻らない、君は当事者だったはずなのに、傍観者になってしまったと言っているようでした。そして彼女を突き放したのかなと思いました。

 

この映画、考えれば考えるほど深くて、美しくて、汚くて、ドロドロしていて、黒くて、生臭くて、毒が溢れている。だから人間って、嫌なのよって言いたくなってしまいました。自分も人間なのにね。この生臭さは、普通の監督には出せないかも知れませんね。トム・フォードだからこそかも知れません。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。映画好きには、大好物になるような作品だと思いました。でも、楽しい映画とかカッコイイ映画とか、表面で楽しむ方には、ちょっとお薦めは出来ません。これ、深く読まないと、面白く無いんです。映画好きな方、ぜひ観てみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

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