「ムーンライト」を観てきました。
ストーリーは、
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「チビ」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ。やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。そんな中、ある事件が起こり…。
というお話です。
黒人の多い貧困地域に住むシャロンは、小柄で、シャイなので、イジメの対象になってしまいます。小学校で虐められ、追い立てられた彼は、廃墟のマンションに逃げ込みます。そんな子供達を見ていたフアンは、シャロンに話しかけ、その心を開いていきます。
フアンは麻薬の売人であり、シャロンの母親は、そんなフアンと付き合うのを良く思いませんが、当人は麻薬に溢れ、育児放棄していたんです。シャロンはフアンとその妻のテレサに見守られて育ちます。
中学校に入り、まだイジメは続いています。シャロンは小さくひ弱で、女性的に見えたから、標的になったんです。仲の良かったたった一人の友人・ケヴィンにも裏切られ、キレたシャロンは、とうとう虐めていたリーダーに酷い反撃をしてしまいます。警察に捕まり、少年院に入るシャロン。そうして少年期は終りを告げます。
青年になり、少年院で知り合った友人のツテで麻薬の売人になったシャロン。羽振りも良く、身体も鍛えた為に大きく筋肉質になっています。そんなシャロンの所に、懐かしい友人から電話が入ります。そして…。後は映画を観て下さいね。
一人の男性の少年期から青年期を、3段階に分けて描いていくのですが、黒人の貧困層が住む地域での虐めって、酷いんですよね。黙ってやられるままにしていたら、殺されているんじゃないかって言うほどなんです。そんな中で標的にされたシャロンは、小学校中学校とずーっと虐められていました。そんなシャロンを救うのがフアンという麻薬ディーラー。このフアンと、青年になったシャロンはかぶってくるんです。
この映画、アカデミー賞を貰って、騒がれていますよね。創り方がとっても上手いと言うか、ズルいという感じなんです。何故って、映画の場面場面に、行間が凄く多いんですよ。アップにして少し置くとか、無言で見つめ合わせて長まわしをするとか、とにかく、観ている人間に、その間の思いを想像させるんです。そして、状況説明をほとんどしない映画なんですね。だから、それも観ている人が想像するしかないんです。
ちょっとネタバレ的になるかもしれないけど、友人がかけた音楽で、シャロンともう一人が、もしかして恋愛関係になるのかも知れないと思わせたりするんです。でもね、もしかして友人は懐かしがってかけただけかも知れないし、それは、観る人の考え方ひとつなの。その1点だけでも、ゲイの話になるのか、友情の話になるのか、二通りに別れてしまう、そんな映画なんです。
母親との関係も、昔は麻薬漬けの母親を軽蔑していたけど、青年になると、今度は自分が麻薬を売る方になり、母親は薬物治療を受けているという、何処まで行っても、貧困のループは終わらず、上に上ろうとすると悪い事をしなければ無理って事が判るんです。悲しいでしょ。マトモに勉強をして、しあわせになろうなんて思っても、無理なんです。
そんな、この世界の不条理を描いていて、何とも言えずに感動しました。本当は、もっと、色々な考えを書きたかったんだけど、この映画、そういう部分が多過ぎるんですよねぇ。フアンは、きっとマトモな死に方じゃなかったんだろうなとか、椅子で殴った友人は、酷い怪我になったんだろうなとか、シャロンは少年院で根性を付けて身体を鍛えたから、一目置かれて麻薬ディーラーの職を手に入れたんだろうなとか、考えれば考えるほど、内容は深くなって行くんですよね。面白いなぁ。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。でも、万人に受けるとは思えません。ま、アカデミー賞を貰う作品は、ほとんどがそうだけど。映画の中の行間を楽しめる人には良いけど、流行のアクションとかホラーとかが好きな人には、面白く無いと思います。私が良く言う、玄人が偉そうに”ここはこう!”とか、偉そうに解釈を宣べる映画の類なので、一般に楽しめるとは言えません。でも、行間をメチャクチャな解釈で楽しむと、面白いと思いますよ。ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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