舞台「エノケソ一代記」を観てきました。
ストーリーは、
喜劇王エノケンこと榎本健一に憧れ、崇拝する田所は、「エノケソ一座」を率いて全国各地を巡業していた。どこへ行っても真奈人のお客は、エノケンの熱演に大喜び。広告やビラを良く見れば、確かに「ン」では無く、「ソ」と書かれているのだが、気付く者はまずいない。コトが露見しそうになれば、田所の妻・希代子、一座の座月作家であり顧問弁護士と称する蟇田一夫が舌先三寸で相手を丸め込み、あるいは開き直ったあげくに、トンズラを決め込むのみ。ただひとりの座員である熊吉は、どんな状況に置かれてもかいがいしく座長に尽くしている。
田所の関心事はいかに本家エノケンに近づけるかだけにあり、たとえ巡業先で若い女ともめごとを起こしても、結局のところ始末をつけるのは、希代子の役割です。田所はエノケンの芸のみならず、人生の痛みや苦しみまでも我がことのように感じ、その苦痛を共に使用としていました。
そんなエノケソ一座に、ある時、決定的な危機が訪れます。エノケン最大のライバルであるアチャラカの帝王・古川ロッパがたまたま巡業地に居合わせ、陣中見舞いにやって来たのです。またその頃、本物のエノケンは大きな試練に見舞われ・・・。後は舞台を観て下さいね。
偽物は何処までいっても偽物なのですが、ここまでやり切れば、偽物も本物になるのかもしれないと思える内容でした。田所という男は、エノケンの”バッタもの”として売れています。地方を巡業しながら、エノケンに似た”エノケソ”として舞台をやっていて、地方の街では、本物がどれほど素晴らしい人かなんて、TVでしか観た事が無いので判りません。そんな場所で、エノケンと同じ”落ち”を堂々としていれば、これがエノケンかと思われますよね。嘘だけど。
三谷さんの脚本、演出なのですが、うーん、そろそろ、ちょっと驚きが無くなってきました。もちろん、面白くて、楽しめたのですが、イマイチ、鼻に付くところがあって、三谷さんの「ジキル博士とハイド氏」と比べると、ちょっと寂しい気持ちがしました。今回、コメディ的な部分が多いのですが、観ていると、段々と物悲しくなって行くんです。どんなにマネが上手くても、本物には決してなれないし、どんなにマネをしている人物が好きでも、まず、喜ばれる事は無いんです。だって、”人の褌で相撲を取る”と同じ事なんですから。
そんな報われない事を続けていても、エノケンが好きで、彼の生き様まで真似してしまう、そのバカさ加減は、妻の希代子でさえ止められなくて、最後の悲劇に繋がって行くんです。いくら好きでも、そんな事まで同じにしなくてもイイのになぁと思うのですが、ファンって、そういうもんなのかしら。私、好きな俳優さんが沢山いますが、わざわざ、マネをしたり、生き方まで似せるとか、付きまとったりとかって、あり得ないっす。
ストーカーまがいの田所は猿之助さんが演じていて、妻・希代子を吉田羊さんが演じています。吉田さんを「SCOOP」という映画の完成披露試写会で観たのですが、福山さんと並んでいらして美しいとは思いましたが、今回は、舞台に近かったので、吉田さんの美しさにメロメロになりました。肌がキレイだったなぁ。
私は、この舞台、お薦めしたいと思います。とっても楽しい舞台なのですが、途中から、それが物悲しく変わって行く姿が、何とも言えずに虚しくて、悲しい気持ちになって行くんです。もう、公演は終わってしまっていますが、もし、また再演されることがあったら、ぜひ、行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
エノケソ一代記 https://setagaya-pt.jp/performances/201610enokeso.html