舞台「キネマと恋人」を観てきました。
ストーリーは、
昭和11年(1936年)、秋。
東京から遠く遠く離れた、日本のどこかにある小さな島の小さな港町。この町唯一の映画館では、東京で封切られてから1年も2年も遅れて、ようやく新作映画がかかる。
今日もスクリーンを見つめる女性がひとり。同じ映画を何度も鑑賞し、上映が終わってもひとり拍手を送り続けている。彼女の名前はハルコ。映画が大好きで、何度観ても、新しい発見があって、見飽きる事は無いと言います。
ある日、いつものように映画を観ていると、映画の中から”寅蔵”という脇役の男性が、何故か、ハルコに話かけてきます。”いつも観ているよね。” えっ?と驚くハルコの前に、その寅蔵が画面から飛び出し、同じ事をやるのではなく、君と一緒に楽しみたいと、ハルコの手を取り、映画館を出て行ってしまいます。あっけに取られた他の客と支配人たち。
画面の中では、”なんで寅蔵だけ出て行けるんだ!”と他の役の者たちも怒り出し、話は続かなくなります。そんな島に、本物の俳優たちが、撮影をする為にやってきます。本物の俳優たちと、彼らが演じた映画の中の配役たち。抜け出した寅蔵とハルコはどうなるのか。そして映画の中のお話は。役を演じた本物の役者たちは、自分の分身をどうするのか。後は、舞台を観て下さいね。
この舞台は、ウディ・アレン監督の「カイロの紫のバラ」という映画にインスパイアされた作品だそうで、同じ様にお話は進みます。映画の中からスターが出てきて、自分と付き合ってくれたら、それはもう、夢のようですよね。若い頃のレオちゃんとかブラピとかに出てきて欲しいし、出来たらマイケル・ケインに出てきてもらって、私の執事をして欲しい。うーん、妄想が膨らむ膨らむ。そんな事に直面したハルコは、逆ハーレム状態で嬉しくなっちゃうのですが、まぁ、そんな事は、長くは続きませんよね。
でも、酷い夫に苦しめられて、その小さな島から出た事が無かったハルコに、広い世界がある事を教えてくれて、自分だって何か出来るのかもと教えてくれたのですから、本当に良かったよなぁと思ってしまいました。何も知らずに、今の夫と一緒に居たら、働かされて年を取って死んで行くだけだったんですから。きっと、東京に出て行き、新しい世界で暮らして行く事も出来るんじゃないかな。自分の可能性を信じられるようになったと思いたいです。
舞台演出が、超ステキでした。舞台上にパネルを持った人が立ち、そのパネルに映画のフィルムが映写されるんです。あのタイミングは素晴らしかったなぁ。この舞台、音楽も最高で、その音楽に合わせて色々なフィルムが流れるので、もう、映画好きな私には、たまらなく幸せな気持ちになるんです。
音楽の話ですが、古い映画の音楽が流れ、セリフの中にも、フレッド・アステアとか、コール・ポーターとかが出てくるんです。私、映画好きと言いながらも、あまり古い映画は観た事が無くて、フレッド・アステアはYouTubeくらいでしか見た事が無いのですが、音楽は良く聞くし、コール・ポーターは大好きです。
まず、舞台の全編に流れているのが、”チーク・トゥ・チーク”。「トップ・ハット」という映画の曲だそうで、私がこの曲が好きなのは、「グリーンマイル」という映画で、ある能力を持つコフィが大好きな曲で、イイ話なのよ。”Heaven, I'm in Heaven~”って、”まるで天国にいるよう”っていう歌詞なんです。
そしてコール・ポーター。1930~1950年頃に沢山の映画音楽や舞台音楽を作った人で、素晴らしい曲が多いんです。「インディージョーンズ魔球の伝説」で最初にナイトクラブで歌っている”エニシング・ゴーズ”とか、”ナイト・アンド・デイ”はスタンダードナンバーで有名ですよね。このコール・ポーターは「五線譜のラブレター」という伝記映画が出ていて、こちらも素晴らしい映画なので、ぜひお勧めします。彼の曲はほとんど網羅されています。
さて、舞台の話に戻りますが、妻夫木さん、今回、主役なのですが、グンと上手くなったんじゃないですか?現実の俳優の高木と映画から出てきた寅蔵、全く性格が違って、別人のように思えるんです。好青年の高木に対して、時代劇のおとぼけ役の寅蔵、良く使い分けていましたね。驚きました。舞台をやっていると、細かいところが上手くなるよねぇ。だって、カメラからだけ見られているんじゃなくて、客席から何百という目が注がれているんだから、繊細に丁寧に演じて行かないと、粗が出るもんね。素晴らしいと思いました。ハルコ役の緒川さん、ミチル役のともさかさん、もう、ベテランの域に入っているので、安心して観ちゃってます。楽しかったですよぉ。
そういえば、今日、メールが入っていたのですが、インフルエンザで何日か休演するようですね。とても残念です。このレパートリー、再演して欲しいな。これは、誰が観ても、凄く楽しめる舞台だと思いました。演出も見事だし、文句のつけようがありません。完璧です。超!超!満足いたしました。これは、お薦めの舞台ですが、既に完売だと思うので、再演を願って、祈りましょう。ぜひ、観に行ってみて下さい。
キネマの恋人 https://setagaya-pt.jp/performances/201611kinema.html
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