舞台「夢の劇/ドリーム・プレイ」を観てきました。
ストーリーは、
神インドラの娘(アグネス)が、雲の上にたち、眼下の世界=地球を見ている。そこは、月に照らされた陰気な世界。
インドラはアグネスに「地上へ降りて人々の不満や嘆きを見聞きしてきなさい」と送り出す。
地上に降り立ったアグネスを待ち受けていたのは、人生に惑う様々な人間たち。恋人を一途に待ち続ける士官、来る日も来る日も劇場の入口に座り続ける楽屋番の女、自分が扱った犯罪や悪行に追い詰められている弁護士などなど。
驚き、悲観にくれながらも、アグネスは人間の「存在の痛み」を経験していく。現実と夢、その狭間のような流れのなかで・・・。
人間界の苦悶にまみれ、苦しむアグネス。
そこに詩人が現れ、彼女は自身の世界へと還る勇気を取り戻す。
アアグネスが炎とともに天空へ戻る瞬間。
それは人の夢の終わりか、あるいは新たな夢の始まりなのか。
というお話です。
神の娘であるアグネスが地上に降りてきて、人間の苦しみを体験するんです。神様も、良い経験だと思って送り出したんだと思うのよね。
色々な人間に出会っていくんだけど、誰も彼も、不満を持っていて、幸せそうじゃないんです。
ある劇場の看板ダンサーに恋をした男は、いつまでも劇場から出てこないダンサーを待ち続けています。報われない恋ってやつですね。
その劇場の受付に座っている女性は、昔は舞台に出ていたようですが、今は落ちぶれて、受付として置いて貰えるだけ良かったと思いながら、ずーっと編み物をしています。
ある弁護士は、自分の依頼人の利益を考え、悪い事でも良い事と曲げてきた自分の仕事に罪悪感を抱いて、苦しんでいます。
そんな人々に寄り添いながら、アグネスは苦しみを知り、出来れば助けてあげたいと思って、受付嬢と変わってあげたり、弁護士と結婚して子供を儲けてあげたりするのですが、誰も幸せになりません。なんで幸せになれないのかしらと不思議に思うアグネスの前に、詩人が現れます。
彼は、この世界は、自分が書いた詩の通りに進んでいる。この世界は、自分が創ってしまったんだと話します。彼が抱えている苦しみ全てが、この世界に広がってしまっていて、幸せのカケラさえも見つけられなくなってしまった。
そんな彼に、アグネスは、自分がその苦しみを持って神の国に帰るから、あなたは苦しむ必要は無いですと話します。父である神が人間を見ているし、自分がその苦しみを持ち帰るのだから、人間は、幸せを持って欲しいと言って、その身を炎に焼いて、天に登って行きます。

ストリンドベリという方の戯曲なのですが、ちょっと難しかったです。でも、最後まで見ると、詩人はストリンドベリ本人であり、アグネスは神の子=キリストと同じなんだなーって思いました。神による許しを貰って、その罪を昇華させて、人間は幸せになれるって事なんだと思いました。いや、思おう。
不思議な舞台構成で、真ん中に円形の舞台が出来ていて、3方向に客席がありました。そして、客席近くまで、舞台の装飾が作って逢って、何となく、自分も、その世界に入っているようでした。きっと、人間全般に対しての話だから、観ている観客も、個々に出てくる人々の中の1人となって、劇を鑑賞出来ると言う事だったのでしょう。
確かに、観客、一人一人にも苦しみも悲しみもあって、それぞれに心の中に罪を背負っていると思うんです。それも一緒に、神の子アグネスが昇華してくれたということなのかなと思います。神の子アグネスの早見さん、美しかったです。初めての舞台だそうで、まだまだ、初々しい感じでしたが、随分と練習されたのかなと思ったのは、感情の入り方が良かったんです。表情がとても苦しそうだったりして、最初は、無垢の女性なのに、最後は、人間の苦しみを知って、大人の女になったような顔になり、頑張ってるなぁって思っちゃいました。頑張っている人って、美しいよね。
他の方々は、もう、安心して観ていられる方々ばかりで、私の大好きな長塚さんも出ていらしたし、白井さん、山崎さん、そして、田中さん、江口さん、私の好きな顔ぶれが勢ぞろいで、とても楽しめました。バレエやダンス、ポールダンスまで組み込まれていて、面白い舞台だなって思いました。
この舞台は、とってもお薦めだったのですが、既に終わってしまっています。私が、映画祭などでバタバタしていたので、感想が遅れました。でも、もし、再演があったら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんでくださいね。
- ¥4,860
- Amazon.co.jp
- 一人舞台/アウグスト ストリンドベリ
- ¥価格不明
- Amazon.co.jp