【演劇】「イニシュマン島のビリー」ビリーが望んでいたものは、実は近くに在ったのかもしれない。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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舞台「イニシュマン島のビリー」を観てきました。


ストーリーは、


1930年代半ば、アイルランドのアラン諸島にあるイニシュマン島。辺鄙な島の中でも、さらに田舎の一角に、アイリーンとケイトという2人の老女が営む小さな商店がある。彼女らと一緒に住んでいるのは、生まれつき片手・片足が不自由な甥のビリー。島民みんなから哀れまれ、馬鹿にされているビリーだったが、彼自身はさとりでも開いたかのような穏やかさで、読書と、時折ぼんやりと牛を眺めては時間を潰し、日々を過ごしている。


島中の噂話を新聞屋よろしく触れ回っては食糧などをたかるジョニーパティーンマイクと、アル中の母親マミー。可愛い容姿とは裏腹に口も態度も最悪のヘレンと、うす馬鹿のバートリー姉弟。島の人々に振り回されるドクター・マクシャリー。ろくでもないご近所づきあいと、変わらぬ毎日に誰もがうんざりしているのが島での暮らしだ。


そんな時、ジョニーパティーンマイクが近くのイニシュモア島にハリウッドからの撮影隊が来るというビッグ・ニュースを運んでくる。浮足立つ人々。ヘレンは島で唯一のハンサムガイ・バビーホビーに島への送迎を頼み、撮影隊に接触しようとする。話を聞いていたビリーも、いつにない熱心さで「作戦」を練り、行動を起こす。ハリウッドと映画。島の人々にとっての「夢」は、ビリーの運命を大きく変えていき・・・。


というお話です。


ビリー

アイルランドのアラン諸島にある小さな島のイニシュマン島に住んでいる、ビリーは、俗にいう”かたわ”なんです。片手、片足が動かず、脳に障害は無いものの、常人のように動くことは難しく、友達と遊ぶことも出来ない。ビリーの両親は、ビリーが赤ちゃんの時に亡くなったらしく、2人の叔母に預けられ、育ちました。

このビリーの生立ちについては、何度も色々な話が出てくるのですが、本当はどうだったのか、ちゃんと最後に解ります。そこで、とっても考えさせらると思いますよ。私も、唸ってしまいましたもん。これは、良く出来た話なんです。一つの”青い鳥”と思って良いんじゃないかな。

ビリーは、”かたわ”と言われて虐められていたけど、決して、心は挫けている訳では無く、卑屈になってもいないんです。それは、2人の叔母がとても可愛がってくれて、大切に育てられたからなんです。それに、近所の人々も、悪態をつきながらも、ビリーの事を大切に思っていて、決して、無視をするとかはしないんです。相手にしないというのが、一番の虐待ですからね。

ビリー

そんなビリーですが、もしかして、島から出て行けば、自分を認めてくれる人々が居て、自分だって、自分にしか出来ない事を見つけられると思っていたんです。だから、ジョニーパティーンマイクに、隣の島に来ていた映画撮影スタッフのところへ連れて行って貰い、チャンスをつかみたいと思ったのだと思います。

上手くチャンスを手に入れたビリーは、ニューヨークへ行き、俳優のオーディションを受けることになり、これで、自分の人生は変わって行くのだと思うのですが、ニューヨークのように、誰もがせかせかしていて、毎日、戦いが行われているような場所では、ビリーの思っているような幸せは落ちていません。彼は、きっと、自分が、イニシュマン島で、いかに幸せな日々を過ごしてきたのかと言う事を知ったと思います。

だって、日本だって、首都圏に来ると、今日やる事は今日やって、それも人よりも早くやってお金にしようと思うような人ばかりでしょ。一歩遅れれば、明日には、その仕事は無くなっているんですもん。今日、安泰だと思っている人が、明日には突き落とされたり、そんなスピードで生きている人々の中に、島で生きていたような人が付いて行ける訳が無いでしょ。ビリーも同じだったと思いますよ。

ビリーを育てた2人の叔母さんたちは、とっても優しいんです。田舎の気の良い人々で、ビリーを目に入れても痛くないほど可愛がっているんです。ビリーは、そんなに溺愛されていても、やっぱり、一度は、外の世界に出てみたかったんでしょうね。若いから、仕方ないです。でも、自分の間違いに気が付いて、ちゃんと大切な人々の所に戻ってこれたんだから、良かったですけどね。

ビリー

自分が既に持っていた、大切なものを見つけたビリーは、何を思ったのか。どんなに悲しい出来事を知ったとしても、自分を大切に思ってくれる人々に気付いて、自分が”かたら”であっても、普通に生活が出来ていたのは、この島だけだったんだと言う事を理解して、未来の事を思い描き始めるのですが・・・。

何処までも、悲しいお話でした。幸せを見つけるお話なんだけど、とっても悲しくて、人間とはって思わされました。私、思うんですけど、誰もが”かたわ”なんですよね。手が使えない、足が使えない、頭が悪い、目が見えない、口が聞けない、耳が聞こえない、色々あるけど、誰もがコンプレックスを持っていて、健康な身体を持っていても、そのコンプレックスが、自分を”かたわ”にしているんです。それを克服するのか、それと一緒に生きて行くのか、それは、人それぞれ。でもね、きっと、克服しても、コンプレックスって、また、何か出てくるから、そのコンプレックスも、自分の中の一つだと思って、受け容れて行く事が、未来に繋がるんじゃないかなと思います。完璧な人間なんて、面白く無いですよ。

”かたわ”とかって、禁止用語とか言われるけど、昔からある大切な言葉なのに、なんで言葉狩りみたいなことをするんですかね。もっと、日常で使って、その言葉が悪い言葉とならないように使って行けば、何てことは無いでしょ。私だって”かたわ”ですよ。だって、人の顔を覚えられないし、子供の頃はアスペルガー予備軍みたいので凶暴だったみたいだし、悪い所なんて、誰にでもあるんです。なんで受容れないのかな。不思議です。気にし過ぎなんですよ。

ビリー

話戻して、私は、この舞台、超!お薦めしたいと思います。ビリー役の古川くん、上手かったです。あのキレイな顔で、”かたわ”の役を見事に演じて、みんなに虐められて、それでも美しい姿を崩さない彼は、ステキなビリーでした。鈴木さんや柄本くんも良かったけど、私が一番感動したのは、叔母さん2人かな。一見、ガサツでキツい叔母さんたちに見えるんだけど、すっごく深い愛情でビリーを包んでいる事が伝わってくるんです。マジで上手いなぁ~と思いました。山西さんも江波さんも小林さんも良かったです。悪い所が見つからない舞台でした。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ



イニシュマン島のビリー

http://hpot.jp/stage/inishman2016



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