【演劇】「ライ王のテラス」圧倒的な美しさと強さを持つバイオン寺院に全てを捧げた王は朽ちて行く。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

舞台「ライ王のテラス」を観てきました。


ストーリーは、

カンボジアの若き王・ジャヤーヴァルマン7世は、敬虔な仏教徒で、勇猛な美貌の戦士であった。宿敵チャンパを破り、チャム戦の大勝利の凱旋の喜びのうちに、王は荒廃した王都の再建をめざす。人民は歓呼を以て王を支持した。王は人民に何トンもの施米や黄金を撒き、建築設計のための石工や彫刻家が王宮に呼ばれた。しかし、王のこんな大盤振る舞いの大計画に、不安を抱く者がいた。占星術師・クララーパンジは方角が凶だと進言した。すでに王の上腕に小さな紅い斑紋が出ていた。宰相・スールヤバッタと王太后(母妃)・チューダーマニも不安を抱いていた。


ライ王

一年後
建設中の寺院の名は、王様と共に戦って死んだ英霊たちの御魂を迎えるバイヨンと名づけられる。若い石工・ケオ・ファは、老棟梁・カンサに代わって観音像の工事に励んでいた。民の一部に癩が蔓延しはじめ、星の凶兆を知った宰相・スールヤバッタは、これを機に王を暗殺して自分が王太后と結び権力の座に就こうとしていた。第一王妃(夫人)・インドラデーヴィも王の病気におびえ王と会わず、第二王妃(夫人)・ラージェンドラデーヴィだけは変らずに王を見守っていた。宰相はそんな第二夫人を無理やり強姦しようとするのだが、王太后に見つかり罰を与えられてしまう。しかしそんな王太后と宰相は裏では通じていて、王太后は第二夫人に王を十日以内に毒薬で殺すように命じ、従わないなら、おまえを殺すと脅す。王太后は息子がライ病がならば、彼を殺して再び自分が王を産み直し、素晴らしい王国を築き直そうとしているのだった。


建築が進行し伽藍が出来上がるにつれて、王の肉体は少しずつ”ライ”に蝕まれていった。王はきらびやかな衣裳で肉体の崩壊を隠しながら、建築を見つめているのだが、国の財政も次第に傾きはじめ造営資金も窮してしまう。第二夫人は王暗殺をする事は出来ず、王太后に殺される前に、第一夫人の部屋に逃込み、匿って貰い、国外逃亡をしようとする。そんな第一夫人と第二夫人、そして王太后の所に王が現れ、何故、王を避けるのだと詰め寄ります。すると第一夫人が、既に自分も"ライ"に侵されていることを告げ、王が蛇神の娘・ナーガにばかり執着するから嫉妬しているのですと告げます。そして、王しか入れないナーガの神殿に踏み入り「私がナーガになりあなたを離さない。」と言いながら、神殿の炎の中に投身してしまいます。そこへ宰相と王太后が現れ、宰相は王を殺そうとするのですが、王太后は、やはり息子を殺す事が出来ず、宰相を殺してしまいます。


ライ王

さらに一年後
宰相の死で、叛乱の兆は消え、ライを恐れた村人も次々と出て行くのですが、王を尊敬する若棟梁・ケオ・ファが献身的に建築を進め、王の念願であったバイヨン寺院の建築を着々と進めていきます。しかし美しかった王の顔はもはや人前にさらせないほどライに冒され、目だけをあらわし、金色の輿に乗っていた。王は視力も衰えはじめていた。母・王太后は支那大官夫妻と一緒に支那へ発ち、王は、第二夫人と一緒に、ケオ・ファとその恋人の結婚式を開き、祝福をします。そして、バイヨン寺院は完成し、ケオ・ファ夫婦も旅立ち、宮廷には、第二夫人と王しか残らなかった。王は、バイヨン寺院が美しく眺められるテラスで寺院を眺め、最後の時を迎えようという、その時、自分を呼ぶ、若々しい自分の声を耳にする。形ある物に固執し、完璧を目指した王は、完璧な若い頃の自分の姿を見ながら、朽ち果てて行く自分の肉体に抗う事が出来ずに死んでいく。

というお話です。


ライ王

さすが三島という内容のお話で、この敗退的な内容の話を、良く、こんなに美しく舞台にしてくださったなと思い、感動でした。


主演の鈴木さんも、素晴らしい肉体を仕上げてきて、完璧な王として、そこに君臨していました。それが、どんどん朽ちて行くのは、悲しい事です。でも、これ、普通の人間についてのお話なんですよね。どんな人でも、若い頃は輝いていて、何でも完璧に出来ると、未来を夢見て、自信を持って進んでいると思うのですが、段々と、色々な経験をするにつれ、恐さを覚え、精神や身体を病み、老化していくという事を描いているのだと思いました。


でも、老化したって、そんなに気にする事もないと思うんですよね。経験は、もっと良い結果をもたらしてくれると思っているし、顔が老けて行ったって、別に、自分の顔は鏡に映さないと見えないでしょ。そんなに、いつも自分の顔を見ている必要もないし、整形とかで美しくするよりも、その年齢がシワに刻まれた、良い顔を大切にした方が良いじゃん。形を美しくするよりも、清潔にするとか、柔らかい表情が出せるとかになった方が良いでしょ。


ライ王

舞台に、カンボジアからダンサーの方々が来て、出演されていて、素晴らしかったです。やっぱり、本場の方々が出演されると、雰囲気がガラッとあちらの感じに変わるんですよね。スパイスの匂いとか、蘭の香りがしてきそうな感じでした。私、タイからアンコールワットに行ったのですが、タイには、街中の街路樹の幹に、蘭が適当に生えていて、花を咲かせているんです。え?と思うような、美しい蘭たちが、所狭しと生えていて、驚きました。そんな雰囲気が、舞台でも感じられました。


王が、ライ病になって行くのですが、この”ライ病”への差別は、日本でも問題になりましたよね。いや、今も問題になっているのかな。映画「あん」でも描かれていましたが、知識の無い人々の心無い言葉が、患者だった方の心を傷つけます。今は、このライ病=ハンセン病は、治る病気であり、早期発見なら、何の問題も残さずに治る病気なんです。誰もが、そういう事を知って、一緒に生きて行けるような体制を作るべきだと思っています。


やっぱり、三島由紀夫のお話は良いなぁ。宮本亜門さん、もっとこれからも三島さんの作品を上演して欲しいです。「金閣寺」も、すっごく良かったし、今回の「ライ王」も、最高でした。ちょっと残念と思ったのは、亜門さんの「耳なし芳一」の舞台で、映像や大きな人形を使った演出があって、そのスケール感に感動したのと、「金閣寺」の時の「金閣寺」を美しい舞踊で見せてくれたのがあったので、バイヨン寺院の圧倒的な強さと美しさを、もう少し、違う形でも描いて欲しかったなと思いました。


ライ王

この舞台、すっごくお薦めだったのですが、既に公演は終わりました。再演を願います。実は、結構、前に観たのですが、つい、映画の感想が多くて、後回しになってしまいました。実は、後回しになっている舞台の感想が沢山あって、困っています。(笑)早く書かなくちゃ。

再演があったら、ぜひ、観てみて下さいね。カメ




ライ王のテラス   http://www.tbs.co.jp/act/event/leperking/



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