【未体験ゾーン】「パラドクス」エッシャーの階段を歩く3人に終わりはあるのか。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

未体験ゾーンの映画たち「パラドクス」を観てきました。


ストーリーは、

刑事に追われる犯罪者の兄弟が、とあるビルの非常階段に逃げ込んだ。刑事もその階段に足を踏み入れるが、1階の階段を下りると何故か最上階の9階が現われ、何度下りても9階にたどり着いてしまう。そんな不可解な状況の中、兄が刑事に足を撃たれ、瀕死の状態に陥る。一方、車で荒涼とした大地を横断していた家族4人は、一本道なのに何度も同じ場所を走っていることに気づく。やがて、娘が持病である喘息の発作を起こし……。

というお話です。


パラドクス

あるアパートに住む兄弟は、刑事に追われて非常階段で逃げようと防火戸を開けて入り、刑事も後に続きます。どんどん下に降りて行くのですが、1階に着いても出口がありません。そんな中、兄弟と刑事がもみ合いになり、刑事が兄の足を撃ってしまいます。兄の出血は酷く、悪くなるばかり。


病院に連れて行かなければと出口を探すのですが、何処まで行ってもありません。地下まであるのかと思い、どんどん下へ降りて行くと、また1階が出てきます。はぁ?となって、兄弟を残して、刑事だけ上に登って行くと、登った先に兄弟が居て・・・。そうです、メビウスの輪状態。まるで、エッシャーの絵の階段を上っているがごとく、そこから出て行く事が出来ません。

パラドクス

一方、所変わって、車で荒涼とした大地を横断している家族4人。先は見えるのに、どれだけ走っても、同じ所を走っている事に気が付きます。これはおかしいと思い、車を降りて周りを見るのですが、普通の風景です。おかしいなぁと思っていると、兄妹の妹が喘息の発作を起こしてしまいます。喘息用の薬の吸引機が無い事に気が付き、慌てて病院などを探すのですが、同じところから出る事が出来ません。

母親は、パニックに陥り、薬局を探すのですがありません。スーパーはあるのですが、薬は無いんです。兄は、自分が妹の薬を忘れたのだと自分を責めて悲しみます。母親は狂ったように車を走らせ、薬局を探すのですが見つかりません。

パラドクス

時間が経ち、階段に閉じ込められた兄弟と刑事は高齢となっており、兄弟の兄は、既に亡くなっていました。彼らは、それぞれに自分の生活を始め、生き長らえています。


荒野に閉じ込められた家族も年を取り、両親は老人に、子供は成人となりました。こちらも、それぞれに生活を始め、変わらない空間の中で、何とか生きています。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。

パラドクス

この映画、面白かったなぁ。最後、そうくるかぁ~って驚きましたもん。もう、何処まで行ってもメビウスの輪なのよ。抜けられないの。もう、”いやぁ~!!!”って叫びたくなるほど終わらないんです。この映画が与える雰囲気って、例えば、宮沢賢治の「注文の多い料理店」とか、筒井康隆の「腸はどこへいった(にぎやかな未来)」とか、内容は違うんだけど、なーんか、いや~な雰囲気を与えてくる作品と同じなんです。段々と、あれぇ~?おかしいよなぁ、って違和感を感じ始めて、それが展開して行くんです。


パラドクス

こういう内容って、短編だと多いけど、これで1本の映画として成立しているところが、凄いんですよ。ちゃんと2つの話が繋がっていて、それが、まだまだずーっと続いて行くって言う事が想像出来てしまうところが何とも上手いんです。この異次元空間に入ってしまった人々は、もう、逃げられなくて、そして、いつ、誰が、そこに入ってしまうか、解らないんです。恐ろしいでしょ。

パラドクス

普通の日常の中に、この恐怖は潜んでいて、もちろん、それを予知する事も出来ず、予防する事も出来ず、何故という言葉は全く意味が無いんです。そこが面白いんです。何でも謎が解明されることが良い事では無く、その謎を抱えたまま、次のステージへ進んでいく。それが、またたまらない面白さになるんです。

そうそう、美術的にも、とても面白いと思いました。ちゃんと非常階段の中なのに、生活の場になって行くんですよね。トイレだったり、食事するところだったり。最初は、直ぐに餓死しちゃうじゃんって思うのですが、それが、また上手く出来ているのよ。生活出来るようにループしていて、それが、芸術品のように積み重なって行くんです。上手く説明出来ないけど、驚くような事になりますよ。

パラドクス

私は、この映画、超お薦めしたいと思います。私は、こういう作品って好きなんですよ。もう、何処までも救われず、何処までも難解で、だけど笑える作品って、面白いでしょ。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ




パラドクス@ぴあ映画生活

未体験ゾーンの映画たち    http://aoyama-theater.jp/feature/mitaiken2016