「黄金のアデーレ 名画の帰還」の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
アメリカ在住の82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、グスタフ・クリムトが描いた伯母の肖像画で第2次世界大戦中ナチスに奪われた名画が、オーストリアにあることを知る。彼女は新米弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)の助けを借り、オーストリア政府に絵画の返還を求めて訴訟を起こす。法廷闘争の一方、マリアは自身の半生を振り返り……。
というお話です。
アメリカに住むマリア・アルトマンは、ユダヤ人であり、第二次世界大戦時にオーストリアからアメリカに逃れてきた一人です。彼女の家は、オーストリアでは、上流階級であり、裕福でした。しかし、ナチスの台頭から、ユダヤ人は迫害され、オーストリア政府もナチスに従った為に、オーストリアから逃れるしか無かったんです。
裕福だったマリアの家には、沢山の芸術品があり、その全てがナチスに略奪され、戦後も、何処にあるのかは判りませんでした。マリアも、諦めていたのですが、ある日、オーストリアが、ナチスに略奪されていた芸術品を返還するための訴えを聞き入れるとのニュースが流れ、マリアは、ベルベデーレ美術館に所蔵されている「黄金のアデーレ」を返還して貰おうと、裁判を起こす事にする。
その弁護士に雇われたのは、新米弁護士のランディで、彼もオーストリア出身でした。彼は、新米なので、難しい訴訟には向かないと思われ、最初は、嫌々始めた仕事だったのですが、マリアの思いを受けて、段々と、その訴訟にのめり込んでいきます。そして、弁護士事務所から辞めるように言われても、辞める事はせずに、マリアを支え続けます。
さすがに、長い時間の拘束と、オーストリアへの出張などで、弁護士事務所からも文句を言われ、仕方なく、勤めていた弁護士事務所を退職してまで、「黄金のアデーレ」を取り返す為の訴訟の証拠を集め続けます。
オーストリア政府は、国宝級の「黄金のアデーレ」をマリアに返すつもりは無く、アメリカでもオーストリアでも、凄腕の弁護士を雇い、マリアとランディの訴えを退け続けます。マリアは高齢のため、時間が長引けば、死んでしまうだろうという目論みがあったんです。しかし、ランディは諦めず、証拠を一つづつ突き付けて、オーストリア政府を追い込んでいきます。
マリアも、最初は、半分、諦めていたのですが、あまりにもオーストリア政府が酷い仕打ちをしてくるので、許せなくなり、ランディと一緒に戦い続けます。最初の頃は、オーストリアから、絵の権利は取り戻しても、絵自体は、置いておいても良いかくらいに思っていたように見えたのですが、あまりにも酷い仕打ちをするので、オーストリアには置いておくのもイヤになったようでした。
アメリカ、オーストリアと訴訟を続け、最後に勝ったのはどちらだったのか。マリアにとって、その絵は、どれ程大切なものだったのか。そして、彼女の沢山の苦しみは報われるのか。後は、映画を観て下さいね。
この映画、すっごく面白かったですよ。これね、戦争によって、人生を狂わされた人の最後の希望だったような気がするんです。マリアはユダヤ人であり、ナチスによって、それまでの生活は全て壊され、アメリカへ逃げて、1から始めたんです。まぁ、裕福な家柄だったし、マリアの夫にも才能があったので、アメリカでも生活して行けたのだと思うのですが、やっぱり、それまでに築いてきたものを全て取られてしまったら、それは、辛いですよね。
「ミケランジェロ・プロジェクト」で描かれているのですが、第二次世界大戦の頃、ナチスが、裕福なユダヤ人の家を制圧して、ほとんどの贅沢品を強奪していたんですね。それは、もう、酷いものでした。毎度、書くことながら、なんでこんな事をしたんだろうか。あのね、ユダヤ人の迫害は、何か理由があったんだと思うし、ただ、ナチスだけが悪いのではないと思うのですが、でもね、略奪はダメでしょ。
どちらにも言い分があるのは解るけど、それだったら、略奪する必要は無いのよね。ただ、迫害して、彼らの財産は、ナチスが私用に持って行くのではなく、国家の財産として保管するべきなんです。持ち帰るのではなく、大切に芸術品として保管し、どこから持ってきたのかとか、ちゃんと記録をしておくべきなんですけど、バラバラ盗んで、私的に使っていたんでしょ。それは、ダメだって。只の泥棒だから。
マリアは、とても裕福な家に住んでいて、マリアの叔母に当たるアデーレは美しく、アデーレの夫は、その裕福な力で、クリムトやフロイトなど、有名な画家や学者などから良いパトロンとして扱われていたようです。こういうところが、ユダヤ人が嫌われた一つなんだと思うのですが、ユダヤ人って、頭が良くて、計算が得意だから、商売をすると、儲かったんだと思います。その時代、汚い仕事と言われた金貸し(今のサラ金かな。)を、イヤな顔をせずにやったから、裕福になれたのだと思います。でも、普通の人民からは妬みなどで嫌われたのでしょう。ヒトラーも、ユダヤ人に劣等感を抱いていたのかも知れません。
訴訟を起こしたマリアの過去の記憶が、何度も映画の中で蘇えるのですが、その豪華さと言ったら、素晴らしいんです。だって、クリムトを家に読んで、妻の肖像画を描かせるなんて、どんな贅沢なんですかっ!いいよなぁ。そんなに裕福でしあわせだったのに、それが崩れ落ちる様子は、酷かったです。とても可哀想でした。彼らは、その苦しさを、ずーっと忘れられないんでしょうね。

色々考える所が多い作品だと思います。私は、超!超!お薦めしたいと思います。これは、分かり易くて、とても考えさせられる映画です。誰が観ても、何か感じると思いますよ。オーストリアという国が、戦争時にやってしまった失敗を、何処までも正す事が出来ない姿が、今の日本に被りました。
でもね、日本は、第二次世界大戦後に、随分沢山(国家予算的な。)のお金を、迷惑をかけた国に対して保障しているんですよ。芸術品などの略奪はしていないし、そもそも、そんな文化の無い国に進行したんだから。芸術と呼ばれるようなものは無かったの。だから、同じに考えないでね。
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