舞台「No.9 -不滅の旋律-」を観てきました。
ストーリーは、
ベートーヴェンは、作曲家として聴覚障害という致命的な状況に侵され始めていた。孤独で閉鎖的な音楽と向き合う時間、愛する人との関係すらも身分の格差に悩まされ、心は破滅的になっていくそんな中、ピアノ攻防で出会ったマリアや2人の弟、様々な人々との触れ合いが少しずつベートーヴェンに変化をもたらし始める。
国の情勢が刻々と変化していく中、ナポレオン軍の敗北がテーマの「ウェリントンの勝利」などの曲を発表し、成功を収め始めたベートーヴェンは、頭の中に鳴り響く音楽をひたすらに楽譜に残し続け、名曲を生み出していく。しかしそんな彼には、払拭できない大きな心の傷があった。幼少期に父親から暴力を伴う厳しい教育を受けた影響で、その幻影に悩まされる苦しい日々は終わらないままだった。そんな自分を自覚しながらも、自らが後見人となった甥カールに、自分の音楽の全てを託送と以上なまでに執心してしまう。
内面の不安と世間の賞賛の中「第九」の演奏会。交響曲にコーラスを加えるという創造的な試みに対して、その大絶賛の拍手はベートーヴェンの耳に届いたのか。ベートーヴェンが生涯を賭けて問い掛ける本当の芸術とはいったい何なのか?
というお話です。
これ、脚本が良いですね。ベートーヴェンのお話って、映画でもいくつかあるのですが、今回の舞台は、とってもベートーヴェンの人柄とか、過去などが分かり易く、こういう人だからこそ、こういう音楽なんだなという感じが伝わって来て、良かったと思います。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンって、やっぱり神経質だったんだと思うんですよ。あの規則正しい旋律や、突然展開させる奇抜さ、そしてそれまで異種とされていたものの融合など、彼だからこそのものが、彼の音楽にはあります。それは、やっぱり、彼の子供の頃からの色々な問題があり、キツい性格なのに、弟たちを必死で守ろうとする優しさなど、複雑な彼の性格が、彼の音楽に組み込まれているのだと思いました。そんな風に、ルートヴィヒを描いている、このお話、とっても良かったです。
稲垣さんがルートヴィヒ役なのですが、この神経質そうだけど、どこかに優しさがあるというところが、彼にピッタリでした。神経質そうに演じるのは誰でも出来るけど、その中に、家族への愛と、周りの人間への気遣いと優しさを表現するのは、難しいと思うんですけど、稲垣さんは、彼自身に、その要素があるからなのか、全く無理しているように見えずに、ルートヴィヒになり切っていらっしゃいました。

稲垣さんのルートヴィヒの中には、愛して護って行かなければならないものが沢山あるのだけど、彼の周りには彼を愛して護ってあげられるような心の広い人が居なくて、だから、ルートヴィヒが、とても可哀想で、誰かが包んであげなければ壊れてしまうのにと心配しながら観ていました。
そんなルートヴィヒの苦しみを理解して、彼の側に寄り添うマリア・シュタインを大島さんが演じられました。大島さんって、舞台は初めてらしいのですが、とても上手いと思いました。まぁ、声の出し方とかは、ちょっと単調かも知れないけど、思ったよりも上手くて、驚きました。周りのベテラン俳優さんたちと演じていても、そんなに違和感は無かったし、最後まで、ルートヴィヒの事を思っているのはマリアだねって思えるような感じで、良かったと思います。一つ言わせて頂くと、時間の経過と共に、マリアも年を取っているハズなので、もう少し、最後の方は、年配者っぽくても良かったかなと思います。
他は、もう、何度も舞台を熟している方ばかりなので、安心して観ていられました。面白かったです。
白井さんの舞台は、大袈裟な展開をしないけど、ちょっとした表現の仕方で、全く違う空間を作るのがとても上手いので、場面場面で、全く違う場所が表されていて、毎度ながら、素晴らしいなと思いました。私、白井さんの演出される舞台、好きなんです。何となく、砂浜に舞台があるように見えて、砂のお城が建ったと思ったら、次は野原になっていたり、水辺になっていたりと、とても気持ちが良いんです。うーん、良かったなぁ。
今回は、音楽がメインなので、もちろん、音楽も良かったですよ。特に、第九にたどり着くまでの、少しづつ、第九らしきものが形作られている過程があったりして、楽しめました。色々な曲が組み込まれていて、音楽でも楽しめたと思います。
私は、この舞台、超!超!お薦めなのですが、チケット、まだあるのかしら。私だって、もしチケットがあるのなら、もう一度、観たいくらいなのですが、稲垣さんと大島さんの人気で、一般の演劇ファンは、手に入れるのがとても困難だと思います。うーん、SMAPとAKBでは、仕方ないとは思いますが、今度は、もう少し手に入れやすくして欲しい。稲垣さんはそのままで、マリア役を元AKBでは無い、俳優さんでやって頂ければ、もう少し、安心してチケットを手に入れられるかなと・・・。ファンの方、スミマセン。でも、この素晴らしい脚本なら、他の方でやっても良いと思います。
もし、もし、チケットが手に入るようなら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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