【演劇】「もとの黙阿弥・浅草七軒町界隈」名誉も地位も肩書も完璧なのに、自分は完璧じゃない! | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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舞台「もとの黙阿弥・浅草七軒町界隈」を観てきました。


ストーリーは、

時は文明開化の明治。所は浅草。 黙阿弥の新作まがいの芝居を上演して興行停止の処分を受けてしまった芝居小屋・大和座の座頭 坂東飛鶴(波乃久里子)と番頭格の坂東飛太郎(大沢 健)は、しかたなく「よろず稽古指南所」を開き、日銭を稼ぐ日々。そこへ男爵家の跡取りの河辺隆次(片岡愛之助)と、書生 久松菊雄(早乙女太一)が訪れる。隆次は姉の賀津子(床嶋佳子)が勝手に決めた縁談の相手と舞踏会で踊らねばならず、久松のすすめで飛鶴に西洋舞踊を習うことにしたのです。二人と入れ違いに現れたのは長崎屋新五郎(渡辺 哲)。良縁が舞い込んだ娘のお琴に西洋舞踊を仕込んでほしいと頼みます。


黙阿弥

翌日、やってきた長崎屋お琴(貫地谷しほり)は女中のお繁(真飛 聖)と入れ替わって相手に会い、その人柄を確かめたいと言うのです。ところが当日、隆次と久松も同じように入れ替わって登場したからさぁ大変!互いの入れ替わりを知らないままの出会いが、七軒町の住人たちを巻き込みながら、思いもよらない大騒動へと発展していく…。
というお話です。


話は、上に書いたものが、そのまま演劇になっているので、これ以上の説明はしないで、直ぐに感想を書きますね。とっても、面白くて、楽しい演劇なのですが、レトロな感じで、ちょっとワザとらしい雰囲気があり、私は、ちょっと苦手な分野だったかな。それでも、とっても面白い内容だったので、楽しめましたよ。


明治時代は、まだ、自由恋愛なんて、まず無くて、親や親族が決めた結婚をする時代だったんですね。でも、この上流階級の方々は、本当の苦しみなど知らず、苦労を何もせずに育ってきてしまって、本だけの知識で頭が大きくなってしまって、恋愛を夢に見ていたのではないかと思うんです。だから、一度も会った事が無い人と結婚するなんて、納得出来ないと思っているんです。どこまでも、お坊ちゃん、お嬢ちゃんなんですよ。


黙阿弥

でも、家の都合もあるので、簡単に断るなんて出来ない事は解っていて、せめて、相手がどんな人間なのか、結婚を決める前に知りたいということで、自分の助手や女中と立場を入れ替えて、お見合いに出向くことにするんです。


ここで面白いのが、お見合いの席で会うのではなくて、その前に、ダンスの練習をする為の教室で、2人が出会ってしまうというところかな。入れ替わって、ダンスパーティーに行かなければいけないので、入れ替わった召使の方にダンスを教えてやって欲しいと、先生のところに入れ替わってくるのですが、男爵は、書生の久松を、お琴は、女中のお繁を連れてくるんです。4人は、教室でたまたま会ってしまい、お互いに入れ替わって紹介するんです。


どちらも入れ替わっているので、実際に結婚する2人が、召使状態になっているので、なんだか、上手く行きそうになるんですよ。だけど、お互いに、召使を好きになっちゃったらダメだよなぁと悩むんです。だって、相手も入れ替わっていることを知らないんですから。入れ替わりを知っているのは、大和座の座長と番頭だけ。最初は、2人とも楽しんでいるように見えるのですが、段々と、ヤバいような気がしてきたって感じになって行くんです。


黙阿弥

最後は、ちょっと切ない終わり方になるのですが、なんだか、そんなで良いのかな?って思ってしまいました。人に決められた結婚はイヤだけど、自分が選んだ人ならば良いんです。そんなところが、それまで守られて来た人間の典型だよなぁと思いました。そして、守られた中に居るのではなく、社会に出て、自分で生きて行くと断言するのですが、どう考えても、無理でしょって感じなんです。肩書が無ければ、社会は残酷です。自分に利益をもたらしてくれない人間を、誰が助けてくれるんだって事なんです。きっと、社会の残酷さを目にして、そそくさと、上流階級の家に戻って行くのでしょう。


”井の中の蛙”である彼らを、良く描いているなぁと思いました。さすが、井上ひさしさんの脚本です。楽しくて、面白くて、大笑いしながらも、恐さが浸透してくる感じと言うんでしょうか。現実が見えていない主人公たちの、マヌケだけど、可哀想な未来を思うと、何とも言えない気持ちになる作品でした。


黙阿弥

私は、この舞台、お薦めしたいと思います。面白かったです。愛之助さんも貫地谷さんも、無垢な上流階級の人って感じで、良かったですよ。それに対して、苦労をして、彼らに雇って貰った方の、真飛さんと早乙女さんは、顔の表情の中に、どこかしら、寂しい影を宿しているようで、それもまた良かったです。まだまだ、上演は続くので、ぜひ、お時間があったら、観に行ってみて下さい。東京が終わったら、大阪で上演です。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ




もとの黙阿弥  http://www.shochiku.co.jp/play/enbujyo/schedule/2015/8/post_210.php




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