【演劇】「藪原検校」盲人というだけで差別を受けた男が成り上がって行く様は恐ろしい。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

舞台「藪原検校」を観てきました。


ストーリーは、


ひとりの按摩が語る稀代の悪党藪原検校の一代記。

江戸時代中期、塩釜の地。悪党七兵衛は、醜女だが気立てのよいお志保を嫁にもらい一度は改心するが、お産の費用欲しさに行きずりの座頭を殺して金を奪う。産まれてきた赤ん坊は、醜男で悪党という両親の悪いところばかりを譲り受けたうえ、盲であった。幼くして琴の市という座頭に預けられたその子は、杉の市と名づけられる。


ある日、琴の市と杉の市が浄瑠璃を語っていると佐久間検校が現れて、当道座の掟に叛いたと難癖をつけ、稼いだ金を徴収しようとする。両者が言い争ううちに、杉の市は検校の結解を刺してしまう。身を隠す前に、別れを告げに実家に寄るが誤って母を刺し殺してしまう。かねてより師匠の女房お市と通じていた杉の市は、金銭目当てに、琴の市をお市に殺させるが、お市は返り討ちに遭ってしまう。一人になった杉の市は江戸へ向かう。そして・・・。後は舞台を観て下さいね。


というお話です。


藪原検校

親が犯した罪を一身に背負って、盲人として生まれた杉の市。性格も悪く器量も悪く、良いのは浄瑠璃語りだけ。それでも、杉の市は、頭が良かったので、上手く立ち回り、それなりに楽しく生きていたと思います。それでも、どんなに努力しても、盲人と言う事は変わらず、常人と一緒には扱われないので、いつも、その部分が引っかかっていて、常人と同じように扱って貰おうと思ったら、有名な「検校」という身分をお金で手に入れるしかないという事を知ります。

まず、金を手に入れるために師匠を殺し、江戸に向い、その旅の途中で、また人を殺して金を手に入れるという繰り返し。酷く、自分勝手で、残酷な男なのでした。そして、藪原検校のところに弟子入りし、金を貯めた杉の市=酉の市は、またも自分の師匠を殺し、その藪原検校という地位を買う事に成功します。

藪原検校

これで二代目の藪原検校となり、今後は常人と肩を並べて歩くことが出来る、いや、それ以上に優位に立てるはずだと考えていた杉の市ですが、そこへ、前の師匠である琴の市の妻のお市が現れ、自分と一緒になってくれなければ前の師匠殺しをバラすと脅され、お市を殺してしまいます。しかし、今度はその殺す所を人に見られてしまい、とうとう犯罪者として捕えられてしまいます。

藪原検校

その時代、世間が荒れていて、何か策を講じないと、このまま犯罪が増えて、もっと悪い世の中になってしまうと嘆いていた幕府老中の松平定信は、盲人であり友人の塙保己市を呼び、荒れた世を正すにはどうしたら良いかと聞くと、悪の権化として杉の市を殺す事で、世の中が引き締まり、正されるだろうと話します。そして、杉の市は、大勢の前で、見せしめとして残酷な方法で処刑されます。


この杉の市という男は、確かに、酷い悪党なんですけど、どこか可哀想なんですよ。観た目も悪いし、悪党だし、ハッキリ言って、良い所なんて無いのに、盲人というハンデを持って生まれてきて、普通の人と同等に生きて行きたいという渇望が、とても強くて、魅力的なんです。

藪原検校

確かに、盲人というと、どうしても常人とは違いますよね。今は、随分、盲人に優しい世の中になってきたけど、昔は、盲人が来ると不幸になるというような、そんな風に思われて、酷い仕打ちを受けたようです。だから、この杉の市は、何としても、人の上に立つような盲人になってやるという思いが強くて、人殺しや盗みも平気でやって、お金を手に入れていたんだと思います。


藪原検校

その願いは、解らないではありませんが、他人に害を与えて、社会に害を与えて、自分だけが良い立場になろうという考え方は、やはり社会に生きる人間としては間違っているんです。それも、人を殺してというのは、言語道断です。でも、やっぱり、ちょっと可哀想でした。どんなに酷い罪人でも、残酷なやり方で死刑になるというのは、どうなんだろう。見せしめとしてやったのだと思うけど、いくらなんでもって言うほど、酷い殺し方でした。今だったら、人権があるから、これはダメだよねぇ~。


結局、彼の人生はなんだったんだろう。必死で、常人と同じように生きたいと願い、なりふり構わず生きてきて、社会の為に抹殺される。最後の最後で、常人への見せしめとなることで、誰よりも上に登り詰めるって、神様は残酷な事をするもんです。

藪原検校

杉の市は、必死で生きている自分が好きだったのかも知れない。なりふり構わず、他人に害を与えても、上に登る為に必死で生きる自分が。だから、登る事を止められたら、生きる意味が無かったから、死刑になっても、別に、何も感じていなかったのかも知れません。彼には、それまでの必死な人生が大きな財産だったのかも。私は、そう思いたいな。

私は、この舞台、お勧めしたいと思います。子供には、ちょっと深すぎる内容なので、あまりお勧めは出来ませんが、大人なら、この男の人生が解ると思います。ぜひ、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ



P.S : スミマセン、またも写真をチケットサイトなどからお借りしてしまいました。もし、問題があるようでしたら、直ぐに消去いたしますので、ご指摘ください。よろしくお願いいたします。m(__)m



「藪原検校」    http://setagaya-pt.jp/theater_info/2015/02/post_385.html


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