「繕い裁つ人」の試写会に行ってきました。完成披露試写会だったので、中谷さん、三浦さん、片桐さん、黒木さん、杉咲さん、中尾さん、伊武さん、そして監督が登壇し、ご挨拶をしてくださいました。特別な洋服を着て、舞台挨拶に挑んでくださったようで、中谷さんの着ていた洋服は、公式サイトでプレゼントされるそうです。皆さん、チェックしてみて下さいね。
ストーリーは、
市江(中谷美紀)は祖母が始めた洋裁店を継ぎ、町の仕立て屋の2代目店主として日々年季の入ったミシンの前に座っている。彼女が職人技を駆使して丁寧に仕立てる洋服は、依頼人たちを喜ばせていた。職人気質の市江はブランド化の依頼にも目もくれず、その服に袖を通すたった一人のためだけのオーダーメイド服を縫うだけで幸せだったが……。
というお話です。
頑固ジジイと呼ばれるほど、自分の意志を曲げない市江は、祖母が始めた洋裁店を継ぎ、そのデザインも継承し、一人、じっくりと洋服を繕い、縫っていました。そんな彼女が作る洋服は、デザインも良く、着る人のことを考えたものになっており、喜ばれていたのですが、全て1点もの。一人で作っているため、大量生産は出来ないんです。市江は、お客様の顔が見える洋服を作る事にこだわっているので、それで十分だったのですが、百貨店勤務の営業の藤井は、ぜひ、その洋服をプレタポルテ(高級既製服)として、売ってみないかと市江を訪ねてきます。
藤井の話に、全く耳を傾けない市江は、自分のスタイルを貫き、一人、黙々と洋裁店で、来るお客様の洋服を直し、仕立て、喜んでいただける服を提供していました。そんな市江を、なんとか振り向かせようと、毎日毎日、南洋裁店に通い詰める藤井は、きっと、市江も、自分のデザインで、自分の提供する服を発表したいはずだと思っていました。
市江は、洋裁については、完璧をめざし、素晴らしい仕事をするのですが、普段の生活は、からきしダメ。お茶も入れられないほどに、何も出来ないんです。とっても不器用な彼女は、生き方も、とても不器用。自分の気持ちを人に伝える事が下手で、限られた人との繋がりばかりが増えて行ってしまいます。そんな彼女に、外に開いた方が良いというのが藤井で、市江は、自分の殻を破りたいのか、祖母の店を守りたいのか、考え始めます。しかし・・・。後は、映画を観て下さいね。
祖母が残した伝統を引き継ぐことは大切だと思うけど、同じことを続けるだけで、新しいことを産みださないのは、やっぱり、ちょっと寂しいのではないかと思いました。きっと、お婆さんだって、市江が古い事ばかりを大切にして、前に進もうとしなければ、やっぱり悲しむと思うんですよね。古いものは古いもので大切にして、それに何かを足したり、引いたりして、市江のオリジナルを産みだすことは、別に、お婆さんを冒涜している訳ではないんですよね。きっと、市江もそれに気が付いて、これから、きっと、新しい道を見つけて行くのだと思います。

百貨店の営業の藤井は、ちょっとやりすぎかなって思うほどでした。これほど熱心な営業って、イマドキ見たことが無いけど、それほど洋服が好きなんでしょうね。とても面白い人物だと思いました。あまり、映画とかで、普通のサラリーマンの営業を描いている事って無いので、何となく新鮮な気持ちがしました。
考えてみると、会社員は、どの映画にも出てくるけど、その仕事や裏の姿などをしっかり描いている事って無いんですよね。描かれているのは、いつも、仕事終わりに飲み屋で愚痴っている姿か、営業先で文句を言われている場面くらいしか無くて、今回の藤井のように、その仕事が好きで、地道に通って、相手と交渉して行く姿は見たことが無かったと思います。楽しいですよ。

市江を取り巻く人々は、本当に普通の人々。普通のサラリーマン家庭だったり、商店街のお店をやっている人だったり、いつもは、化粧もせず、おしゃれもしないで、必死に働いている人が、南洋裁店で作った洋服を着て、一夜の夢のような世界を楽しむ姿が、とてもステキだなと思いました。こういう店があったら良いですね。1着だけ、その人に合わせたオートクチュールを、一生慈しんで着るというのは、ステキだなと思いました。そんな洋服、1着は持ちたいですね。

私は、この映画、お勧めしたいと思います。とても静かで、ちょっと笑えて、プロのこだわりと言うものを見せてくれます。プロなら、”これでイイか。”と終えてしまうのではなく、”これが良いのだ。”と自信を持って、お客様に手渡せるものを創るのが、仕事ですよね。今、そういう人を見ることが、ほとんど無くなりました。出来れば、プロのプライドを思い出して、今一度、やり直して欲しいと思う、今日この頃です。とっても、柔らかい気持ちになれる内容ですので、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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