「リアリティのダンス」を観てきました。
ストーリーは、
1920年代、軍事政権がはびこるチリの小さな村トコピージャ。アレハンドロ(イェレミアス・ハースコヴィッツ)は高圧的な父ハイメ(ブロンティス・ホドロフスキー)と、息子を自分の父親の生まれ変わりだと信じる母サラ(パメラ・フローレス)と一緒に生活していた。一方学校では、ロシア系ユダヤ人であることからいじめられていた。
というお話です。
ホドロフスキー監督の自伝とも言うべき作品なのかな。彼の両親が辿った、不思議な歴史を描いているのだと思います。もちろん、フィクションの部分が大きいだろうけど、子供の彼の目には、こんな風に映っていたのでしょうね。子供の頃に、こんな経験をしていたら、そりゃ、彼の中の宇宙は、どんどん膨らんで、不思議な世界を構成するでしょうね。リアルな現実が、まるでサーカスの中に居るような気持ちにさせる状態だったのだと思える内容でした。
アレハンドロの父親ハイメは、とっても強い父親で、家族は父親に従うものだと思っているような人でした。日本で言う、亭主関白な男って感じかな。だから、母親は、従順な妻に見えるのですが、実は、ファザーコンプレックスで、自分の父親の生まれ変わりが自分の息子なのだと思いこもうとしていて、息子に金髪のかつらをかぶせたりして、これも一種の虐待ですよね。全てを観てみると、この家族は、表向きは父親が全ての実権を握っているように見えて、本当は、母親が全てを握っていて、家の商売も成功しているのかなと思いました。
ハイメは、共産主義者であり、軍事政権への報復を仲間と暗躍しています。なんとか、チリの独裁者を殺して、共産主義の確立が出来ないものかと計画を練っていて、ある日、ハイメは、独裁者が大切にしているものを見つけ、それを利用して、独裁者を倒してやろうと行動を始めます。まるで、コメディのようなんだけど、彼らは真剣にやっていて、リアルって、まるでブサイクなダンスをしているようだなと思えるんです。
神を信じていなかったハイメは、独裁者を倒す為に家を出て、沢山の場所を周り、色々な経験をする内に、自分が、神の手の上で踊っているだけなのではないかと言う事に気が付くんです。家の中で独裁者だったハイメは、障害者に対して、酷い差別を行っていたのですが、独裁者を倒す旅に出て、ある事により、手が使えなくなり、今度は自分が差別を受ける側に立ってしまいます。そんな彼に対して、周りの人間は優しく、援助の手を差し伸べてくれて、神の大きな愛に気が付きます。

宗教がどーのこーのと言うのではなく、神という不思議な存在が、確かにあるのだと気が付いたのだと思います。不思議な巡り合わせで、沢山の経験をして、最後に家に帰り着くことが出来るというのは、やっぱり、何かしらの意思が働いていて、自分を導いてくれたとハイメは感じたのだと思いました。
実は、私、ホドロフスキー監督の作品って、これが初めてなんです。「DUNE~」は、ドキュメンタリーですからね。だから、とても戸惑いました。滑稽に見える現実が、とてもぎこちなく見えて、どう解釈して良いのか、最初は、解らなかったんです。最後まで観て行くと、何とか、こういう作風なのだと受け入れる事が出来て、理解出来るのですが、これ、マニアの方には喜ばれるのだと思うけど、普通の映画として観ようとすると、辛いだろうと思いました。
だって、最初から、不思議な世界の住人達を描いているように見えるんですから。本当は、普通の世界の普通の人間を描いているのですが、描き方によって、まるでSFか、コメディのように思えて、受け容れにくいんです。このホドロフスキーという監督の、独特な描き方なんだろうけど、それに慣れるまでは、辛かったなぁ。
そんな不思議な世界で育ち、映画監督となった彼だからこそ、こんな映画が撮れるのだろうけど、なんだか、とっても不思議な気持ちになりました。面白い映画なんだけど、万人受けはする映画では無いと思います。マニア受けする映画ではありますけどね。
私は、マニアの方にはお勧めするけど、一般の方にはお勧め出来ません。観ていて、とても違和感を覚えると思います。そうそう、漫画家で「高橋葉介」さんという方がいらっしゃるのですが、彼の漫画の「クレイジーピエロ」的な感じかな。とても残酷で、ちょっとエロいんですけど、でも、それが、面白くて笑ってしまうような、そんな感じかな。世界が似ていると思いました。もう一つが、アカデミー外国語賞を貰った「ブリキの太鼓」っぽい感じもありました。もし、気になったら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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