もうすぐトム・クルーズ主演で公開される「All You Need Is Kill」の原作を読みました。
あらすじは、
異星人が地球に送りこんだナノマシンは、環境を改造し、異星人が住みやすい世界へと改造をする。そのナノマシンは地球の生物に潜り込み、共生関係を結び、大量増殖した。その「ギタイ」と呼ばれる異星人の先遣隊の襲撃を受ける地球。世界各国でギタイの侵略が進みつつあった。主人公キリヤ・ケイジは、ギタイと戦う統合防疫軍に初年兵として入隊する。そこで、圧倒的な戦闘力を持っている若き少女兵士リタ・ヴラタスキと出会う。ある日、キリヤは初出撃で死亡するが、なぜか意識を取り戻すと「出撃前日の朝に戻っている」という怪現象に見舞われ、それが幾度も繰り返される。生と死を繰り返す中、「記憶だけが蓄積される」ことを知ったキリヤは、ギタイを倒すために、その能力を活かして経験を積み重ねる。
というお話です。

何度も繰り返される、同じ時間での「ギタイ」との闘い。何度繰り返しても、「ギタイ」を倒す事が出来ず、そのループから逃れる事も出来ないんです。毎回、同じ場面から始まるのですが、自分の行動を変えて行くことで、段々と良い方向に変わって行くところが、面白いと思いました。
そして、戦闘は、何度も繰り返す度に上手くなって行くので、初年兵なのに、既に、150回以上も戦闘を潜ってきた古参兵と同じレベルに達していて、その考え方が面白いなと思いました。もちろん、同じ場面に戻るのですから、筋肉が増強されていたりするわけではありません。技術のみ、向上して行くのです。とてもリアルでしょ。意識だけ飛んでいるので、脳で考える反射神経などは向上していますが、身体自体は変わらないんです。上手いなと思いました。
「ギタイ」の設定も、良く考えられているなと思いました。異星人が攻めてくるのではなく、異星人が先遣隊として送り込むナノマシンが、まず環境を整えて、異星人が、おっとり来訪するというのが、とてもあり得そうなんです。だって、自分たちに犠牲を出さずに、新しい星に移住しようと思ったら、このやり方が一番効率的ですよね。
それに対し、地球は、宇宙から落ちて来たものを国同士で争ったりしていて、その後、何が起こるかなんて、全く想像していないというのが、とてもあり得そうだなと思いました。今の中国やロシアなら、やりますよね。何でも、自分のもんだって主張すれば通ると思って、下品すぎます。そんな皮肉も込めながら、このナノマシンが落ちてきた時の状況を描いていたりして、ここら辺も上手いと思いました。
この話の中心は、人間を細かく描いている所かな。主人公や、周りの人間の描き方が、とても魅了的で、読みやすくて、どんどん、先を読みたくなります。そして、一番の読みどころは、リタとキリヤの絡みですかね。この2人は、たった2日しか一緒に居ないし、初めての出会いのハズなのに、既に、キリヤの中では、何度も繰り返されている事であり、リタも、それを解っているんです。この世界で、そのループを理解しているのは2人だけ。2人の強い絆となります。
最後は、とても切ない話でした。でも、この終わり方が最良だったのかなと思います。あまりに簡単にループを抜け出せても面白くないし、「ギタイ」を簡単に倒しちゃっても面白くないし、全てが円満にもどるハッピーエンドも物足りないだろうし、それから行くと、私は、とても満足の出来る終わり方でした。
とても読みやすくて、読み始めると集中してしまうので、楽しめる本だと思いますよ。これを、ハリウッドが、どんな風に映画化したのか、楽しみです。原作と違ったら、面白くないだろうなぁ。まして、トムちゃんのミッションインポッシブル的な映画になっていたら、この小説とは、全く変わってしまうので、最悪だろうなと心配しています。この小説の苦しくて、努力して、切なくてというところを、そのまま映像化していてくれることを願っています。
ダグ・リーマン監督のインタビューを読むと、主人公のキャラクターをトム・クルーズに合わせて、その設定などを随分変えているとは書いてあるけど、内容については、時代を現代から8年後と設定している以外、きっと、それ程、変わらないのではないかなぁと期待しています。トムちゃんが、ヘタレ兵士から、スーパー兵士に変わるなら、原作と同じだもんね。
もし、お時間があったら、ぜひ、映画を観る前に読んでみては如何ですか?映画を観た後でも、その比較をする為に、読んでみても面白いかも知れませんね。私は、この小説、面白いので、お勧めですよ。
ぜひ、楽しんでくださいね。
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