英国ロイヤル・ナショナル・シアターライブ「コリオレイナス」を観てきました。舞台を映画にまとめたもので、日本で言う劇シネです。
ストーリーは、
ローマで高名な将軍であるケイアス・マーシアスが、貧民たちに穀物の支給をする事に反対したため、貧民は憤っていた。その時、ヴォルサイ人との闘いが始まり、マーシアスの力に頼り、ローマを侵略から守ることが出来たのだが、護民官に罵られた事をきっかけに、またも民衆に背を向けられ、反逆罪で告発されて、ローマを追放となる。
ヴォルサイ人の将軍タラス・オーフィディアスはマーシアスとたびたび戦い、彼を仇敵としてみなしていたのだが、マーシアスの現状を見て、自分の副将として迎え入れ、ローマへの侵攻を始める。マーシアスの采配は的を得ていて、勝利を繰り返し、あと一息でローマを倒すというところで、マーシアスの母と妻、子にローマの存続を懇願され、マーシアスは独断でローマとの和平を結んでしまい、オーフィディアスに裏切り者として暗殺される。
というお話です。
この「コリオレイナス」というシェイクスピアのお話、私、読んだことがありませんでした。こういう話だったんですね。先日観た、”劇団新感線”の舞台「蒼の乱」は、この話を元にしてあるのかな。将門の役は、まさにコリオレイナスと同じ動きをしていました。知らなかったなぁ。マジで、シェイクスピアを、一度、全作品制覇しないとダメだな。面白いと思う話の元が、ほとんどシェイクスピアってところに驚いてしまいます。全ての根源ですね。
コリオレイナスは、とても有能な指揮官であったと思うのですが、その力に溺れてしまい、ローマというものが、自分たち兵士たちだけで成り立っているような気持ちになってしまったのかなと思いました。ローマを構成しているのは、兵士だけでは無く、人民が居るからこそ、ローマが成り立っているということが理解出来ていないんです。だからこそ、貧民には食べ物を支給する必要は無いと思ったんじゃないのかな。それは、傲慢ですよ。だから、民衆に反感を買い、ローマの為に戦っていたにも関わらず、背を向けられてしまう。

普通なら、そこで、やっぱり自分が悪かったと考え直して、和解するんだろうけど、そういう事が出来ない人なんですよね。どうしても、自分が譲歩する事が出来ないという姿は、日本の侍の姿に似ているかなと思いました。とっても不器用な生き方だけど、それもまた、良いのかも。自分の正しいと思う事を曲げないという生き方も、潔くて良いなと思いました。
でも、その後に、ローマに復讐するために、敵に近づくというところは、とても人間らしい姿かなと思いました。だって、やられたらやり返すという姿は、人間の本来あるべき姿でしょ。キリストのように、右の頬を打たれたら左の頬を出すなんて、人間ならあり得ないですもん。それは、生というものに、全く執着が無い生き物ですよ。人間という生き物には、煩悩もあり、欲望もあり、生きる希望もある。だからこそ、復讐という思いも出てくるのだと思います。決して、復讐全てが悪いとは、私は思えません。
シェイクスピアの話を追って行くと、本当に、人間って面白いと感じますね。どのキャラクターの動きを見ても、全てが理に適っていて、自分がその立場にいれば、そう行動するだろうという事ばかりで、驚いてしまいます。その部分、その部分で、全ての人間を自分が演じているような、全ての人格に自分が入っているような、そんな感覚で楽しむことが出来ます。
このコリオレイナスも、いつも自分の考えだけが正しいと思って行動しているけど、最後には、人の話を聞き、考えを変えて行く姿は、この世界を構成しているのは、自分では無いと理解出来たからなのかなと思いました。
トム・ヒドルストンさんのコリオレイナス、超カッコ良かったなぁ。コリオレイナスのイメージとしては、もう少しごっつい感じの男性を想像したけど、トムさんのコリオレイナスは、とても神経質そうで、考えを曲げないような姿は、ピッタリだと思いました。頑張って、戦争に勝利して来たのに、人々に受け入れられないという虚しさが良く出ていたと思います。彼は、大振りな仕草はしないのですが、顔とちょっとした目配りや、神経質そうな視線で、その苛立ちや、悲しさ、苦しさを表していて、やっぱり、映画などで目を引く人は、舞台などで、しっかりとした演技を身に着けて来ているんだなぁと思いました。
他の役者さんたちも、映画などで観る方が多かったのですが、名前を忘れてしまいました。とにかく、この「ナショナル・シアター・ライブ」は、パンフレットも無いし、情報も少ないので、映画館で観た時のものを、忘れずに持ってくるしかなくて、あまり詳しい解説が出来なくてスミマセン。
このライブ、私は、超お勧めなんですけど、これって、DVDとかで発売するのかな。映画館では、上映日と回数が本当に少しだけだし、料金は高いし、一般の人にお勧めできるかというと、難しいのですが、内容は、とっても良いので、ぜひ、観て欲しいと思います。
ぜひ、楽しんでくださいね。
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