「大統領の執事の涙」を観てきました。
ストーリーは、
綿花畑で働く奴隷の息子に生まれた黒人、セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)。ホテルのボーイとなって懸命に働き、ホワイトハウスの執事へと抜てきされる。アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、フォードなど、歴代の大統領に仕えながら、キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争といったアメリカの国家的大局を目の当たりにしてきたセシル。その一方で、白人の従者である父親を恥じる長男との衝突をはじめ、彼とその家族もさまざまな荒波にもまれる。
というお話です。
感動で、何度も涙がうるうるしてしまいました。現代では、黒人の大統領が初めて就任し、その手腕を問われて、色々なニュースになっていますよね。でも、ほんの少し前には、黒人は人間としても扱われずに、家畜同様の扱いを受けて、その命は、毎日のように白人に脅かされていたんです。日本が、戦後の復興をして、昭和を走り抜けたと同じように、黒人たちは、自分たちを人間として認めさせる為に、沢山の戦いをしてきたんです。
主人公のセシルは、農園に生まれ、その雇い主の奴隷として働いていました。理不尽な理由で、父は殺され、母も正気を保てなくなり、悲しみに暮れる中、その農園の老婦人が、給仕の仕事を与えてくれて、執事としての基礎を学んでいきます。しかし、セシルは農園の主人から良く思われておらず、いつの日か殺されると思い、農園を逃げ出して、都会へと旅立ちます。
都会へ出てきても、何の仕事も無く、途方に暮れていた時に、ある黒人執事に拾われ、ホテルの給仕の仕事に付くことになります。そこで認められ、ランクの高いホテルに移り、とうとうホワイトハウスの執事の職jを得る事になります。ここまでのお話は、結構、調子いいなぁって感じなのですが、実話に基づく話なので、不思議な縁があって、ホワイトハウスにたどり着いたのでしょうね。凄いです。
セシルがホワイトハウスまで上り詰める間に、社会では、黒人の人権が叫ばれ始めました。人間として扱われていない黒人が、とうとう、反旗を翻し始めたんです。アイゼンハワーの執事として働き始めたセシルには、既に、妻も2人の子供も居て、ワシントンに暮らしていたので、それ程、差別のようなものは受けていなかったようです。でも、アメリカ全土では、黒人が白人と対当の権利を主張し始めて、沢山の内乱が起きていました。この頃、有名な”K・K・K”(クークラックスクラン)が現れ、黒人を迫害し、惨殺をするなどの事件が起きていました。
ケネディに仕えた時は、ケネディが黒人の苦難に気が付き、改革を始めた途端、暗殺されてしまいます。悲しい別れを経て、ジョンソンの執事としての仕事が始まります。このように、黒人の目から見ている大統領の動きというのは、とても面白いと思いました。どの大統領も、黒人と白人を対当にするべきなんだろうと動き出すのですが、ことごとく、白人の利権を重要視する人々に左右されて行くのだと言う事が判ります。

大統領も人の子なので、選挙で自分に票を入れてくれる人に有利になるような政策を取らざるを得ないですよね。黒人に投票権が与えられても、投票所に黒人を入れないなどの妨害がある以上、自分が2期、大統領をやる為には、仕方の無いことなのだと思いました。正しい判断をしたくても出来ないという大統領の苦悩も、とても良く描かれていて、一つの国をまとめる苦労と言うものが良く解ります。日本なんて、黄色い人しかいないのに、こんなにまとまらないんですもんね。2種類の種族が居たら、そりゃ、荒れますよ。
でもね、大統領が変わる度、少しづつ、黒人の権利が認められて、現代に近づいていきます。キング牧師、マルコムX、ガンジー、そして、南アフリカのアパルトヘイトを無くす為に戦ったマンデラなど、どの大統領の時代に、どの人が関わっていたかと言う事も、解りやすく描かれていて、とてもアメリカの歴史の勉強になりました。

セシルの長男は、黒人の独立の為に、反乱に加わったりするという、白人に対して、表立った戦いをするのですが、セシルは、静かに、大統領に仕えながら、戦っているんです。それは、動と静というまるで反対の戦い方なのですが、親子どちらもが、黒人の自由を勝ち取る為に戦っているんです。それが、とても心に響いてきて、感動します。黒人の苦しみ、悲しみを押し殺して、白人に仕えたセシルは、素晴らしい戦士だったと思います。
この映画、白人には、それほど受け入れられないんじゃないのかな。正しい歴史としても、やった方としては、直視したくないでしょ。今だって、まだ、黒人を差別している地域が残っているアメリカで、全てが受け入れられるのは難しそう。オバマ大統領が就任した時、本当に黒人の人権が認められたと印象付けられましたが、それでも無くならない心の闇は、アメリカに、まだ巣食っているような気がします。
私は、この映画、超お勧めしたい映画です。本当に、良い映画です。感動すると思います。そして、アメリカの闇も、しっかり描かれているので、凄いなって思いました。自分たちが見たくない部分も直視しているところが、素晴らしいと思います。こういうところは、成長した民族として尊敬出来るなと思いました。ぜひ観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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