TIFFワールドフォーカス「トム・アット・ザ・ファーム」を観ました。TIFF10作目です。
ストーリーは、
亡くなった友人の実家の農場を訪れたトム。友人の母親は、亡くなった友人の話を聞きたがり友好的なのだが、友人の兄フランシスはとても不機嫌で、トムを歓迎していなかった。そこには、母親には知らせたくない真実があり、トムがお葬式で問題になるようなスピーチをしないようにさせる為だった。トムは葬式でのスピーチを辞めて、帰路に付こうとするのだが、何故かフランシスは残る事を強要し、暴力で引き止めようとする。そして・・・。
というお話です。

友達のお葬式に参列するのに、そんなに考えて行く事って無いですよね。もちろん、トムも、何も考えずに、友達を弔うためにお葬式に向かいます。とても田舎で、携帯の電波も来ていないほどの地域。友達を訪ねると、上品そうな母親が居て、亡くなった息子の事をとても悲しんでいるんです。トムは自分が知っている友達の話をして、打ち解けていたところ、友人に兄が居るということを知ります。
この兄フランシスが、とっても残酷な人で、何故、初対面のトムに、そんな酷い事をするのかと思うほど、脅して暴力を振るって、トムをほとんど監禁状態にします。もう、観ていて、超酷いのよ。この男、絶対に変態よって思うような人なんです。

フランシスは、最初から暴力的ではあったけど、小さな町で面倒が起きると、家族が暮らして行くのに困るからという理由で、トムに当たっていたと思うんですね。だから、早く追い出そうとしているんですが、段々と時間が経つにつれ、トムを自分の所有物のように、そばに置いておこうとするんです。恐ろしいでしょ。
あまり書くとネタバレになってしまうから書けないんだけど、まず、トムと友達の関係がどうだったのかという事と、兄と弟の関係も問題になってくるんです。小さな町だからこそ、噂の広がりは早く、変な噂でも立ったなら、その町に住めなくなります。だからこそ、フランシスは、家族を守る為に、トムに葬式での態度やスピーチなどを強制したのだと思います。

但し、葬式後のフランシスの態度は、トムに自分の弟の姿を重ねて、自分のそばに置きたいという気持ちにかられたのではないかと思います。フランシスの弟への気持ちは、映画を観ていただければ解ると思います。そこには、深い愛があって、それが狂喜へと変わって行ってしまったのだと思います。
とても特殊な愛情の表現の仕方だと思うのですが、フランシスはフランシスなりに、弟=トムを愛していたのだと思います。でも、普通とは違っていたので、トムは恐怖を覚えて、なんとか逃げなくてはと思うのですが、何度も捕まり暴力を受けて、暴力の後に優しくされるという事を繰り返すので、何故か、離れる事に罪悪感を覚えたりして、微妙なんです。これ、DV夫から逃げられない妻と一緒です。

そんな日々を繰り返し、トムはその場所から逃げる事が出来るのか。そして、フランシスと母親はどうなっていくのか。残虐な暴力や、スプラッター系のものはありませんが、その迫ってくる恐怖とか、逃げられない恐怖がすごい作品でした。

これ、日本上映してくれるかなぁ。私、あまり上手く感想が書けなかったけど、内容はとても良い作品だと思います。十分、観客も入ると思うような内容だと思うんですけどね。もし、公開されたら、ぜひ、観てみて下さい。その迫りくる恐怖と愛情の描き方が面白いです。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
東京国際映画祭 ワールドフォーカス 「トム・アット・ザ・ファーム」
http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/lineup/works.php?id=W0004