フランス映画祭、1作目は、フランソワ・オゾン監督の「In the House」です。
ストーリーは、
かつて作家を志していたジェルマンは、今は高校で国語の教師をしていた。凡庸な生徒たちの作文の採点に辟易していたとき、才気あふれるクロードの文章に心をつかまれる。それは、あるクラスメイトとその家族を皮肉な視点で綴ったものだが、羨望とも嫉妬ともつかない感情に満ちた文章に、ジェルマンは危険を感じ取りながらも文章の才能に魅せられ、クロードに小説の書き方を手ほどきしていく。やがて才能を開花させたクロードの書く文章は、次第にエスカレートして行き・・・。若き作家と教師の個人授業は、いつしか息詰まる心理戦に変わっていく。
というお話です。
教師のジェルマンは、小説家を目指してたんですけど才能が無くて、教師の仕事をしているんです。安定した仕事に不満はないけど、ヤル気の無い生徒にうんざりしていたのですが、その中に、一人、文章力が抜群に良い生徒を見つけます。
クロードという生徒は、自分が経験したことを文章に書いているのですが、とても写実的で、ジェルマンさえ、夢中になってしまうほど面白いんです。文章の宿題を出して、クロードの文章を読むたびに、どんどん、話の先が読みたくなってくる。本当に、文章の天才なんです。彼は、興味を持った友達に数学を教えるという名目で、友達の家に訪問します。友達は一人っ子で、スポーツ好きな力強い父親と美しい母を持っていて、クロードは、その家族すべてに興味を持ち、観察し続けます。
そんな彼の文章を、ジェルマンは、自宅で妻と読んで、ワクワクしているのですが、自分の仕事にばかり夢中になり、妻に対しての興味は全く無くなり、本人は気付いていないけど、夫婦仲は、冷たい状態になっていきます。もちろん、妻は、ムカつきますもんね。
そして、教師の仕事の方も、クロードとの文章の交換を続けている中で、ある事件を起こしてしまい、上手く行かなくなっていきます。
教師をやっていれば、お気に入りの生徒が出来るのは当たり前だと思うけど、あから様にヒイキするのはどうかなぁ。個人授業とかは、確実にヒイキだと思うんだけど、でも、まぁ、それが出来ないと、話が始まらないから、仕方ないか。(笑)
クロードは、天使のような顔をして、天使のささやきで、ジェルマンから何もかも奪ってしまう、まるで悪魔のような生徒なんです。そこに、悪気は無いし、彼の天才であるが故の罪だと思うんだけど、でも、悪気が無い分、怖ろしいですよね。天才って恐い。
クロード側から見ると、素直に見たまま、感じたままを、文章にして、喜んでくれる人の顔を見たいだけ。だけど、無垢な悪魔が、そこに住んでいるんです。
最後まで見て、ジェルマンは悪魔に魅入られたのかしらと思ったのですが、少し時間が経ってから考えると、もしかして、ジェルマンは、幸せを手に入れたのかもしれないと思いました。思い通りの仕事ではなく、興味の無い妻に気を使う毎日から、クロードのおかげで、好きな小説の世界だけに入り込めたのだから、もしかしたら・・・と思いました。
とても考えさせられる映画です。そして、とても美しい映画だと思います。オゾン監督の作品は、美しいんですよね。
私は、この映画、とてもお薦めしたいと思いますが、フランス映画で静かなヒューマンドラマなので、その系統の映画が好きな方にお薦めします。
今年の秋に公開予定ですので、お楽しみにね。(*^。^*)
日常の風景が、どんどん変わっていく様を、楽しんできて下さいね。