「二流小説家 シリアリスト」を観てきました。
ストーリーは、
ある日、小説家としてぱっとしない赤羽一兵(上川隆也)は、死刑が確定している連続殺人犯の呉井大悟から告白本の執筆を依頼される。彼はそのチャンスに飛び付き、呉井に面会に行くと、彼を主人公にした小説を書くという条件を提示される。赤羽は、ふに落ちないながらもOKし、3人の女性たちに取材をするのだが、行く先々で殺人事件が発生し……。
というお話です。
これ、原作は面白いはずだし、映画だって、ストーリーは良いと思いんです。でも、これを、何故、日本を舞台に、日本で製作したのかしら。この猟奇殺人、アメリカが舞台なら、結構、生々しくて、ありえる話だし、もっと、美しかったと思うんです。でも、日本が舞台だと、美しくないんですよ。
連続殺人事件が起きて、首無し死体がバラの花びらで飾られているのですが、これ、西洋風の大きなベッドや、広い部屋で、豪華なカーテンが掛かる窓があり、現代アートが飾られている部屋なら、美しくて似合うと思うんです。あの「アメリカンビューティー」の映像のように、幻想的で、美の象徴のように描けると思うんですけど、日本の家屋が舞台だと、狭いし、なんか、貧乏臭いんですよね。ゴージャスじゃないの。だから、犯人が、美が、芸術が、と言っても、全然、現実味が無いんです。
俳優は素晴らしい人をそろえているし、内容も良いのに、バランスが悪いんです。死体も、白人女性で、ゴージャスなドレスが似合うなら良いのに、日本人顔でドレスって言われても、コスプレ?くらいにしか思えないでしょ。勿体無いよなぁ。なんたって、呉井(武田さん)の過去が描かれる場面で、親子が海辺を歩いているんですけど、どう観ても、「砂の器」にしか観えないのよぉ~。これ、海外の海だったら、これほど暗くならないと思うんだけどね。
話の内容は、「セブン」とか「ボーン・コレクター」に近いお話なので、面白くない訳ないでしょ。その怖ろしい話に、オイディプスの話が入れ込まれていて、血というものが、より濃く描かれていると思います。美しいけど、その愛には、血が付きまとうと感じですね。何故、身体から首をとっているのか。首が大切なのか、身体が大切なのか、そこら辺も、とっても深くて面白いです。犯人は、本当は、誰の血を見たかったのか、それを追っていくお話です。
上川さん演じる小説家は、小説を書いても売れずに、自分に自信が無くて、いきなり、大きな仕事を任されて戸惑っているんですが、命を狙われたりして、どんどん成長せざるを得なくなり、自信を持ち、頭脳を駆使するようになっていきます。上川さんは、もともと頭が良さそうに見えるので、もっと弱そうな人の方が、良かったのかも知れません。でも、上川さんは上手いので、その成長を上手く演じて下さっていましたけど、しんどかったんじゃないかなぁ。
武田さん、美しかったです。身体を鍛えているのは、舞台を観て、知っていましたが、あれほど素晴らしい筋肉とは・・・。あの甘いマスクに、あの身体は、すごいです。観ていて、触りたくなりました。このシリアルキラーという役にはピッタリだと思います。でも、舞台が、日本だとねぇ~。勿体無いなぁ~。
この映画、内容は面白くてお薦めだし、俳優も一流で上手いのでお薦めなのですが、舞台が、この内容に付いて行けてないように思うので、私は、お薦めして良いのか、悩んでしまいました。この話は、とても好きな部類で、何度も逆転したりするところに、ドキドキして楽しめるのですが、映像と合わせて観ると、どーも、違和感があるんです。まして、母親へのオイディプス系の思いが入っているので、畳とか瓦とか、もんぺとかが出てきちゃうと、美しいものが、嫌らしいイメージになってしまうのよ~。悲しいです。
でも、面白い話なので、ぜひ、楽しんできて下さいね。
・二流小説家-シリアリスト-@ぴあ映画生活