「声をかくす人」 国を成立する途中には犠牲が何人も出るけど、犠牲にされた人間の立場は。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

「声をかくす人」を観ました。この映画、すごく観たかったのに、神奈川では上映していなくて、ジャック&ベティに上映して欲しいなってツイートしておいたら、既に上映してくれる予定だったのか、直ぐに上映が決まりました。本当に嬉しかったです。


ストーリーは、

南北戦争終結から間もない1865年のワシントンで、アメリカ合衆国大統領リンカーンが暗殺される。すぐさま犯行グループは拘束され、その一人として下宿屋を営む南部出身のメアリー・サラット(ロビン・ライト)も捕らえられる。罪状は犯行グループへのアジト提供であったが、彼女は一貫して無実を主張。メアリーの担当弁護士を引き受けることになったフレデリック(ジェームズ・マカヴォイ)は、北軍の英雄であったこともあって彼女と向き合うことに抵抗を覚えるが、実際に無実で何かの事情から自身を捧げようとしているのではと考える。
というお話です。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-声をかくす人

今から150年前、リンカーンの奴隷解放宣言があり、南北戦争も終結に近づいていました。1865年に事実上の南北戦争が終結し、リンカーンは、演劇を観ながらくつろいでいた所に、南部に属する役者のブースがリンカーンを暗殺。その時に手を貸したとされるメアリー・サラットという下宿屋の女性が共犯者として逮捕されます。

ハッキリ言って、言いがかりとしか言えない様な理由なんですけど、何故か、誰も文句を言うものも無く、投獄されてしまいます。このアメリカの混乱期に、リンカーン大統領という大黒柱を失ってしまった北部アメリカには、何か、全員で向かうものが必要で、その復讐の矛先として、逮捕された何人もの男性と、メアリーという女性一人を犠牲にすることで、なんとか、まとまりを持たせ、建国を成して、国としての歩みを始めようということなんです。

この映画は、とても難しいと思いました。それぞれの立場に立つと、誰もが間違っていないんですね。

メアリーは旅館の女主人で、客として止まりに来た男性に部屋を貸しただけ。その部屋で何をしようと、文句をいう権利はありませんよね。私達だって、ホテルで部屋を借りて、部屋で宴会をしようと、文句を言われる筋合いはありません。もちろん、超うるさかったりして、迷惑をかければ別ですが、静かに話しをしている分には、文句は言えません。もし、客に犯罪者が居て、泊めただけで罪になるなら、ホテルなんてやってられませんよね。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-声をかくす人

次に、弁護士であるフレデリック。彼は、陸軍兵士で大怪我をした経験もあり、リンカーンを暗殺した人間を憎んでいるのですが、平和になった世の中で弁護士という職業を選び、法を守るものとして、法に忠実に公正な裁判をするために奔走します。弁護士であるならば、真実を追究する義務があり、法廷で行われる嘘には敢然と立ち向かう態度で挑みますが、国民すべてが敵になってしまったのでは、手の施しようがありません。彼の悔しさが、こちらにも伝わってくるようでした。


陸軍長官であるスタントンは、南軍と戦い、たくさんの兵士を失い、やっと勝利を収めたのに、いきなり大統領であるリンカーンを失い、混乱した国内をどうまとめようかと悩みます。そして、リンカーンの復讐という目的を中心に、国をまとめようと試みるのです。誰もが違う方向を向いていては、大きな国アメリカを立ち上げるのは不可能ですが、リンカーンの復讐を目的とし、皆を同じ方向に向かせ、その復讐を足場として、アメリカという国を新しい大統領と作り上げるために奔走します。彼の決断は、とても非常で、犠牲を伴いますが、彼のおかげで、今のアメリカがあると言っても過言ではないのです。

だから、誰もが、その立場としての最高の努力をしているのですが、どうしても犠牲となる人間が出てきてしまう。それを良しとするのか、悪とするのかは、なんとも判断が出来ません。確かに私も、無罪の人間だと思いますが、それだけで済む事ではなかったのだと思います。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-声をかくす人

そして、メアリーにも、落ち度はあったのだと思いました。彼女は、息子かわいさに、従軍させるのも止めさせ、ずーっと手元に置き、かわいがっていたのです。確かに、息子がかわいいのは分かりますが、ある程度の年齢になったら、自分で考え、決断する判断を付けさせるために手放すことが必要ですよね。いつまでもかわいいかわいいでは、成長はありえません。メアリーは、それをとても悔いていて、自分のせいで息子が自分での判断が出来ない人間になってしまったのだと認識しているのです。

こんな人間達が、リンカーン暗殺事件の裁判によって、振り回されます。誰もが正しくて、誰もが道を探せないでいるのです。本当に、建国時というのは、大変なのだと思います。だって、みんなの意見なんて聞いていたら、決してまとまることが無いのですから。誰かを犠牲として、成り立たせるしかないんです。昔の東京都知事の方が言っていた言葉で、”ひとりでも反対したらやりません。”って言った人間が居ますが、それは何もやらないと宣言していると同じです。給料泥棒ということ。反対が無いなんて事は、決してありえないんですから。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-声をかくす人

何をやっても文句を言われるのは当たり前。政治家は、出来るだけ犠牲が少なくて、国を成り立たせられる手段を選ぶべきです。たとえ悪魔と呼ばれようとも・・・。辛いことです。でも、それが国を作るということだと思います。


でも、その犠牲となってしまった人間は、納得出来ませんよね。それは当たり前の事で、起こってしまったことは仕方ないけど、その名誉は回復してあげないといけないと思います。この映画は、その為にも、とても良い映画だと思いました。リンカーン暗殺というと、南部のテロで無残に殺されたとしか思い浮かばないので、その裏でこのようなこともあったのだということが判って、とても良かったです。

今までは、リンカーンを劇場で暗殺したのは、役者のブースということしか知らなかったのですが、なんか、とてもその内容に厚みが出来ました。そして、先日観た演劇「トップドッグ/アンダードッグ」の内容も、また、ちょっと深くなってきたような気がしました。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-声をかくす人

私、この映画、すごくお勧めしたいです。どうして、あまり上映している映画館が無かったのかしら。昨年もリンカーンの映画があり、これからも、伝記映画が上映されるのに、この映画も一緒に観なくちゃ、アメリカの重要な歴史がわからなくなってしまう。リンカーンの英雄伝説の影にこういう話もたくさんあったのだと、リンカーンを英雄として見せるために、どれだけの人が犠牲になったのかということを知らないと、本当の事は見えてこないです。これから上映されるところがあるのか分かりませんが、本当に皆さんに観て欲しい映画でした。早くDVDになれば良いのだけどね。


ぜひ、機会があったら、観ていただきたいと思います。楽しんでくださいね。カメ




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