東京フィルメックスにて、「メコンホテル」を観ました。
内容は、
タイとラオスの国境を流れるメコン川に面した静かなホテル。アピチャッポン・ウィーラセタクンと撮影隊が「エクスタシー・ガーデン」と題する映画のリハーサルを行っている。それは人間や動物の肉を喰らう幽霊を主人公とする怪奇譚だ。リハーサルの合間に俳優たちは様々な話をするが、そこからはメコン川をめぐるタイとラオスの複雑な関係が浮かびあがってくる。ギターの美しい音が流れる中、時間がゆっくりと過ぎてゆく...。
というものです。
あの「ブンミおじさんの森」の監督の新作です。ブンミおじさんの時も、ちょっと訳の解らない、不思議な映画だったのですが、今回も、とても不思議な感じで、音楽が気持ちよくて眠くなる映画です。メコン川の流れに合わせて、ギターのやさしい音楽が流れて、ゆったり、ゆっくり、もー、絶対に眠くなるでしょ。(笑)
まず、メコン川のほとりのホテル、メコンホテルにて、撮影を行なっているのですが、最初は、撮影のドキュメンタリーなんだなって感じで始まり、映画の内容に入ったり出たりしながら、出演者たちの撮影の合間の様子も映していきます。そうすると、映画の中の人物と、演じている俳優としての普通の生活とが交互になっているのに、どちらが本当でどちらが演じているのか、観ている方には、解らなくなってくるんです。
あれ?人食い幽霊だったけど、俳優さんだよね。でも、なんだか、どっちを演じているのか解らないって感じに見えました。頭の中が、ボンヤリして、不思議な世界に引き込まれてしまうんです。さっき内臓を食べてたけど、600年も生きているって言ってたけど、でも、彼が海外から来るとか、バンコクは水浸しになるとか、砂袋を1万用意したとか、現実と映画の中の世界が、ゴッチャになってしまうんです。
映画の中に、タイの状況を”対岸の火事”のような雰囲気で話している部分があったりするんです。メコン川をはさんで、色々、考え方が違うんだなと思いました。メコン川って、中国から、ミャンマーとラオスの国教、タイとラオスの国教、カンボジア、ベトナムを通り、南シナ海に流れ出るんです。このことからも、メコン川が、たくさんの国を通り、たくさんの事情を知りながら、海に流れ出るということが解りますよね。
メコン川という特殊な川は、たくさんの不思議な時間を、色々な人に与え続けているのだという雰囲気を伝えてくれるような映画だと思いました。メコン川のほとりのホテルに滞在すれば、それだけで、不思議な世界に流れ込んでしまう。まるで、母体の中に戻って、羊水の中で漂っているような、そんな感覚に陥ります。生ぬるい、でも気持いい、水の中なのに、息ができる、そうそう、エヴァの中にポッドにいるような感じかしら。私、こういう感覚、好きなんですよね。
眠くなる映画なんですが、その雰囲気が、ぬるくて、気持ち良い作品です。でも、好き嫌いがハッキリ別れると思いますし、もう観たくないと思う人もいるかと思います。それくらい、難しい作品だと思います。でも、いったん、そのゆるい流れに乗ってしまうと、そのままそこで揺らぎたいと思う人も居ると思います。私は、揺らぎたい方でした。
この映画、公開するか解りませんが、もし、観る機会があったら、いつでも寝入って大丈夫な体制で観ると、良い眠りが訪れそうな気がしますよ。ぜひ、楽しんでくださいね。
【東京フィルメックス】 「メコンホテル」 http://filmex.net/2012/ss08.html