【TIFF】「ハンナ・アーレント」(コンペティション) 正しい事を訴えても人の心が凍結する。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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東京国際映画祭のコンペティションで、「ハンナ・アーレント」を観ました。


ストーリーは、

60年代初頭。高名な哲学者であるハンナ・アーレントが、ホロコーストの責任を問う元ナチ高官の裁判に立ち会う。発表されたレポート記事を巡り、世論は揺れる。絶対悪とは何か、そして考える力とは何かを問いかけるとともに、アーレントの強固な信念を描く感動の歴史ドラマ。
という内容です。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-ハンナ

ハンナ・アーレントは、ユダヤ人で、ナチに迫害され、すんでの所でホロコーストへ送られるのを免れ、亡命出来た、高名な哲学者です。大学で哲学を教えていたそうです。その彼女が、元ナチス高官アイヒマンの裁判があるということで、ぜひ傍聴したいと申し出て、アメリカの雑誌の記事を書く為に、イスラエルへ向い、裁判を傍聴しました。

彼女は、何度もアイヒマンの裁判を膨張し、アイヒマンという人物が、日本でいわれる洗脳されている状態で、自分の思考は一切無く、上から言われるがままに行動していたのだということを記事に書いてしまいます。そして、その洗脳状態に陥ってしまったのは、もちろんヒトラーなどの独裁もあるが、ユダヤ人幹部の行動も原因の一環であると書いてしまい、ユダヤ人全体から、すごい迫害を受けてしまいます。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-ハンナ

ハンナの書いていることは、とても正しいことで、平和な今ならば、問題なく受け入れられる事でも、当時、家族をナチスに惨殺され、なんとか生き残ったユダヤ人から観れば、ナチスの高官は、悪魔でなければならず、その悪魔を倒すことでしか、自分たちの悲しみが消えないと思っているのです。たとえ、ハンナのいう事が理解出来て、ナチスも人間だったとしても、それを受け入れられるほどの心の余裕は、まだ、ユダヤ人には無かったんです。

だから、ハンナは、ユダヤ人を悪く言っているのではない、ナチスが悪魔ではないと言っているのではないと必死で訴えるのですが、簡単には理解して貰えません。記事を書いた時点では、これほどの反発を受けるとは思ってもいなくて、哲学的な事を誰もが理解出来ると思っていたんです。でも、哲学と感情は違います。人間の気持ちは、哲学だけでは片付けられないのです。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-ハンナ

ハンナ・アーレントという人は、大学でナチスのハイデッガー教授という哲学者と出会い、彼と恋に落ちたり、ユダヤ人の亡命に手を貸したり、たくさんの哲学者と交流を持ち、いつも公正な立場でナチとユダヤを考え、はっきりと物を言う人間でした。人物としては、とても面白い生涯をすごした方で、アインシュタインなどと肩を並べるほどの方だそうです。

今回の映画は、アイヒマンの裁判傍聴をし、この裁判に関しての記事を書いたことによる影響を中心にした映画で、他の部分のハンナについては、ほとんど描かれていません。彼女の生涯を全部映画にしても面白かったと思うのですが、今回のナチとユダヤの関係について、微妙な部分を細かく描いていて、これもまた、面白いと思いました。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-ハンナ
(これが、本当のハンナです。)


人間って、難しいですね。どんなに正しい事を言われても、感情があるので受け入れることが出来ないという事もあるのです。たとえ、正しい事を理解していたとしても、納得出来ないんです。やっぱり許せない。そうです、家族を殺されたら、たとえいけない事と解っていても、復讐をして、同じ思いを相手にも味合わせてやりたいと思うのは、間違っているのでしょうか。それは、人間なら、誰もが抱いてしまう感情なのではないですか?たとえ、自分が罪人になろうとも、やらずにはいられない、その気持ちは、理解出来ると思いました。だから、ユダヤ人=イスラエルがすべて悪いとは言えません。

でも、やっぱり、冷静になれば、間違っていることは解りますよね。難しい事を描いている映画でした。私は、とても深いところを描いているなぁって思いました。そして、このハンナ・アーレントという人の哲学書も読んでみたくなりました。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-ハンナ

私は、この映画、お薦めしたいけど、でも、ナチスとユダヤの関係について、哲学について感心がなければ、あまり面白いと思わないかも。とても回りくどくて、難しいけど、理解出来ると面白いと思いますよ。日本公開はどうなるのかしら。出来たら、単館でやって欲しいけどな。

もし、お時間があったら、映画祭で観てくださいね。日本公開を待っています。カメ


東京国際映画祭 コンペティション ハンナ・アーレント


http://2012.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=215