「終の信託」 人間の尊厳とは。医師は何をするべきだったのか。命を左右して良いのは神だけ。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

先日、「終の信託」の試写会に行ってきました。


ストーリーは、

呼吸器内科のエリート医師・折井綾乃は、不倫関係にあった同僚の高井に別れを告げられ、自殺未遂を起こしてしまう。そんな傷心中の彼女を支えたのは重度の喘息患者・江木泰三だった。そして、ふたりは互いに惹かれあうが、江木の病状は悪化の一途を辿っていた。
というお話です。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-信託

あまりにも難しい問題で、これは、答えが出ないと思いました。尊厳死って、簡単に語るけど、そこに行き着くには、長い長い道のりがあって、たくさんの人間が一緒になって考えなければならない問題だと思います。この映画では、患者、医者、家族、の関係、そして、それを外から見ている法律を操る人間を描いています。あ、一応、書いておきますが、難しい問題を描いていますが、映画としては面白いですよ。


私、この感想を書くのに、本当に悩んでしまいました。正しいと言える事は一つも無いし、かと言って、誰が間違っていたと言って、攻めることも出来ない。この映画で描かれている人物たちは、正しいことをしているつもりで、少しづつ、すべてがズレているんです。だから、なんともやるせない気持ちになり、どうして?!って、問いかけたくなる。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-信託

まず、呼吸器内科の医者折井(草刈さん)についてですが、医者という仕事をしていながら、女の面が出てしまっているんですね。病院内で不倫をしていたので、その事がネックになっているのだと思うのですが、医者や弁護士などなど、専門職をしている人間は、仕事場で男とか女とかを出してはいけません。性別を越えた職業なんです。私は、一級建築士を取る前に、先輩に「免許を取ったら、女としての生理休暇は取れないよ。覚悟しておいて。」と言われました。ま、実際は取れるのですが、それくらいの気持ちでいないとやっていられないということです。


この折井は患者の江木(役所さん)に対して、患者以上の親近感を感じ接し始め、江木に延命治療などの措置は止めて、早く楽にして欲しいと頼まれます。これ、頼む人、間違えてますよね。医者に頼んだら、迷惑がかかるってわかるだろうに、酷いと思いました。医者は、技術者です。命の操作は出来ますが、そのスイッチを押すかどうかの選択は任されていません。その選択は、すべて本人と家族のみが引き受けなければなりません。家族に選択が出来ないなら、苦しみながら生きるしかありません。そういう家族を作ってしまった自分を呪うべきです。それがイヤなら、弁護士に延命措置を止めるという書類を預けておくことです。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-信託

江木の家族ですが、本当に家族の絆が薄いように見えました。江木は、建築図面を見ている場面があったので、設計関係の仕事ではないかと思います。確かに、建築をやっていると、昼夜逆転になったり、締切が迫ると、徹夜で作業をするなど、家族と過ごす時間が希薄になるかもしれません。でも、家族って、時間の問題じゃないと思う。一緒に住んでいても会話しない家族もいるし、週1しか会えなくても、解り合っている家族もいる。それは、気の持ちようだと思うんです。恥ずかしくても、一回、家族とギュッってしてみたら?少しは、距離が近づくと思いますよ。

延命措置を止めるか止めないか、もちろん、折井は、江木の家族に説明をし、選択を迫ります。でも、その時の説明が、やっぱり女の感情が入っていると言うか、あいまいな言い方なんですね。もし、彼女が医者という立場で話しをしていたら、もっと家族に有無を言わせぬ迫力があり、家族は選択を自分達でしたと思うんです。でも、あいまいだったが為に、家族は選択を自分達でしたという確信が持てなかったのではないかと思います。そして、折井の方も、技術者として尊厳死に立ち会った訳ではなかったので、検察との話の時に、しっかりとした受け答えが出来なかったのだと思います。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-信託

ほとんどネタバレになってしまっているかも知れませんが、この映画は、ストーリーの進み方ではなく、解っている内容が、どういう経過を辿って行ったのかというのが大切なので、問題ないと思いますよ。この映画を観て、本当に、自分が死というものを目の前にした時、どうして欲しいのか、自分で決断が下せない時、どうやって自分の望みを人に伝えるのか、とても考えさせられました。医者にも家族にも迷惑をかけない為に、自分は何をしておいたら良いのか、今から用意をしておきたいと思います。だって、事故でいきなり植物状態とかになったら、困るもんね。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-信託

私は、この映画、ぜひ、皆さんに観ていただきたいと思いました。お勧めです。若い人だって、自分の親がこうなった時どうしてあげることが親のためになるのか、親と連絡を取っていない人がいたら、ちょっと親の様子を電話で聞いてみるとか、ちょっと自分の家族のことを思ってみて欲しいです。年配の方は、家族に迷惑をかけない為に、出来るだけの事をしておこうかなと思って欲しい。「飛ぶ鳥後を濁さず」と言うでしょ。どうせなら、綺麗にスッキリ眠りたいですもんね。


公開は、今月末の10月27日です。ぜひ、観に行ってみて下さい。カメ




終の信託@ぴあ映画生活

終の信託 - goo 映画
終の信託 - goo 映画