先日、「グスコーブドリの伝記」の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
イーハトーヴの森で家族と暮らしていたグスコーブドリは、森を直撃した冷害のせいで両親と妹を一度に亡くしてしまう。たった一人残された彼は懸命に働き、長じて火山局で働き始めるが、またしても大規模な冷害が発生する。かつての惨事を二度と繰り返さないようにするため、グスコーブドリは自分の身を呈して冷害の被害を防ごうとする。
というお話です。

まず、宮沢賢治の詩を書きますね。
雨にもまけず 風にもまけず
雪にも夏の暑さにもまけぬ 丈夫な身体を持ち
欲は無く 決して怒らず
いつも静かに笑っている
一日に玄米四合と 味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを 自分を勘定に入れずに
良く見聞きし分かり そして忘れず
野原の松の林の陰の 小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば 行って看病してやり
西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば 行ってこわがらなくてもいいといい
北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろといい
日照りの時は涙を流し 寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ
褒められもせず 苦にもされず
そういうものに わたしは なりたい

この詩がすべてを表現しています。ブドリは、”そういうもの”になれるんです。いや、なるんです。
欲も無くし、人の言葉に耳を傾け、何処へでも人を助けに向かい、人からは慌てるだけの役立たずに見えるけど、本当は、たくさんの人がしあわせに暮らせるのは、彼の犠牲の上に成り立っているのであり、誰もそれに気が付かなくても、自分はそれでしあわせなのだということです。彼は、人の為に生きて消えていくので満足なんです。
生と死の境界にいるコトリという男が鍵となります。ブドリは、何度も彼と会うことになり、その度に、悲しい別れや重要な決断を迫られます。それは、ブドリの心の中の声なのか、それとも・・・。

私、この映画を観て、大震災の事を思い出しました。映画では、飢饉で村が滅ぶのですが、同じですよね。災害が起きて、たくさんの人の悲劇があったけど、その中で、必死で抗い、人を助け、目に見えないところで行動をした人。誰の目にも映らなかったけど、人に認められるとかは関係なく、人間として、今、自分の出来る事をやる。そんな人が震災の時もたくさん居たのだろうと思います。そういう人への感謝の気持ちを、この映画を観て、改めて思いました。

きっと、この詩を読むと、誰もが、こんな風になりたいという気持ちはあっても、無理だよなと思う事でしょう。私もそうです。欲を無くして、人の為に出来る事をしたいって思うけど、でも、自分も生きていかなければならないし、遊びたいし、食べたいし、欲なんて捨てられない。人には良く思われたいし、誉められたいと思うのが人間です。そこは開き直りましょう。相田みつおさんと同じように、”人間だもの”です。
でも、人間なら、そこで今一度考えて、無理しないで出来る事はやろうという考え方に切り替えませんか?無理しても辛くなるだけ。命を懸けてとか、全てを捨ててなんてする必要は無くて、出来る事を出来る時にコツコツやることが、未来に繋がるんじゃないかな。みんなで少しづつやれば、見た目は何も変わらないかも知れないけど、もしかして未来の種になるかもしれません。
この映画を観ると、やさしい気持ちになって、出来る事をやろうっていう気持ちになります。宮沢賢治、やっぱりイイですね。ますむらさんの絵がとても合います。銀河鉄道の夜も良かったけど、今回も、この世界、本当に綺麗でした。でも、一つ文句を言うなら、ナレーションタイプの進め方じゃない方が良かったなと思います。ナレーションで話を進めて行ってしまうと、キャラクターに感情移入がしにくいんです。上からキャラクターたちを見ているような感覚になってしまい、少し感動が薄れたかなって思います。
私は、この映画、好きです。人の為に自己犠牲をするというと、キレイ事言うなって気持ちになるんだけど、ネコギャラだし、この詩によって、スムーズに心の中にやさしさが入ってきます。人間だけど、人間だからこそ、出来る事がある。きっと、何かが未来に繋がるって思えて、やさしく、明るい気持ちになれました。ぜひ、みんながこの映画で、やさしい気持ちになってくれたらと思います。
但し、アニメだけど、子供向けではないような気がしました。子供には、まだ内容が難しいかも。ま、絵がかわいいから、ネコちゃんを楽しむだけでも良いかも知れませんけどね。この映画は、観る人を選ぶ映画だと思います。万人受けは、難しいかな。
・グスコーブドリの伝記@ぴあ映画生活
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